遊ぶ
Leisure

ゴルフ徒然草

ヒデ・スギヤマが、ゴルフに関する古今東西の話題を徒然なるままに書きまとめた、時にシリアスに、時にお笑い満載の、無責任かつ無秩序なゴルフエッセイ。

ヒデ・スギヤマ/平日はハリウッド映画業界を駆け回るビジネスマン、
週末はゴルフと執筆活動に励むゴルフライター。

ヒデ・スギヤマ

Vol. 32 クイズ・ミリオネアー・ゴルフバージョン

最近の日本のテレビを見ていると、タレントさんが回答者役になるバラエティー・クイズ番組が、
どのチャンネルでも大人気のようですね。
やはり平均的な日本の視聴者は、“考えること”が大好きな国民性を持っているようです。
筆者も“流行りもの”に弱いので、今回はゴルフにまつわるクイズを出してみましょう。
クイズ・ミリオネアー・ゴルフバージョン…始まりです!

さっそく第一問。
まだゴルフが、今のような確固たるスポーツとして存在していなかった時代、
今から500年も600年も前の時代、つまりスコットランドの男たちが、
ボール(のようなもの)を穴に入れて遊んでいた時代、すでに存在していたものは何でしょう?
①ティーグラウンド ②バンカー ③グリーン ④GPS付き電動カート

正解は…
②のバンカーです。
ティーグラウンドは、ゴルフがゲームとしてのルールが確立された際に設定されたもの。
グリーンは、“穴に入れる遊び”がゲームに進化した際に、
「穴の周りの芝を短く刈ったほうが面白い」という発想から生まれたものです。
そしてそれらの時をさかのぼる何百年も前から、
今のバンカーの原型となった“砂場”は既に存在していました。
言い換えるならば、ゴルココースという概念がまだ登場していない時代に、
スコットランドやイングランドのリンクスには、最初はバンカーだけが有ったのです。


どうして?
それはある動物が本能で作ったものだからです。
さて数百年前のスコットランドのリンクスで、バンカーの原型を作ったその動物とは?
①馬 ②うさぎ ③ヒツジ ④人間のように二足歩行するレッサーパンダ

正解は…
③のヒツジです。
ゴルフが羊飼いの少年たちが始めたゲームであることは有名なので、
ご存知だった方も多いことでしょう。
バンカーの基本となったのは、今は“ポットバンカー”(形が鍋に似ているため)と呼ばれ、
全英オープンでよく見られる小ぶりながら深い形状のバンカーです。
実はあれは、ヒツジたちが雨や風を避けるために草が少し盛り上がった部分に潜り込み、
草の部分を掘り起こして砂場にしたもの。言わば、ヒツジ君たちのベッドが、バンカーのルーツなのです。

私は(おそらく多くのゴルファーも同様に)、コースの戦略性や難度を高めるために、
バンカーが考えられたと思い込んでいました。
でもゴルフというスポーツが生まれる前から、ヒツジたちのベッドが本来の役目の、
バンカーは既に存在していたのです。
ハリウッド映画の傑作「羊たちの沈黙」、
小説家で翻訳家の村上春樹氏の代表作「羊をめぐる冒険」など、
羊をテーマにした作品は数多く有りますが、「ゴルフコースを最初に作ったのは羊だった!」という、
衝撃の事実の前ではただの笑劇に過ぎません。

ではまた問題。
ゴルフコースを維持管理する際に、最も費用がかかる場所はグリーンですが、
ではゴルフコースを設計・施工する際に、最も手間と費用のかかる場所はどこでしょう? 
①フェアウエイ ②バンカー ③ドライビングレンジ ④スナックバーのホットドッグ用ケチャップ入れ


正解は…
今回の話の流れからもうお分りですね。
そうです。これもバンカーなンです。
実はバンカー造りには、多大なセンスと技術が必要と言われています。
ゴルフコース設計家は言わばプロデューサ-のようなもので、
実際の造形作業を行うのは、シェイパー(Shaper)と呼ばれる職人です。
そして著名なコース設計家は、必ず自分の右腕となるシェイパーを抱えているのです。

シェイパーにとってグリーンは、設計者が「この辺にグリーン、宜しく!」と指示すると、
水はけさえ注意したら後は芝を伸ばして刈るだけのもの。
もちろんコースがオープンした以降は、
グリーンキーパーにとって最も手間のかかる場所がグリーンですが、
コース誕生までが担当のシェイパーにすれば、
グリーンはそれほど力を入れる場所ではありません。
しかしバンカーは、その形状がシェイパーのセンスによってかなり変ってくるのです。
そしてそれがコースの美観に多大な影響を与えますので、シェイパーの一番の腕の見せ所であり、
やがて誕生するゴルフコースの容姿、つまり“美人度”がそれで決ると言っても過言では有りません。

これまでにプレーしたコースで、グリーン手前に“大きく口を開いた野獣”のようなバンカーがあり、
すごく手強いと感じたホールは有りませんでしたか?芸術的なバンカーは、
高い造成技術と美的センスを兼ね備えたシェイパーの存在が不可欠なのです。
普通は庭師でも建築家でも、あのような地形を意図的に作ることは有りません。
きれいにすることが彼らの仕事なので、何もないところにわざと荒々しく土を盛り上げることは、
実はすごく難しい作業なのです。
何年もかけて柔らかい土を固く引き締めて、
あたかも元からそのような形の場所であったように感じさせます。
もしそのようなバンカーに出会ったら、それは非常に優れたシェイパーの職人芸だと思ってください。

さて最後の問題。
今回の“ゴルフ徒然草”のテーマは何だったでしょう?
①クラブハウス ②最新クラブ ③バンカー ④日本で流行りのゴルコン(ゴルフ合コン)

そう、実は今回のテーマは③のバンカーでした。
でも最初からそう書くと、クイズが面白くなかったでしょう? 
貴方は何問正解できましたか?

ロサンゼルスの求人 最新20件