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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

ホームスクールとは何でしょうか?

幼稚園の娘がいます。渡米して間もないのですが、アメリカの教育システムの選択として、現地校、日本人学校、土曜日の日本語補習校などがあると聞きました。また、それ以外にもホームスクールという教育システムがあると聞きましたが、どういったシステムでしょうか?

松本輝彦(INFOE代表)

自宅学習で正規の学校教育を
日本とは大きく異なる教育システム

個人重視のアメリカ
教育システムも多様


 ホームスクールというのは、文字通り、学校へ通学することなしに自宅で学習して、正規の学校教育に代える教育です。

 学校へ通わずに、自宅で、お母さんが子供に勉強を教えるのがホームスクールの姿です。親が自分の手で子供の教育をする形が一般的ですが、数人の親が協力をして、自宅を使って小さな学校のような形式をとることもあります。それぞれのお母さんが手分けをして、自分が指導可能な教科を、学校の教科書や指導書を使って教えるというパターンです。対象となる子供たちは、幼児から高校生までさまざまです。

 全国一律、画一的な教育で育った日本人にとっては「親が教えるだけなんて」と思います。しかし、そこは「自由」を大切にするアメリカ社会です。エジソンは学校へ行かず、母親の指導だけを受けた後、自学自習で数々の発明をしました。多様性を許容するアメリカ社会の伝統でもあります。

 ホームスクール生が、大学に進学することも可能です。アメリカの大学は入学試験だけで合否を決めず、出願生がどのような教育を受けてきたのかをじっくり評価します。大学は多様な学生を真剣に求めていますので、しっかりとした学力を身につけていれば、評価され、入学を許可されます。

ホームスクール増加を促す
さまざまな社会背景


 ホームスクールを選択する理由は、学校での教育、特に公立学校での教育に対する不安や不満が第一です。暴力やドラッグなどが蔓延して自分の子供がそれらに染まってしまう可能性が高くなってきた、州の教育予算の大幅削減や児童生徒数の増加などで、十分に教育効果の高い学習が受けられない、所属する学校区の右傾化や左傾化、または宗教の違いなどで、保護者が期待する教育が受けられないといった社会問題を反映した教育環境の悪化が、最も大きな理由として挙げられます。

 ホームスクール増加のもうひとつの理由は、インターネットによる自宅学習へのサポートの充実です。従来、ホームスクールの抱える最も大きな困難は、先生の確保と質の高い教育カリキュラムを入手することでした。英語・社会から理科・数学までの幅広い教科を高校生に教えられる指導者を探すことは、ほとんど不可能に近いことでした。教科書や教材も、子供一人一人にマッチしたものを入手することさえ、大変でした。しかし、最近はインターネットなどの発達により、豊富な教育情報の入手が容易になりました。

 ホームスクール生の教育サポートをする団体や教材会社も増えてきています。オンライン授業なども現れ、経験豊かで技量に恵まれた先生の授業を家庭で受けることも可能になってきました。

 ホームスクールは特定の個人の考えだけで広がりを見せているのではなく、さまざまな理由で既存の学校教育に失望して、これまでとは異なった形式の教育を実践しようとする教育改革運動の後押しも受けています。ほかのタイプとしては、税金を授業料の一部に充て私立学校へ行くことを可能にするバウチャー制度、親の手で公立の学校を作るチャータースクールなどがあり、徐々にですが全米規模で広がりを見せています。

特例として
公立校から先生の派遣も


 以上述べたのが、一般にホームスクールと呼ばれるものですが、もうひとつ、別のシステムがあります。それは、公立の学校に在籍する児童生徒が、何らかの事情で登校して学業を続けることができなくなった時に、特別な配慮で、先生を自宅に派遣して、自宅で学習させるシステムです。病気による長期欠席を余儀なくされた児童や精神的な困難で不登校になった生徒などが対象になります。先生の自宅への派遣などで費用がかかるので、担任の教員、カウンセラー、時には心理学者を交えて厳しい審査を行い、学校区が該当する児童生徒にホームスクールを提供するかどうかを決めます。



 ホームスクールの自由があることと、勝手に自宅で学習させることは、まったく別です。「俺、ホームスクールをする」と言って通学しなかった高校生が、警官に手錠をはめられて自宅から学校へ連れて行かれた例を知っています。日本では馴染みのないシステムですので、事前に学校や学校区とよく相談してください。