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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

春に現地校の子供たちが受けるSTARテストについて知りたいです

加州の統一学力試験で、子供の学習状況や学校の教育実態の把握が目的

松本輝彦(INFOE代表)

STARプログラム

カリフォルニア州のSTARプログラムは、仝立学校で学ぶ児童生徒の学習到達度の測定、学校と学校区の教育成果の把握、その成果の報告、が主な目的です。

毎年春に、公立校の2年生から11年生の子供たちが州の統一試験(一般的にSTARテストと呼ばれる)を受験します。2年生は英語・算数だけですが、学年が上がるに従い理科や社会が加わります。試験問題は、カリフォルニア州で決めた各学年の学習内容・レベルに準拠しており、選択形式で回答します(4、7年生は作文もあり)。

試験後、各児童生徒の結果をまとめたレポートが、各家庭に渡されます。レポートには得点と共に、州の習得レベル基準に対する到達度、全米の成績と比較した到達度などが示されています。これにより、教科や学習分野ごとの長所や短所がわかります。

子供たちの成績の学校・学校区・郡ごとの集計・比較結果はネット上などで広く一般に公開されます。そして、教育関係者にはこの結果に対して、大きな責任があります。例えば、ある学校の成績が何年も下降を続けると、校長以下の全教職員が解雇されたり、時には学校自体が閉校されることもあります。

このように、STARプログラムは、子供たちの統一試験の成績を使い、子供、学校、地域の教育レベルを上げるために実施されています。

全米・世界で広がる学力試験

カリフォルニア州のSTARプログラムのスタートは1997年ですが、2001年の連邦政府の定めた法律により、現在では全米のすべての州で実施されています。学年末の近付く春に実施する州が多く、1、2月から復習や模擬テストなど、統一試験のための授業時間が増えていきます。

教育行政は州ごとに大きく異なります。にもかかわらず、合衆国全体で統一した学力試験が広がってきた理由の一つは、世界の主要国と比較したアメリカの子供たちの学力の低迷です。経済協力開発機構(OECD)が実施する義務教育段階の子供の学力を国際的に比較する学力試験「PISA(Programme for International Student Assessment)」では、アメリカは参加65カ国・地域の平均得点程度。また、最近の国際的な数学・理科学力試験では、トップグループに入っているものの、日本を含むアジアの国々に大きく差をつけられています。この現状を「国家安全上の問題」と捉える政治家もいます。

学力の国際競争に危機感を持っているのはアメリカだけではありません。日本でも6年前から小学6年生と中学3年生を対象に「全国学力テスト」を実施しています。これまで都道府県別の成績だけを発表してきた文部科学省に対し、「学校ごとの成績発表を」と迫る知事や市長が現れるなど、とかく話題のテストです。実は3年ごとに中学1年生と高校1年生を対象に実施されるPISAの模擬試験の役割もあります。そのほか、ドイツが国内で統一したカリキュラムに切り替えたり、イギリスが大幅な教育改革を断行したりと、それぞれの国でさまざまな試みがなされています。

子供の勉強内容の確認を

この10年ほどの間の、「試験で好成績を取るための勉強」の広がりが、アメリカでもさまざまな問題や弊害を生み出しています。

子供たちのテストの成績が大きく下がると、先生が職を失ったり、学校が閉鎖されるなど、学校同士サバイバルを賭けた戦いとなります。そのため、統一試験の過去の出題問題の復習や予想問題を繰り返し解くなど、受験勉強中心の学習となります(日本ではとっくに経験済み!)。

受験準備の時間が長くなるにつれて、アメリカの学校教育の伝統的な長所とされてきた「レポート」や「ディスカッション」などに費やす授業時間が急激に減ってきています。現地校で学んだ子供たちが日本に持ち帰る「宝」が失われつつあるのです。

これからの統一試験受験勉強のシーズン、お子さんの勉強の内容をよく観察してみてください。

(2013年1月1日号掲載)