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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

東大が秋入学に変わる?なぜ? 大学入試は変わるのでしょうか?

世界の大学との競争を勝ち抜くため日本社会を大きく変える可能性大

松本輝彦(INFOE代表)

東大が秋入学を提案

東京大学は1月20日、学部を秋入学へ全面移行する案を発表しました。「大学入試はこれまで通りで、合格者の入学時期を4月から秋にほぼ半年遅らせる」という提案です。今後、1〜2年で大学として最終決定し、5年後に秋入学を実現することを目指しています。

今年4月には、東大は、他の11大学と秋入学移行への問題点について意見交換を始め、将来的には秋入学を同時に実施することを目指しています。

秋入学への移行にあたっては、々盥斬感函聞膤僻表)から入学まで約半年間空く(ギャップターム)、⊇卒業の場合の就職・採用、が直面する大きな課題となります。

ギャップタームについては、ボランティア、インターンシップ、海外留学などを通してさまざまな社会・海外体験を経験してもらうことを想定し、どんなプログラムが用意できるのかを、大学・企業・民間団体などと幅広く相談するとしています。また、卒業が秋になった場合の就職・採用や公務員試験の時期の問題については、経済界・政府などの協力を取り付けたいとしています。

提案への反応

東大の秋入学移行提案について、他大学や経済界からは、歓迎と不安、両方の声があがっています。11大学のうちの北海道、つくば、京都、新潟、鳥取大学は秋入学に「前向き」、福井大学は「静観」、千葉大学は「慎重に考える」と、大学独自の立場に応じた異なる意見の表明が、新聞報道で見られます。

経済界の動きとしては、東大の秋学期への全面移行への協力要請に対して、経団連は移行協議に参加する考えです。しかし、ギャップターム中の就業経験の提供には前向きですが、採用日程の変更には、秋学期導入が「どれくらい増えるか見極める」という姿勢です。また、「秋入学、採用担当者の4割が支持」との民間の調査結果も出ています。

さらに、野田佳彦首相は「グローバルな人材育成という観点から大変評価できる動きだ。官民挙げて議論をしたい」と述べ、国としても秋入学の定着に向けて支援していく考えを示しました。

このように、新聞報道で見る限り、秋入学に前向きな姿勢が多く見られます。しかし、提案が出たばかりで、実施に向けての具体的な方策はこれからです。秋入学は、ただ単に大学だけではなく、高校や小・中学校での教育への影響、ギャップタームの家庭への負担、さらには雇用の変化などの非常に広範囲で大きな社会変化の是非についての、今後の議論が必要になってきます。

背景:世界の大学との戦い

東大の秋入学移行の第一のねらいは、「国際的な大学間競争」を勝ち抜くための「大学の国際化」です。2011年の世界の大学ランキング(THE)では、「専門家同士の評価による評判」で世界で8位ですが、総合順位では30位となっています。総合順位は07年(17位)、09年(22位)と下がってきており、「評判」の順位も「過去の評判に基づいた順位であって、数年先にこういう高順位になっているとはいえない」と厳しい指摘を受けています。

また、国際化の指標として重要視されている「留学生の受け入れ」は、東大の学部段階では全体の1・9%(大学院では18・6%)で、海外の有力大学の約10%に比べて極めて低くなっています。日本の他大学と比べても、学部留学生の総数では40位と大きく出遅れています。これらの留学生受け入れの低迷ぶりは、東大での「英語のみで学位取得できるコース」が今年初めて開設されることからも理解できます。

東大が世界のトップグループの大学との戦いを勝ち抜くために「海外の大学で圧倒的に多い秋入学」への移行作戦が生まれたのです。

ここで紹介した東大の秋入学も実施まで5年、その後卒業生が出るのにさらに4〜5年と、その効果が現れるのに10年を要します。

それにしても、義務教育段階のPISA(Programme for International Student Assessment)から大学の秋入学まで、日本の教育は「教育のグローバル化」の激流に曝されています。

参考:東京大学『将来の入学時期のあり方について』
www.u-tokyo.ac.jp/gen02/pdf/20120126interim.report.pdf

(2012年3月1日号掲載)