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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

日本の政権交代で、教育はどう変わるのでしょう?

安倍新政権は、「教育再生」を強く進めています。

松本輝彦(INFOE代表)

安倍首相の「教育再生」

昨年の衆院選で自民党は、東日本大震災復興と経済対策に次いで、「教育再生」を政権公約に掲げました。この公約の実現を、安倍首相は強く目指しています。

実は、6年前の第1次安倍内閣発足の2週間後に、教育改革(再生)のために、内閣に属した「教育再生会議」が設置されました。この会議は、最初、「ゆとり教育の見直し」「学力向上」「大学・大学院改革」など、安倍首相の考え方を反映した提言でした。しかし、就任1年での突然の首相辞任後、次の福田内閣に引き継がれましたが、「安倍カラー」が薄められた最終報告を出して、その幕を閉じました。

今回は、首相就任20日後に、首相直属の「教育再生実行会議」を立ち上げました。有識者15人のメンバーが、いじめ問題、教育委員会改革、大学改革などを議論する予定です。しかし、会議の名称に「実行」が付け加えられたことからも、第1次安倍内閣の教育改革への考え方を踏襲するものと思われます。

土曜日の授業再開?

現在公立校で実施されている「完全学校週5日制」を見直し、土曜日にも授業をする「6日制」導入の検討を始める、と文部科学省が発表しました(1月13日)。

既に完全実施されている小・中学校の新学習指導要領では、「ゆとり教育」の見直しで、授業時間数を増やしています(年間35〜70時間)。この見直しで増えた学習内容をこなすために、週5日では不足気味の授業時間数を土曜日授業で確保して、平日の授業負担を少なくし、「子供の学力を世界トップレベルにする」学力向上を目指そうとする提案です。

10年以上続いている「公立校の土曜日休み」をなくす提案には、さまざまな意見が寄せられています。しかし、どうやら「土曜日授業」は復活しそうな流れです。というのは、6年前の「教育再生会議」でも5日制の見直しが提案されたことがあり、土曜日授業復活は、「安倍カラー」の教育改革の第1弾だからです。

教育と政治

昨年12月、大阪の市立高校の顧問による体罰が原因で、生徒が自殺するという痛ましい事態が起きました。この問題をめぐり、橋下徹大阪市長が、市教育委員会にこの高校の「体育科などの生徒募集停止」の要請をし、入試を実施する場合には、「入試関連予算を執行しない」と述べました。入試実施の決定権は市教委にあり、市長はそれに対して指揮・命令はできません。しかし、予算執行権を持っています。入試の中止に慎重な市教委に、市長としてプレッシャー(介入)を与えたのです。

日本では「教育(教育委員会)に政治(行政・市町村長・政治家)の介入がどこまで許されるのか」が不明確です。そのため、橋下市長の強硬な発言を、「政治の教育への過度の介入」として批判する意見が多く見られます。これまで多少なりとも行政・政治から独立していた「教育委員会」の管轄だった学校教育について、政治家が意見を述べるだけでなく、直接介入する事例が、最近、極めて多くなりました。「いじめ」に代表されるように、教育問題が質量共に広がり、社会全体の問題と捉えられる現状の反映なのでしょう。しかし、日本における「政治と教育」の関係が変わりつつあるのも現実のようです。

皆さんも御存知のように、アメリカでは行政(州・郡・市)と教育(学校区)がはっきりと区別されていて、意思決定のメンバー(議員や教育委員など)は、住民の直接選挙で選ばれます。「地方自治は民主主義の学校」と言われるアメリカの伝統を反映した、教育の地方自治の徹底です。しかし、アメリカの悩みは、国際的な学力比較でアメリカの子供たちの順位が平均以下の現状を改革しようとする連邦政府の努力が、「教育の地方自治」に阻まれて、十分に成果を挙げられないことです。政治と教育の戦いです。

本質的に現状維持を願う「教育」と、改革を目指す「政治」の戦い、保護者としても、注目が必要です。

(2013年2月1日号掲載)