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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

日本語を維持するには

「バイリンガル子育ての秘訣」船津 徹(TLC for Kids代表)

海外で暮らす日本人の子どもが、日本語を維持・向上させていくのは長く険しい道のりです。子どもがまだ小さい頃は日本語を育てるのは簡単です。両親が日本語で語りかけ、絵本の読み聞かせをすれば、子どもはどんどん日本語を吸収していきます。ところが、現地の小学校(完全英語環境)に通い始めると、順調だと思っていた日本語学習が停滞し始めるのです。

考えてみればこれは当たり前です。子どもは現地校で、毎日5〜6時間、英語で授業を受けています。学校から帰ってきても英語の宿題をし、英語のテレビを楽しみ、読書も英語中心です。また、この時期の子どもは兄弟姉妹や日本人の友だちとも英語でコミュニケーションをとりたがりますから、一日中英語漬けの状態です。さらに、日本語学習の内容が読み書き中心になり集中力を要すようになると、日本語に対するモチベーション低下に拍車がかかるのです。

幼児期に読み書きの力を付ける

小学校時代に起こる日本語の停滞期は、焦って改善しようとしないことがポイントです。現地校で日々英語と格闘している子どもからしてみれば、英語力を向上させることが優先であり、日常生活であまり必要のない日本語は二の次なのです。親はこの子どもの心理を理解し、現地校の勉強を中心にサポートしてあげてください。現地校の勉強に自信が持てなければ、子どもは安心して学校生活や課外活動を楽しむことができません。日本の同年代の子どもたちと同じレベルの日本語力を与えたいという親の気持ちは分かりますが、英語の重要性が高まる小学校時代に日本語教育を強調し過ぎると、かえって学習意欲を低下させる原因になります。学習のペースダウンは仕方がないものと考え、日本語については細く長く学習を継続していけるよう環境を整えてあげましょう。

日本語の停滞期を乗り切るには、小学校低学年までに日本語の読み書きを一通り教えておくことが大切です。基本的な読み書きの力が身についていれば、一時的に日本語が伸び悩んでも、あるいは学習を休止しても、日本語力を失う心配はありません。将来、子どもの意志で日本語学習を再開した時には、幼児期に獲得した日本語がよみがえり、スムーズに日本語力を伸ばしていくことができます。

テクノロジーを活用する

海外で暮らす子どもたちが日本語に触れ、日本語を使う(読む・書く)機会を増やすにはどうしたら良いでしょうか。現代社会は対面での会話よりも、Eメールやテキストなど文字を使ったコミュニケーションが主流となっています。このテクノロジーを日本語学習に活用しない手はありません。アメリカでは小学校からコンピューター指導が始まるのが一般的ですから、家庭でもコンピューターに触れさせて、基本的な使い方を教えてあげてください。

まだ早すぎると思わずに、5〜6歳の子どもにもコンピューターを使わせてあげましょう。最初は子ども用の学習ソフトを使うと良いでしょう。日本で販売されているタイピングゲームやソフトウェアを活用すれば、英文タイプだけでなく、ローマ字変換の方法もゲーム感覚で覚えていくことができます。

子ども用のメールアカウントを作り、日本にいる祖父母や親戚と文字を通してコミュニケーションする方法を教えましょう。子どもは遠い日本に住む人たちと手軽にコミュニケーションできることを喜び、自分から日本語でメールを書くようになります。日本に住む友人や親戚に協力してもらい、簡単な日本語で書かれたメールを子ども宛に送ってもらいましょう。

日本語・日本文化への興味は復活する

日本では多くの親の目の敵ですが、海外で暮らす子どもにとってマンガは日本語の教科書です。子どもが好きそうな分野のマンガを読ませてみてください。子どもの目に入る場所(トイレなど)に置いておけば、必ず手に取って読むようになります。多くのマンガにはルビがふってありますから、漢字が苦手でも読み進めることができます。

現地の中学や高校で第二外国語を習い始める年齢になると、子どもの日本語への興味は復活します。その時まで、あらゆる方法を駆使して日本語を維持してあげることが親の大切な仕事です。異国で育つ子どもにとって、日本語は心の故郷であり、アイデンティティーの拠り所であり、かけがえのないものなのです。

(2014年1月1日号掲載)