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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

公立学校の特別クラスは自分で選べますか?

公立学校にある、「オナーズ」「ゲート」「マグネット」「AP」というクラスの種類を詳しく教えてください。またそれらは、自分で選ぶことができるのでしょうか?

松本輝彦(INFOE代表)

特色あるクラスは特色ある選抜で

ご質問にある公立学校における特別なクラスの種類は、アメリカにおける公立学校教育の特色をよく表しています。それぞれの言葉の意味を紹介しましょう。

オナーズ:高校のハイレベルクラス

 アメリカの高校は希望者全入ですから、通学区域に居住する者が、入試などで選考されることなく進学します。高校によっては1学年700〜800名、4学年で3千名以上の大規模校もあります。
 生徒数が多いので、学力の異なる生徒に、同じ学習内容を同じクラスで教えることは不可能です。そのため、習熟度別クラスが編成されます。一般的に、習熟度の低い方から「シェルター(shelter)」「レギュラー(regular)」「オナーズ(honors)」と呼ばれます。英語力の低い生徒のために「ESLクラス」を設けている学校もあります。一部の中学でも似たような習熟度別クラスを設けています。
 どのクラスでも学習する最低限の内容は同じですが、レベルが上がるに従って、学習進度が速かったり、内容を深く掘り下げたりして、生徒の学力に応じた指導がされます。どのクラスを受講するかは、カウンセラー、科目担当教員の推薦や生徒自身の希望に基づいて決められます。しかし、どのクラスを履修しても、高校卒業資格の取得に差はつきません。

ゲート:一種の英才教育

 ゲート(GATE=Gifted and Talented Education)プログラムは、学校教育の早い段階で、さまざまな能力に恵まれた子供を見出し、その才能に応じた教育を与えようという、全米の公立学校で実施されている英才教育です。
 授業中の成果や学力試験の結果などで、子供に特別な才能を発見した担任が学校区(school district)に推薦します。学校区では、教育心理学などの専門家を含むチームが、試験やインタビューなどを実施して、才能の有無の判断を行います。保護者が認定審査を希望することも可能です。
 その子供が才能に恵まれていると認定された場合、ゲートスチューデントとなり、学校区が提供する通常クラス以外のゲートプログラム(マグネットの学校やクラス)に参加することができます。
 ゲートの対象となる才能は、算数や英語などの教科だけではなく、美術や音楽など幅広い分野が含まれます。幼い時期に才能を見出し伸ばすという考え方から、4年生くらいまでに認定されるケースがほとんどです。

マグネット:優等生を引き寄せる

 マグネットスクールは、ゲートスチューデントや学業成績が優秀な子供を、磁石で引き寄せるように集めて、よりレベルの高い学習内容を厳しく指導する学校で、中学や高校が一般的です。ゲートスチューデント、先生の推薦の他、定員に余裕があれば希望者から選考して、入学が許可されます。
 ロサンゼルス学校区(LAUSD)のように、児童・生徒数も多く規模の大きな学校区では、数学・科学、音楽・芸術、医学などの分野でマグネットスクールを設けています。学校を作るほどゲートスチューデントがいない比較的小さな学校区では、マグネットクラスを設け、週に何時間か、近隣の学校のゲートスチューデントを集めています。例外的に、英語力の十分でないESLの子供だけを集めた、英語のマグネットクラスもみられます。

AP:大学の単位を先取り

 AP(Advanced Placement)は、高校在学中に大学レベルの授業を受け、試験に合格した場合、大学の履修単位として認めるという、全米規模のプログラムです。
 AP試験のために、オナーズクラスの上にAPクラスが設けられます。受講生はそれまでの成績を基に決められます。英語、数学、アメリカ史など高校卒業の必修科目を、大学教養課程レベルの学習内容で学び、毎年5月に全米で実施されるAP試験を受験します。それに合格した場合、大学入学後にその科目を修得したものとして、単位を認定され、高校卒業と大学卒業の単位を同時に得られることになります。合格したAPの科目数と種類によっては、大学入学時点で、大学2年生になることも可能で、全米で毎年約3万人の大学進学者がこの制度を利用しています。保護者の立場で考えると、大学の1年分の授業料や寮費が節約できることになります。

日米の学校教育における公平観の違い

 日本もアメリカも、公立学校では「フェア」な教育を目指しています。しかし、日本では「すべての子供に同じ教育」が、アメリカでは「 子供1人ひとりの能力に応じた教育」 がフェアだと考えられています。ですからアメリカの学校では、多様なクラスやプログラムが設けられているのです。