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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

考える力を育てる

「バイリンガル子育ての秘訣」船津 徹(TLC for Kids代表)

アメリカの学校に子どもが通い始めると「クリティカルシンキング」という言葉を耳にするようになります。文字通り「考える力の育成」のことで、アメリカでは1980年代以降、その必要性が盛んに強調されるようになりました。しかし、具体的に授業でどのように「クリティカルシンキング」を指導しているのか、アメリカの学校になじみが薄いといまひとつピンときません。

「クリティカルシンキング」を言葉にすると「物事を無批判に受け入れず、客観的かつ多面的に吟味し、本質を見極めていく思考態度」です。クリティカルシンキングの目的は論理的思考の育成ですが、同時に、コミュニケーション力、ライティング力、コンプリヘンション力(理解力)など、学習能力全般の向上に寄与することが分かっています。よって、多くの学校が、教科学習の理解を深める手段として「クリティカルシンキング」を授業に取り入れているわけです。

日本の講義型スタイルとは異なり、アメリカはディスカッション、ディベート、プレゼンテーションなど、生徒参加型の授業スタイルが主流です。これがクリティカルシンキング指導の例です。生徒は意見交換を通して他者の考えを批判的に検討すること、そして、自らの思考を再評価し、深めていく思考方法を学びます。この思考プロセスを多く経験することで「考える」とはどういうことかを理解していきます。

なぜクリティカルシンキング?

学校教育の目標は、社会生活で必要な実用的能力を子どもたちに与えることです。クリティカルシンキングは、実社会で出会うさまざまな問題をロジカルに分析・判断・解決していく技能です。常識、直感、偏見によるリスクを減らし、明確な根拠と論理に基づいた思考を身につけることで、迅速かつ適切な問題解決が可能になります。

高度情報化社会では情報を主体的に選択し、活用できる「情報活用能力」が不可欠です。学校教育においても情報メディアの比重が大きくなっていますが、その一方で、生徒が氾濫する情報に流されてしまうことが危惧されています。クリティカルシンキングは課題や目的に応じて情報を取捨選択し、自己の学習や生活に活用する技能です。

多様な価値観が共存するグローバル社会で活躍する人材にとって、クリティカルシンキングは必須です。文化や価値観の異なる人たちと友好な関係を築き、相互理解を深めるためには、論理的かつ偏りのない柔軟な思考が求められます。「世界は異質なものから成り立っていて、文化や習慣に上下や優劣はない」「自己の文化を大切にするのと同じように他者の文化も尊重する」そんなグローバル感覚を支える思考がクリティカルシンキングです。

自分らしく人生を生きるために

クリティカルシンキングは学習活動や社会生活で役立つ技能であると同時に、人生をより主体的に生きるためのものでもあります。考える訓練を受けて育った人は、自分は何者なのか、自分は何を信じるのか、自分は何をしたいのか、どんな人生を歩みたいのか、自分自身をより深く理解できるようになります。

周囲の人間や社会通念に流されることなく、自分で考え、判断し、行動する習慣が身につけば、自らの意思で自分の進路を選択できるようになります。結果、自分の生き方を見つめながら、目標に向かって真っすぐに進む、自分らしい人生が実現できるのです。

情報化・国際化が進んだ社会で子どもたちが個性的にたくましく生きていくためにクリティカルシンキングは欠かせない技術です。特に子どもがアメリカの学校教育を受ける場合、両親はクリティカルシンキングの重要性を認識し、家庭においても考える力の育成に取り組むことが望まれます。

子どもがよい人生を歩むために

人の一生は「選択」の連続です。毎日、毎時、毎分、今この記事を読んでいることも「選択」です。クリティカルシンキングの最大の価値は何かというと、より賢い選択が可能になることです。人生の岐路において、右と左、どちらの道を選択するかによって、その後の人生はまったく違ったものになります。人の意見や目先の利益に流されて右に行くか、自分の考えを信じて左に行くか、どちらが悔いのない人生を歩めるのかは明白です。賢い選択をするためには、自分自身を知ることが必要であり、それを実現してくれる思考技術がクリティカルシンキングなのです。


(2014年6月1日号掲載)