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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

アメリカの学校での停学は受験に不利になる?

知り合いの高校生のお子さんが先日、停学処分(suspension)を受けたと聞きました。我が家はいずれ帰国して受験することになるのですが、停学歴があると日本の受験に影響するという噂を耳にしています。万が一、子供が停学になった場合、それを覆すことはできるのでしょうか。

松本輝彦(INFOE代表)

記録は送付されないが面接で聞かれることも

「安全な学校」がアメリカの教育目標のひとつになっています。具体的には、ナイフ・銃などの凶器やさまざまな薬物(ドラッグ)の学校への持ち込み防止が中心ですが、学校内での暴力やセクハラも、アメリカ全体で大きな問題になっています。
 学校の安全を確保するために、学校や学校区(school district)は、児童・生徒が従わなければならない、さまざまなルールを決めています。

さまざまな処分
 学校の安全確保のためのルールに違反した場合、あるいは学習上の問題や態度に対して、学校や学校区は児童・生徒にペナルティーを与えます。その内容は、児童・生徒自身、または保護者を呼び出して、校長からの口頭での注意や警告、警察への身柄引き渡し、一時的に学校への登校を禁止する「停学」、その学校区の学校への通学を拒否する「退学(expulsion)」など、違反の内容、レベル、回数などに応じて多様です。
 一般的には、違反行為があった場合、その児童・生徒の人権や、教育を受ける権利を尊重するため、ルールに従って、事実確認のための聴聞会などのさまざまなプロセスを経て、最終的な判断が下されます。それらの処分や判断に保護者として異議がある場合は、学校区理事会に対して、再調査を行ったり、聴聞会を開いたりすることを要求できます。
 ただし、その違反が学校や学校区の裁量の範囲を超えている場合、例えば、学校内に刃渡り5インチ以上のナイフを持ち込んだ場合など、予め決められた基準を超えている場合は、犯罪行為として直ちに地元の警察に通報され、警察が捜査を開始します。

「ゼロ・トレランス」に要注意
 ゼロ・トレランス(ZeroTolerance)というルールを設けて、学校の安全確保に厳しく対応している学校や学校区があります。このルールは、「凶器・薬物を学校内に持ち込んだ児童・生徒は、直ちに停学もしくは退学処分になる」という、非常に厳しいものです。
 重要なのは「直ちに」の部分です。学校や学校区は、さまざまなプロセスを経て処分を決めると述べましたが、このルールでは、違反を犯した児童・生徒は、そのようなプロセスなしで「直ちに」停学や退学の処分を下されることになります。この厳しさが「ゼロ・トレランス」の特徴です。

処分にも文化の違い
 日本の学校の場合、学校の裁量権の範囲が不明確で、「教育上の配慮」がアメリカに比べて実質的に非常に幅広く捉えられています。時には、深刻な校則違反であっても、担任や校長の説諭のみで済まされ、公にならないケースさえみられます。しかし、アメリカは「守るためにルールは作られている」と考えられており、現地校で学ぶ日本人の児童・生徒でも、日本では考えらないような厳しい処分を受ける場合がありますので注意が必要です。

受けた処分の記録は?
 ご質問にある「停学の経歴」については、私自身これまで数多くの現地校の成績証明書などの公的書類を見てきましたが、その中に「停学」や「退学」などの記載があるものを見た経験はありません。
 その理由として、ファイル(フォルダー)による児童・生徒の学校記録の管理システムが考えられます。子供たちが、アメリカで初めて入学、編入学した学校では、子供1人ひとりのファイルを作成し、その中に学業や学校生活の記録を保管します。転校した場合には、転校先の学校の要請により、前籍校はその記録を転校先に送付します。新しい学校は、このファイルにその学校での記録を追加していきます。
 しかし、これらの記録の長期にわたる保存は、高校以外の学校には要求されません。高校進学時に廃棄処分にする中学校すらあります。また、高校では、卒業資格を与えるため、学業の記録(取得した科目や単位数など)は大切に保管されますが、それ以外の記録は卒業後、廃棄処分されます。
 ただし、帰国子女受け入れ校で、現地校の成績証明書の内容や見方を熟知している学校は、取得単位がゼロや極端に少ない学期がある事実を見抜き、面接時に説明を求めることも考えられますので、お子さんに注意を促してください。