創作者/プロデューサー ドナルド・トッド

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善悪の岐路に立った瞬間の二者択一

Donald Todd
自他共に認めるテレビっ子。大学で演劇を専攻したが、ブロードウェイはご免と、放送作家を目指してLAに。業界の使いっ走り、広報など、さまざまな地位を経て、『Twilight Zone』のリメイクを執筆して以来、『Alf』『Dave’s World』『Life As We Know It』など、主にコメディー作家として活躍。27歳で、ショーランナーとしても抜擢され、制作現場の経験を積む。『Ugly Betty』でWGA最優秀新番組賞を獲得後、昨秋より『Samantha Who?』で活躍中。

コメディーの古典『The Dick Van Dyke Show』に憧れて放送作家を目指したが、現実は大違いと笑うドナルド・トッド。ABCのお抱えプロデューサーとして発表したパイロットがポシャった体験を活かして、『Samantha Who?』を企画して大成功。苦い体験から得た番組作りの秘訣とは?

創作の経緯は?

トッド(以下T):セシリア・エイハーンの『P.S. I Love You』を読んだABCのお偉方が、番組創作を依頼。企画は通ったものの、エイハーンは放送作家ではないので、3日連続面接をして私に白羽の矢が立ちました。

クリスティーナをイメージして執筆を?

T:テレビ出演は蹴り続けていた喜劇の最高峰なので、キャスティングは無理かと。ですから台本が良いと受けてもらって、筆がスラスラ。セクシー美女なのに庶民的、天使と悪魔を厭味なく演じる類稀なる女優です。

記憶を失い人生を見直すサムですが、趣旨は自分探しですか?

T:白紙に戻ったわけで、何を書き込むか、何色に染めるかは日々の積み重ね次第。新しい人間に生まれ変わるのか? 行き着く先が決まっているから、行動は人となりの表現か? など、哲学的疑問が湧いてきます。テレビの使命は、答えを出すことではありません。特に、台詞に答えを盛り込むのは厳禁!

悲劇がない限り、人間は自分探しの旅には出ないものでは?

T:障壁に正面衝突した衝撃で後ずさりを強いられて、初めて反省するのが人間。人生のレールをまっしぐらに走っている人は、少々のことがあってもいち早く元に戻って旅を続けようとします。サムの場合、脳がショートして「善の回路」につながりましたが、「悪の回路」も残っていて、時々昔の言動が飛び出すので、善悪の岐路に立った瞬間の二者択一が最大の課題。

業界に入られたきっかけは?

T:放送作家が主人公の番組を観て、「楽しそう!」と感激したテレビっ子。暗くなる前に帰宅する主人公に憧れましたが、あれはファンタジーでしたね(笑)。テレビガイド誌の『Family Ties』の放送作家の記事を起爆剤に、大学卒業後LAに直行。使いっ走りで業界に入って書きまくり、エージェントに巡り会い、CBSの『Twilight Zone』のリメイクが初仕事でした。その後、ドラマ1年、コメディーに手を染めて15年です。

今はABCのお抱えですか?

T:放送中の作品傾向を分析して、斬新な企画を出す主義でしたが、立て続けにパイロットがポシャりまして(笑)。ABCの視聴者の性質とヒット作との互換性が大切で、流れに逆らっても無駄と悟りました。本作は、編成上前番組と後番組のスタイルや姿勢と類似していれば、視聴者を引き付けておけると判断。放送にこぎ着けるため、「プロデューサー脳」で考えました。

シリーズ創作を夢見る放送作家にひと言。

T:特に失敗作のテーマや内容、放送局/時間、裏番組等を分析すると良いでしょう。柳の下のドジョウ狙い、私的なこだわりで作品を書くのは無駄。忙しい現代人が「時間を割いても観たい!」と思わせる作品を書いてください。

[業界コボレ話]
秀作を持っているのに、依然として低視聴率に悩むNBCが08~09年のスケジュールを発表。苦肉の策は1年を通じて新番組を発表していくというもの。数年前、FOXが実施したが、半年も経たないうちに放棄した戦術だ。
『Friday Night Lights』や『Lipstick Jungle』の継続、『Monk』が09年夏にも予定されているのはうれしいが、『Medium』がまた日曜日に移動。視聴者を混乱させ、葬り去るつもりなのか?
パイロットを観るまでは何とも言えないが、新番組はどれもパッとしない。『Knight Rider』のリメイク、『クルーソー漂流記』のテレビ化、SF2本、ファンタジー2本、冒険モノ1本。『The Office』のスピンオフに歓喜しているファンはいると思うが、お先真っ暗!?

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