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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

指導要領について教えてください。

最近、日本の教育のニュースで、「指導要領が変わる」という言葉がよく出てきます。この指導要領とは何でしょうか。

松本輝彦(INFOE代表)

日本の小学校から高校までの学校で教える内容を決めた文書です。

指導要領
日本では教科・時間数・指導内容などのカリキュラムが具体的に、法律に基づいて決められています。学校はその規定に従った教育を実施しなければなりません。

最初の指導要領は、第2次世界大戦後(1947年)に作られました。その後、社会の教育へのニーズや子供たちの学習状況の変化に対応するため、ほぼ10年おきに改定されてきました。新しい内容をどのようなものにするのかは、中央教育審議会で議論しまとめて案を作り、最終的に文部科学省が公表します。

2002年の現在の指導要領の改訂作業が、小・中学校では09年度から算数・数学、理科、社会などを前倒しで実施し、11年度以降に小学校から高校で完全実施する予定で、急ピッチで進められています。今回の改訂は、1947年に制定された日本の教育に関する憲法である「教育基本法」の06年の改定を受けて、内容が大きく変更される可能性があり、注目されています。

何が変わる?
(1)「ゆとり教育」の終わり?

現在の指導要領は、授業時間数の減少・完全週5日制・総合的学習の導入などで「ゆとり教育」を目指してきました。しかし、その結果として「学力の低下」が指摘・批判されました。そこで、新しい指導要領では「基礎・基本の習得」を目指して、必修科目の授業時間数を増やすことになりました。「総合的学習」を最大150時間減らし、算数を142時間、数学を70時間、理科は小学校55時間、中学校95時間増やします。この理数科目の増加に伴って、1年間に授業を受ける時間数も増えることになります。

(2)高度な学習の復活
今の指導要領の小学校算数の円周率「3」を「3.14」に変更し、「台形の面積の求め方」も教えます。このほかにも、高度な学習内容として、上の学年に先送りされていた項目が、以前の指導要領に近い形に戻されることになりました。

(3)小学校で英語が必修
これまで「外国語会話活動」として学校で自由に教えていた英会話を、小学校5、6年生で週1回の英語として必修化しました。「英語」が正式科目になることにより、小学校の英語の先生が増えたり、教科書が作られることになります。早期英語教育の充実です。

(4)小学校で古文・漢文の音読
教育基本法で決めた愛国(心)教育の「伝統と文化を尊重」を反映して、小学校での古文・漢文の音読や、そろばんの指導を充実させることになりました。

(5) 最低基準
現在の指導要領の「指導要領以上の学習内容を教えない」という考え方を、「指導要領は最低基準」と変更して、指導要領の範囲を超える内容を教えることが可能になりました。「発展的学習」を教える教科書や学校が出てきて、教育のさらなる多様化が進みます。

海外の子供への影響は?
来年4月から補習校や日本人学校の教科書が変わります。内容が増え、子供の負担が大きくなるでしょう。しかし、現地校の学習進度より遅い現在の内容が、新しい教科書では現地校に追い付く部分が多くなり、渡航直後の「算数がわからない」子供が減ったり、補習校の勉強が現地校の予習になるなど、海外の子供にとってプラスになることもあります。

「最低基準」の考えが広がると、学校による学習内容に大きな差が出てくる可能性があります。特に私立の学校では、入試を目指して高いレベルの学習をさせます。この指導内容・レベルの差の拡大が、帰国した子供にマイナスになることもあります。補習校の勉強だけでは、帰国後の勉強に付いていけない、出題レベルが高くて受験が大変、などの影響が考えられます。しかし、「最低基準」を超えてどのレベルまで教えていいのか、文部科学省は明確にしていません。具体的には、教科書の検定プロセスで「上限」が明らかになってきます。


今回は、日本の「指導要領」という少し硬い内容でしたが、お子さんの勉強にも影響があることをおわかりいただけましたでしょうか。急激に変わる日本の教育から目が離せませんね。インターネットのニュースに気を付けましょう!