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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

夫の任期延長で長期滞在に…。気をつけるべきことは何でしょう?

滞米5年で現地校5年生の子供の母親です。主人の任期が延びて、あと最低3年滞米することになりました。滞在が長期になることで気をつけなければならないことを教えてください。

松本輝彦(INFOE代表)

スタディースキル習得のために、米国の学校制度をフル活用して

 数年前から、北米のどこの補習校へ行っても、「長期滞在者・永住者の子弟が増えてきた」という話を聞きます。ロサンゼルスの補習授業校「あさひ学園」では、長期滞在または永住者の児童・生徒が全体の6割を超えているとも聞いています。

 滞在が長くなるのにはさまざまな理由があります。3年の予定で赴任したが既に20年以上、永住権を取った今でも駐在員の友人がいます。個人的にレストランを開業するために渡米して、10年を超えた友人もいます。また、子供のアメリカの大学への進学にあたっての経済的な理由から、永住権を取得した駐在員も知っています。このように、保護者のさまざまな理由で、アメリカ滞在が長くなった子供が増加しているのです。

 滞在年数の長短にかかわらず、海外の子供の教育で考えなければならない共通の問題があります。しかし、滞在年数に応じて異なる考え方や対応を迫られる課題も存在します。たとえば、3、4年で帰国する短期滞在の場合は、現地校で学ばせるものの、日本帰国後の生活や教育を頭においた教育を、保護者は考える必要があります。現地校と補習校で学ぶ長期滞在・永住者の子供たちの教育の大切な点は何でしょうか。

現地校の学習が最重要

 学校教育の目標は、アカデミックな力(学力)を身に付けることです。滞在が長くなるにつれて、英語の能力が伸びていますので、現地校での英語での学習に、より重点を置かなければなりません。

 ただ単に週1〜2日の補習校に比べて授業日数が多いだけではありません。現地校では教科書の内容学習に加えて、日本の学校では得られないスタディースキルをトレーニングされています。「自分の意見をまとめ、発表する」というスキルは、日本帰国後、国内の子供に見劣りする日本語力を補って余りある宝物です。また、長期滞在の子供は、当然、アメリカの大学への進学の可能性も高くなってきます。アメリカの大学で、大学生としてのサバイバルに欠かせないもの、それがスタディースキルです。

 また、アメリカの学校には、児童・生徒の努力や能力に応じて、どんどん伸ばしてくれる教育のシステムがあります。特に、アメリカの高校は義務教育で入試もなく、地域の高校生の学齢の子供を全員引き受けて教育します。そのため、あらゆるレベルの高校生のニーズに対応するため、Shelter、Regular、Honors、AP(Advanced Placement)などにレベル分けされた習熟度別クラスを提供しています。今、受講しているレベルのクラスに問題がなければ、さらに上のレベルの授業を受けることが期待されています。そのため、できる生徒はより努力をすることが要求されています。

 このように、アメリカの学校での学力を伸張させるプログラムを精一杯活用すること、子供の学力を伸ばすのに最も効果的です。

日本語よりも英語に重点
 
 滞在が長くなるにつれて、日本語での学習を継続するのが困難になってきます。

 小学生にとって、現地校で学びながら、補習校で日本の子供たちに負けない学習内容の勉強をすることは、保護者の強力なバックアップがあれば可能です。しかし、高校生として、日本とアメリカの学校の学習を同じようにこなしていくことは不可能です。中学生・高校生のレベルの学習は、日本の社会で生活して自然に身に付けてきた知識や情報をベースとして、それらを整理しながら学んでいきます。アメリカで長年生活してきた日本人の高校生に、日本の高校生と同じレベルの知識を期待することは不可能です。

 さらに、先に述べたように、中学・高校レベルでは習熟度別の授業が中心となり、余裕のある生徒にはより多くの課題が出されます。そのため、現地校での学習に好成績を挙げている生徒は、現実的に日本語での学習に時間を割く余裕がないのが現実です。

 このように、日本語の維持・伸張よりも、英語力の向上、英語での学習に重点を置くことが必要になってきます。

日本語の家庭環境
 
 しかし子供たちが、これまでに多くのものを犠牲にし、努力して身に付けてきた日本と日本語での学力を伸ばす努力を放棄することは、子供に対する裏切りです。子供のこれまでの努力を無にすることはできません。渡航直後、あるいは幼い頃に、親として日本語環境を家庭内に築いてきた努力をもう1度呼び戻し、最後の努力をする必要があります。