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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

両親ともに英語はノンネイティブ、子供には何語で話しかけるべき?

 まもなく子供が産まれますが、夫の母語は中国語、私の母語は日本語、普段の会話は英語です。子育てをする際、どの言語で話しかければよいのでしょうか。

松本輝彦(INFOE代表)

両親のそれぞれの母語で
愛情を精一杯伝えるのが第一

赤ちゃんへの語りかけ
 お母さんの赤ちゃんへの語りかけは、意思疎通以上のものを含んでいます。それは、お母さんのあふれるばかりの愛情です。柔らかい音と気持ちを込めた言葉を通して、肌の触れ合いと相まって、お母さんが赤ちゃんを愛おしむ気持ちを赤ちゃんは受け止めるのです。そして、赤ちゃんは表情と手足のしぐさで、その気持ちをお母さんに伝えます。もちろん、それはお父さんと赤ちゃんにとっても同じです。ご両親が自分の愛情を精一杯伝えられる言葉、すなわち自分自身が育てられてきた母語で語りかけることが大切です。

 愛情に満ちた環境の中で育てられている場合と、そうでない場合の赤ちゃんの反応が大きく異なることは、最近の赤ちゃんの脳の研究結果などで、多く報告されています。乳児への語りかけで伝えられるものは、言語の意味と言うより、その語りかけの環境と考えるのが妥当でしょう。

幼児への語りかけ
 幼児期に家庭内で使う言葉が、その子供の言語発達に大きな役割を果たします。幼児期は、爆発的に言葉を習得する成長期です。また、日常生活に必要な「生活言語」の習得の大切な時期でもあります。

 この大切な時期でも、家庭での使用言語はご両親の母語だと思います。現実的には、子供と最も長い時間を一緒に過ごすお母さんの言葉が中心となります。もちろん、お父さんにも母語の会話を頑張ってもらいましょう。

 この時期、子供の使う言葉に日本語・中国語での混乱がみられたとしても、それを深刻に受け取る必要はないと思います。自分の言葉が何語であるのか、認識できるようになるのは幼児期を終わる頃ですし、それがわかってもほんの一時的な混乱に過ぎないと、私の経験から言えます。むしろ、この時期を異なった言葉の環境の中で育つことにより、子供自身の中に「言葉に対する感性」が芽生えて、言葉の能力が向上し、将来のバイリンガルの基礎が築かれる、と私は信じています。

家庭の外での言葉
 幼児になると、親以外の人とのコミュニケーションが始まります。その相手は、まず遊び友達で、日本で言う「お砂場デビュー」です。その遊び相手に、母語が日本語の子供を選ぶなら、当然、初歩的な遊び言葉を通して、日本語の語彙が豊富になっていきます。

 しかし、遊び友達の輪が広くなるに従って、この社会の第1言語である英語の言葉や表現が中心になっていきます。

学習言語
 「生活言語」に対して、その言葉を使って学び・考える、読み書きのレベルの言葉を「学習言語」と言います。

 お子さんが、キンダーから始まる学校教育を現地の学校で受けるならば、学習言語は「英語」になります。学校での学習を通して、読み書きの言語レベルまでの能力である学習言語を身につけて、その子供の第1言語が完成します。第1言語の完成が、子供のアカデミックな能力の向上に絶対に必要です。

 また子供は成長するに従って、学校だけではなく、自分自身が生活している社会全体からより多くのものを学び、大人になっていくことを頭に置いてください。ですから、アメリカの学校教育を受けさせるならば、学習言語は当然英語になりますし、そうならなければ学校でサバイブできません。

 学習言語が重要だからと、自分たちの母語を放棄して、家庭内で英語を使い始める両親がいます。このやり方に私は反対です。英語が母語でない親がにわか仕込みの英語を使っても、学習言語レベルの英語を身につけている子供にとっては、たいした助けになりません。それより、赤ちゃんの時から築いてきた、両親の母語での親子関係を続けてあげるほうが、より大きな助けになります。子供が思春期を迎えた時に、そのありがたさがはっきり分かると、信じています。

 アメリカ社会の英語と家庭での日本語や中国語が、バイリンガル、さらにはバイカルチャーの基礎です。その環境とご両親の努力が、お2人を超えた可能性を持ったお子さんを育てるのです。