創作/制作総指揮者 ハート・ハンソン

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起業家と雇われ社長の関係

ヘビメタのギタリストの道を断念後、トロント大学で英文学と政治理論を専攻。小説コンテストに入賞し、自転車カナダ横断日記を地元新聞に投稿。修士号取得中に宿題で書いた脚本をCBC局が購入してテレビ界に入り、『Traders』でジェミニ賞受賞。1999年、エージェントに逆らってLAに移住。『Cupid』『Snoops』を経て、『Judging Amy』では3年で制作総指揮まで昇格。『Joan of Arcadia』制作に関与後、2004年『Bones』を創作。

現役の法人類学者が書き下ろした小説の主人公を基に、ハート・ハンソンが創作した『Bones』は、人間ドラマ色の濃い科学捜査モノ。火曜日放送の『Bones』と『House』は、いずれもカナダ勢の作品。『House』創作者のショアと密かに、「カナダの日」と呼んでいるとか。本場での運試し秘話を尋ねた。

プロデューサーの役割はシーズンごとに進化しますか?

ハンソン(以下H):3年目は新鮮さが薄れて行く分、ファンをいかに引きつけておくかが課題。50話余り制作したので、「◯話と似てない?」という会話が出るようになりました(笑)。

創造過程にワクワクするのが放送作家だと思いますが、番組が落ち着くと、創作意欲が湧いてきませんか?

H:仲間がパイロットを撮っていると聞くと、ムズムズしますね(笑)。「もうたくさん!」と思ったら、後継者に任せて新作を手がけるかもしれません。番組創作と制作指揮は、起業家と雇われ社長の関係ですから。

カナダでご活躍だったのに、なぜLAに?

H:『Traders』のジェミニ賞をもらいに舞台に向かう途中、潮時か? と。「大リーグで運試ししたい」とエージェントに言ったら、「絶対無理」のひと言に発奮したものの、40近くで売り込みに行くのは惨めでした。当時放送していた番組の中で、リサーチなしで書ける『Ally McBeal』を名刺代わりに書いたので、LAではコメディー作家のレッテルを貼られて。

ドラマがお好きですよね?

H:『Cupid』の後、『Judging Amy』でスタッフライターに雇われましたが、創作者バーバラ・ホールに気に入られたのは、感性が似ていたから。どの番組でも創作者と同様のレンズを持ち合わせていて、そういう先輩が番組を制作していたのはラッキーでした。大家族で育ち、皆が何を考えているのか観察しながら大人になりました。シーズン1でボーンズの口癖だった「どういう意味?」は、息子から「お父さんの口癖だ!」と指摘され、意味を分析してドラマ
材料にしているのだと(笑)。

FOXのお抱えプロデューサーになられた経緯は?

H:デビッド・ケリーの『Snoops』を自ら辞めたのに、なぜかFOXに推してくださったようです。番組の創作が任務ですが、パイロットが番組にならない場合は、同社が制作中の番組を手伝うのがお抱え。僕の契約は6年になりますが、中には遊んでいる人もいますよ。

『Joan of Arcadia』が打ち切られ、未だに残念無念。

H:天才ホールの番組立ち上げの助っ人に駆り出されました。僕はFOX、ホールは当時ソニーのお抱えだったので、普通は考えられないことですが、13話ならと。神様に翻弄される女子高生のドラマはもっと続けたかったですね。

放送作家にアドバイスを。

H:既存の番組のカラーやスタイルを変えずに書けるかどうかが登竜門です。既存の番組の脚本と、オリジナル作品のパイロットの脚本が揃うと鬼に金棒。人を唸らせるほど良いサンプルを書けば、必ず誰かの目に留まります!

[業界コボレ話]
40人の子供が大人の監視なしで、ゴーストタウンを切り盛りするリアリティー番組『Kid Nation』に、すっかりハマっている。
町への貢献度を称え、子供評議員が贈る2万ドル相当の純金の星を巡り、大人の世界と同様の策略が渦巻く。人目につく作業のみを買って出るずる賢い子や根回しに余念がない子を見抜く賢い子供たち。見かけで人を評価する美少女コンテスト荒しの子だけが騙されるのは実に痛快!
日本では刹那主義の気力のない子供が増える一方だが、この番組を見る限り、米国の少年少女は捨てたものではない。持って生まれた直感や無邪気さを守ってやれば、大人顔負けの知恵を発揮してくれそうだ。希望が湧く。

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