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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

漢字が苦手で補習校の宿題も大変。帰国後ついていけるか心配です

小学2年生の息子がいます。来年5年間の駐在任期が終わる予定です。平日は現地校、土曜日は補習校に通わせていますが、日本語での勉強、特に漢字の練習を嫌がります。このまま日本の小学校に入れて、授業についていけるのかと不安です。

松本輝彦(INFOE代表)

書かれた日本語に接する環境作りを
帰国後は子供の変化に注意して

日本独特の内容は
練習あるのみ


 ご質問の「授業についていけない」という不安の理由を、具体的に考えてみましょう。

 「授業についていけない」と言った時、「学習内容がわからない」と「学習レベルが高い」の典型的な2通りの理由が考えられます。

 「学習内容がわからない」には、その内容を日本語で勉強する機会のなかった場合があります。たとえば、音楽の時間のリコーダーの使い方、鉄棒運動などは、補習校でもやったことがないので、できないのが当たり前です。必要ならば、日本に帰国後、ただ練習あるのみです。

 「レベルが高い」のは、お子さんの知識の量が不足していたり、繰り返しの練習が足りない場合です。社会の勉強では、子供が日常生活の中で身に付けた、日本の地名や歴史上の出来事など日本の知識をベースにして授業を進めます。アメリカのことは知っていても、日本に関わる知識の絶対量が少ない帰国した子供は、時間をかけるしかありません。また、算数の計算や九九を徹底して繰り返し練習させられている日本の子供の計算のスピードには、帰国した子供は歯が立ちません。これも練習するしかありません。

 前記の2つ以外に、日本の学校生活への不安を訴えるお母さんが多くおられます。これは、アメリカの学校生活しか知らない子供が、日本の学校の中の習慣やルールに従って、問題なく生活できるかどうかの心配です。お母さん自身が経験して、日本の学校生活の本当に細かなことまで知っているから、余計にお子さんのことが心配になります。編入先の担任の先生に、よくお子さんの様子を説明し、任せることが大切です。もちろん、毎日、学校から帰宅した子供の様子を十分観察し、その変化に注意をしておくことが、問題の早期解決に役立ちます。

原稿用紙1枚分の
書写を毎日続ける


 もうひとつ、ご質問で「漢字の練習を嫌がり」と心配されています。

 お子さんは赤ちゃんの時にアメリカに連れて来られ、キンダーからアメリカの教育を受けてきました。家庭では日本語の話し言葉に接するだけ。補習校の漢字練習帳以外、その漢字を日々の生活の中で見ることもないのです。

 まず、することは漢字を含めた「書かれた日本語」に、日常的に接する環境を作ることです。その長い努力の後で、「嫌がり」を心配してください。その方法として、お子さんと同じように漢字嫌いの子供を指導した経験から、お子さんに日本語で書かれた本の書き写しをさせることをお薦めします。簡単です。毎日原稿用紙1枚に日本語の本を書き写させるのです。最初は子供に好きな本を選ばせてあげてください。そして様子を見て、子供のレベルに応じた本をうまく勧めてください。

 書き写しは、子供にとって決して面白くない、単純作業です。お母さんの作戦は「継続は力なり」です。1枚の完全な書き写しよりも、不完全なページが何十枚も溜まることのほうが大切です。漢字や書き間違いは指摘して訂正させても結構ですが、「もっときれいに書き直しなさい」と、お母さんが口にすると、それでこのプロジェクトは終わりで、お母さんの負けです。

 書き写しの効能は漢字だけではなく、日本語で書かれた文章に日常的に接することです。日本帰国後、学校での勉強は書かれた日本語を読むことが最も肝心です。読むことができて、はじめて書くことができるようになり、「聞く・話す・読む・書く」の4技能がそろって、本当の第1言語となるのです。お母さんはご心配されていますが、書かれた日本語の読みの学習に集中し始める小学校3年生で日本の学校へお帰りになるのは、日本語を母語として身に付ける最もいい時期だと思います。



 日本帰国まで、あと1年あります。これからできることをまとめてみましょう。

仝獣蝋擦諒拔をしっかりさせて、「読書の習慣づけ」「スタディースキル」など、日本の学校ではあまり指導されることのない「宝物」を身に付ける。

日本の教科書で学ぶ補習校の勉強を、今まで通り続ける。

2板蹐如∋匐,燭舛書かれた日本語に接する機会を増やす環境作りをする。

 以上の努力を続ければ、日本帰国の準備は大丈夫です。そして帰国後の子供たちの様子の変化を、渡米直後と同様、十分に気をつけてあげる決心をしてください。