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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

日米学校教育の大きな違い

「バイリンガル子育ての秘訣」船津 徹(TLC for Kids代表)

アメリカと日本の学校教育の最も大きな違いは「ハードスキル」と「ソフトスキル」の比重です。ハードスキルとはテストで測定できる知識や技術のこと。ソフトスキルはテストで測定できない技能のことで、コミュニケーション、クリティカルシンキング、問題解決力、協調性、周囲への影響力などを指します。
日本の学校教育はほぼ100%ハードスキルによって生徒を評価します。高校や大学受験も一部の推薦入試を除いて、テストの点数で合否を判断します。周囲とコミュニケーションをとらなくても、授業に参加しなくても、リーダーシップを発揮しなくても、テストで高得点を取れば、良い成績がもらえ、希望の学校に合格できます。
一方、アメリカの学校はハードスキルに加えてソフトスキルも評価の対象です。「子どもがテストで『A』を取ったのに成績は『B』だった。人種差別だ!」という話をよく日本人保護者から聞きますが、これは差別しているのではなく、ソフトスキルの評価が低いのだと理解してください。

社会で成功できる技能を育てる
アメリカはテストで高得点を取っても必ずしも良い成績はもらえませんし、良い大学にも合格できません。ハードスキル中心の教育を受けてきた日本人には理不尽に思えますね。なぜそれほどまでにソフトスキルを重視するのか?その理由は学校教育の目的にあります。
アメリカの学校教育の目的は「社会で成功できる人材の育成」です。保護者は社会で役立つ実用的な技能の指導を学校に期待し、学校もそれに答えようとしています。もし「テストで高得点=社会的成功」ならば、アメリカの学校教育はハードスキル主義になっていることでしょう。
あらゆる知識へ簡単にアクセスできるようになった現代社会では、知識よりも「知識を応用する技能」の重要性が増しています。この社会環境の変化に応じて学校教育も、クリティカルシンキングやコミュニケーションといったソフトスキルの指導に重点がシフトしてきているのです。
実社会では教科書には答えが載っていない問題解決を迫られます。その時にどう思考し、判断し、行動し、検証すべきなのか。自分にとってより適切な選択ができれば、自分らしい人生を回り道少なく歩んでいけます。それを実現するための技能がソフトスキルなのです。

ソフトスキルをどう育てるのか
多くの両親はアメリカの学校教育に馴染みがないため、家庭でソフトスキルをどうサポートしてよいか分からないと思います。そんな方のためにソフトスキルの中でも重要な「クリティカルシンキング」と「コミュニケーション」についてお話しします。
クリティカルシンキングは簡単に言えば「問う習慣」です。なぜなのか?本当なのか?そのようにあらゆる事象について「なぜ?」と問う習慣を子どもに与えるのです。情報が氾濫する現代社会では、知らず知らずのうちに他者の意見に流
されるリスクが存在します。「なぜなのか?」「本当なのか?」と問うことによって、思い込みや直感による判断ミスを回避できるようになります。
学校では「私はこう思う。なぜなら〜」「私は賛成だ。なぜなら〜」という受け答えが要求されます。これに対応するには、日頃から自分の思考について「なぜそう思うのか」と問う習慣を持つことが必要です。まずは両親が「なぜ?」と問うことから始めてください「。果物は何が好き?」と聞けば「、リンゴ」と答えます。「なぜリンゴが好きなの?」と問えば、子どもはより深く考える習慣が身に付きます。

コミュニケーションスキルは明瞭性
アメリカ流のコミュニケーションスキルとは「明晰・簡潔に伝える技術」です。多様な人種、民族、文化、価値観が混在する多文化社会では、言葉を明確かつシンプルにしなければ、自分の考えを正しく相手に理解してもらうことはできません。言葉を明晰にする習慣を身に付けることで、文化や価値観の違いから生じる誤解を避けることができます。 日本人最大の弱点がコミュニケーションスキルです。多くの日本人は直接的な言い方よりもあいまいな表現の方が、やわらかくて丁寧な感じが出ると思っています。しかし、アメリカの学校ではあいまい表現は通用しません。郷に入れば郷に従えです。親子の会話においても「あれ」「別に」「何となく」といった不明瞭な表現は避け、明快なコミュニケーションを心がけてください。


(2015年7月1日号掲載)