学ぶ・育てる
Study

アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

海外子女の「宝」について教えてください。

 海外子女の「宝」という言葉をよく聞きます。
渡米3年で英語力も不十分な子供が、本当に「宝」と言えるようなものを身につけているのでしょうか? 

松本輝彦(INFOE代表)

日本の大学のクラスを紹介して、海外子女の「宝」を説明します。

夏季集中クラス
 私が受け持つ早稲田大学のクラスは、もう5年目です。「Academic Skills for Study Abroad」という、早稲田の学生ならば誰でも受講できる、前期(4〜7月、15週間)と夏季集中(8月、1週間)のクラスです。夏季集中が終わると、受講生のほぼ半数が秋の新学期に向けて欧米の大学へ出発します。
 教えているのは、英語で Five Paragraph Essay(5段落エッセイ、以下FPE)、特に自分の意見を相手に認めさせるタイプ(persuasive essay)のエッセイを書くトレーニングです。

なぜ、5段落エッセイ?
 最近、アメリカの高校生が4年制大学出願時に必要とされるSAT試験に、Writing Section(エッセイ)が、新しく加えられました。入学を許可する前にその力を知りたいという大学側の希望があるからです。留学生としてサバイブするためにも、エッセイを書く力が要求されます。

驚きのスタート!
 1年目の開講前、留学先でのサバイブに必要なレベルの英文エッセイの書き方指導のカリキュラムを準備して、授業に臨みました。しかし、最初のクラスで、私の予想はものの見事に覆されました。
 開講時の課題として、アメリカの高校生向けのテーマで自分の意見を述べるエッセイを日本語と英語で書くことを要求しました。ところが出てきたエッセイには、数人の学生のものを除いて、何の主張もなく、主張をサポートする文も見当たりませんでした。英文どころか、文章を書く以前の自分の意見を形成するステップが、日本語ですらまったくできていないことに、愕然としました。

なぜ、書けないのか? 
 日本でも優秀な早稲田の学生が、それも留学してでも学びたいという向学心に燃えた受講生が、なぜ書けないのか?
 彼らの提出した日本語と英語のエッセイを何度も読み返し、数人の受講生と話もしました。その結果、彼らの文章には「自分の意見」がないことがはっきりわかりました。主張するものがなければ、それを読者にわかってもらうための、理由も論理も要らないのです。なぜ意見がないのか、その理由をさらに考えてみました。
 簡単でした。日本の学校教育で、そのようなトレーニングや指導がなされてこなかった。それが「書けない」理由だったのです。
 
早稲田のクラスでは?
 今では、早稲田のクラスの毎年第1回目の授業で、「アメリカの学校では、FPEの基礎トレーニングは小学校4〜6年生でやります。君たちはそんなトレーニングを受けたことがないから、書けないのです。それでは留学生としてサバイブできません。簡単ですが、このレベルの練習から始めます」と、受講生にはっきりと宣告します。
 「書けない」ことは、学生たちの責任ではなく、文章を書く教育を受ける機会が与えられなかったに過ぎないのです。自分の意見をまとめて、しっかりした理由を付けて、相手を説得できる文章を書くトレーニングの開始です。クラスが終わる時に、「書き方のトレーニングを終えました。『書けない』という言い訳はもう通用しません」と、再び言い渡します。

その成果は?
 こんなクラスですが、5年も続いているのは、学生の口コミでその成果が評価されているからです。
 「クラスのOBが5大商社すべての内定を取った」「受講生が留学先でストレートAだった」「今年から有料(このクラスは、大学の授業料とは別に受講料が必要)になったのに、70人もの受講生が集まった」など。一橋大学でも、同じトレーニングと指導を始めて、3年目になります。「自画自賛」と言われないように、これくらいにしましょう。


 「日本の教育にないもの」が、おわかりいただけたでしょうか? 実は、現地校で学んでいる皆さんのお子さんは、その「ないもの」を日々身につけているのです。それが、海外子女の「宝」です。