学ぶ・育てる
Study

アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

日本の高校の英語は、英語で授業?政府がTOEFLをすすめる理由は?

学校英語の目的は「話せるように」国の目標は「グローバル人材育成」

松本輝彦(INFOE代表)

TOEFLを大学受験資格に

「グローバル人材育成」のために、世界的に普及した英語能力テストTOEFL(トーフル)。これを日本の英語教育の改革に活用する提案が、4月初め自民党の教育再生実行本部から安倍首相に提言されました。

提案の中の英語教育では、「高校でTOEFL450点(英検2級)を全員が達成」「TOEFLの成績を大学の受験・卒業要件にする」など、高校生の英語教育を大きく変えています。さらに、大学についても「約30校の卒業要件をTOEFL900点相当にし、集中的支援でグローバル人材を年10万人養成する」とし、TOEFLを幅広く活用する提案となっています。

最近の日本では、TOEIC(トーイック)が大学進学・就職・企業などの英語能力試験として大変人気ですが、この提案ではTOEFLが重要視されています。両者を比較して、その理由を考えてみましょう。

なぜ、TOEFL

TOEFLは、「外国語としての英語のテスト」で、 「非英語圏の出身者のみを対象」。英語圏の大学などへの入学希望者の英語力判定のために用いられ、世界約150カ国で実施。おもにインターネット上で受ける試験で、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングがあり、設問は、大学で使われるアカデミックな内容が中心です。

一方、TOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)は、 「英語を母語としない者を対象とした、英語によるコミュニケーション能力」の試験。日本、韓国、台湾の受験者が大半を占めますが、世界約120カ国で実施されています。試験は、リーディングとリスニングのみで、設問は 国際ビジネスでの会話能力を判定する内容となっています。

両者の大きな差は、TOEICがビジネスに必要な会話だけなのに対し、TOEFLは大学レベルの読み書き能力を判定の対象にしていることです。グローバル人材とは、ただ単にビジネス人だけを指しているのではないので、英語の能力として、より幅広く読み書きの力が必要なのは当然です。さらに、TOEICは日・韓・台という一部の国の受験者が多く、ほかの国々での認知は高くありません。これらの理由から、TOEFLがTOEICよりも重要視されています。

英語の授業は英語で

「中学と高校で6年間も英語を勉強してなぜ話せない」という危機感を、文部科学省は抱いています。そのため、今年4月から完全実施された文部科学省の高等学校新学習指導要領で、「英語の授業は英語で行うことを基本とする」という新しい指導方針が示されました。この新指導要領に従った授業は、4月から実施していますが、学校現場や英語教育関係者の間で賛否両論が出ています。

教科書は、各校が最も適切だと考える物を選ぶことができます。そのため、「コミュニケーションを重視して英語でやるべきだ」との考えに賛成の学校の多くが、スピーチやディベートなど「コミュニケーション重視」を前面に出し、日本語の記述を減らした新教科書を採用。一方、反対派の学校は、「文法・読解を踏まえた日本語でやることが必要。レベルの高い大学に合格するには、きちんと日本語で文法を教えるべきだ」と、これまで使われてきたものに類似した教科書を採用しています。

英語教育は変わるか?

安倍政権は、日本経済の大転換のように教育の大改革を目指しています。その一環である英語教育の改革が、グローバル人材の育成の柱として提案されました。しかし、それを実現するための高校・大学の教育、英語教員への研修、大幅なTOEFLの導入が成功するかは、財政措置の実現に大きくかかっています。さらに、新指導要領導入による学校現場・英語教員の抵抗も無視できません。今後の展開に注目しましょう。

日本の英語教育の動きを見ると、アメリカで教育を受けているお子さんが、いかに大きな「宝」を身に着けているのが、おわかりいただけると思います。

(2013年5月1日号掲載)