学ぶ・育てる
Study

アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

バイリンガルの特性を活かす

「バイリンガル子育ての秘訣」船津 徹(TLC for Kids代表)

子どもをバイリンガルに育てるには、親子が長期間にわたってコツコツと努力を継続しなければなりません。でも苦労してバイリンガルに育てたその先には何があるのでしょうか?バイリンガル育児の実践は子どもにどのようなメリットをもたらすのでしょうか?
確かに2つの言語を話せれば、大学進学や就職での選択肢は広がります。まだ日本やアジア諸国では英語が話せる人はそう多くないですから、バイリンガルであることの利点は大きいです。でもアメリカの学校生活を生き抜いてきたバイリンガルたちが身に付ける利点は言語だけには留まりません。

グローバルな価値観
海外で育つバイリンガルの子どもは、2つの言葉と2つの文化を受け入れながら成長していきます。そのプロセスにおいて、モノリンガルの人とは異なる、独特な世界観とアイデンティティーを形成していきます。
特定の文化が持つ価値観にとらわれることなく、物事を多様な角度から見ることができるのが、バイリンガルの強みです。偏りのない価値観を育むことは、人間形成途上にある子ども時代にのみ可能であり、大人になって身に付けることは極めて困難です。
政治、経済、教育、環境、医療、あらゆる分野において国境を越えた理解と協力が求められるグローバル時代。バイリンガルの子どもたちは、人種・民族・宗教を越えて相互理解を増進することができる人材、異文化をつなぐ架け橋としての役割が大いに期待されます。
子どもをグローバルリーダーへと導くには、母文化の土台に加えて欧米文化への理解をバランス良く育てることが大切です。両親が特定文化へのこだわりが強いと、グローバルな価値観どころか、異文化への偏見を植えつけることになりかねません。世界中の文化や習慣には上下優劣はありません。お互いの違いを受け入れ、認め、尊敬し合うことから異文化理解はスタートします。

高いコミュニケーションスキル
バイリンガルの子どもは学校教育でアメリカ流のコミュニケーションを叩き込まれます。自分の考え・意見・立場を明確にする、ロジカルに思考し分かりやすく伝える、積極的に議論に参加する。多文化社会であるアメリカでは、文化背景の違いによる誤解を避けるために「言葉」を重視したコミュニケーションスタイルを子どもたちに指導します。
単一民族間のコミュニケーションに慣れきっている日本人は、いちいち言葉に出して説明しなくても理解し合える「察し」を重視したコミュニケーションスタイルを好みます。また日本は「和」が社会の根底にあるので、グループ内の衝突を避けるために、自分の考えや意見を状況に合わせて変えたり、直接的な表現を避ける傾向があります。
バイリンガルの子どもは家庭では日本的スタイル。学校ではアメリカ的スタイルと、2つのコミュニケーションスタイルを学びます。その結果、相手の文化背景に応じて、より伝わりやすい、より意思疎通がスムーズなコミュニケーションスタイルを選択する能力が身に付くのです。
バイリンガルの子どもが有する高いコミュニケーション能力は、グローバル時代に最も求められているスキルです。いくら言語知識が豊富でも、コミュニケーション能力が低ければ、異文化の人と友好な関係を構築することはできません。人間は機械ではないのです。信頼関係を築くためには心の通ったコミュニケーションが必要なのです。

高い言語運用能力
バイリンガルは英語を話す時は英語で思考し、日本語を話す時は日本語で思考します。つまり日本語と英語、2つの独立した思考回路を持っているのです。そして、1つの言語から他の言語へと言葉のスイッチを自在に切り替えられます。
普通日本人は、耳にした英語を頭の中でいったん日本語に翻訳して理解し、それをまた英語に直すという翻訳作業を行います。これが多くの日本人に英語が身に付かない原因なのです。バイリンガルは言語を翻訳せず、その言語のまま理解する頭の使い方を知っています。
この優れた頭の働きは、3カ国語目、4カ国語目にも応用されます。つまり、中国語を学ぶ時は、他の言語を介在せずに、中国語のまま理解する頭の回路を作ることができるのです。だからバイリンガルは普通の人よりもはるかに短期間で、外国語を身に付けることができるのです。ぜひ2カ国語に満足せず、3カ国語目、4カ国語目にチャレンジさせてください。


(2015年10月1日号掲載)