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アメリカでの育児・子育て

ライトハウスに連載中の人気教育コラム、ハワイ在住の専門家がバイリンガル教育のノウハウを提案する「船津徹のアメリカで実践 バイリンガル子育ての秘訣」のほか、英語学習や学校教育、受験などについての疑問に答える「教育カウンセリング」をご紹介。アメリカでの育児・子育て・教育・子供の学校選び・進学に役立つ情報を提供しています。

船津 徹
船津 徹

バイリンガル教育カウンセラー。福岡県生まれ。

5年生の男の子が補習校に行きたがりません。いつまで続ければ良いですか?

5年生の男の子が補習校に行きたがりません。いつまで続ければ良いですか?

松本輝彦(INFOE代表)

補習校は中学卒業を目標に。バイリンガルに育てる。

「5年生の壁」
4・5年生で、「補習校に行きたくない」「辞めたい」という子供、特に男の子が増えてきます。その主な理由は、「体力の向上」と「勉強の変化」です。

この時期の子供の抱える問題、特に「第一言語の習得」への最後の坂道を、私は「5年生の壁」と呼んでいます。


身体と心の変化
小学校高学年から中学までの子供の身体の成長と体力の向上は大変大きく、それに伴い精神的にも大きな変化が現れます。俗に言う「思春期」です。

4・5年生は、その始まりの年齢です。外見的には、身体の発達と運動能力の向上が目立つ時期です。特に、男の子は「じっとしていられない」と身体を動かしたがるようになります。本格的にスポーツを始める子供が多くなり、補習校の欠席など、勉強にも大きな影響が出てきます。


「読み書き」の勉強に移る
「話し言葉」での勉強から「書き言葉」での勉強に大きく変化するのも4・5年生です。
 
補習校の国語や社会で扱う教材は、もはや親子の会話の内容のレベルではなく、「大陸漂流説」「環境問題」など抽象的で幅広い題材に変わっていきます。その内容を、自分1人で「読んで、考え、書く」作業が、勉強の中心となってきます。

実は、この勉強の変化は、日本だけではなくアメリカの学校での勉強でも起きてきます。現地校での「エッセイ」の勉強の始まりと徹底した指導が、その象徴です。

この現地校と補習校での「じっと机に向かっての勉強への変化」に対応できない子供が、日米どちらでも多く出てきます。


第一言語の完成期
この「読み書き」の学習レベルを乗り越えれば、お子さんの言葉は「第一言語」「ネイティブとしての言葉」の基礎が完成します。逆に言うと、この壁で止まると、「おしゃべりだけ」「大人では通用しないバイリンガル」で終わってしまいます。

中学1・2年生までのこの段階は、高校・大学、さらには大人になってからの学習や生活に必要な基礎的な言語の力を身に付ける、非常に大切な時期です。その基礎の上に、より専門的な知識の習得や抽象的な思考力を築いていきます。

「読み書き」の力を付けることは、言語の基礎の習得に終わらず、社会人としての基礎能力やアカデミックな学力の基盤となるのです。


目標は中学卒業
お子さんには、「中学卒業までがんばろう」と(ご夫婦で)声を掛けてください。学校教育のひと区切りで、分かりやすい目標になります。この掛け声の下、大変な海外での日本語の習得、日本語での学習を続けていきましょう。

しかし、この目標の最終段階の中学2・3年は、現地校の勉強も坂道にかかってきます。がんばって勉強している子供には「もっとレベルの高い勉強を」、苦労している生徒には「高校に備えて基礎力の充実を」と、家庭学習の質・量が共に増えてきます。学力や知識の飛躍的な向上の中心となるのは、当然週5日学んでいる現地校の勉強ですから、力を抜くわけにはいきません。

そのため、「中学卒業」の目標を達成するのは大変になってきます。そこで、現実的な(保護者だけに向けての)目標として「最低、中学1年終了まで」を、私はすすめています。その理由は、これまでの説明でお分かりになるように、「第一言語としての日本語の習得」です。


これからのバイリンガル?
今の子供たちが大人になった時に「宝」となるバイリンガルのレベルは、「会話」だけではなく「日本語と英語で読み書きも出来ること」です。そして、その言葉の力で、多くの異なった文化を吸収し理解していく「バイ・カルチャー」のレベルが、現代の子育ての目標です。

子供だけではなく保護者にとっても、「バイ・カルチャー」のレベルに達するまでには大きな努力が必要です。もし、お子さんをこのレベルまで育てる決心をしたならば、ここで紹介した「5年生の壁」を親子で乗り越える最大限の努力をしてください。

あと2・3年のがんばりで、お子さん自身を「宝物」に変えてあげることができるのです。



(2009年4月1日号掲載)