ニューシーズン・プレスツアーリポート

ライトハウス電子版アプリ、始めました

今年からケーブル局のプレスツアーに参加が許され、7月12日から計17日間の長~いツアーになった。ケーブル局は金持ちだ♪ 印刷代の高そうな凝ったパンフレット、番組にちなんだ手土産が席に山積みされる。ホテルに宿泊している評論家の部屋には、毎日つけ届けがあったらしい。
なかでもHBO主催のパーティーは、オシャレなブティックホテルのプールサイド、星空の下でスターらと歓談しながら、シャンペン、チョコレート、ロブスター、ステーキ食べ放題のうえ、帰りにお土産まで頂戴した。それでも昔より財布の紐が堅くなったとかで、口を開けば不平不満ばかりの評論家諸氏。ワクワク、ドキドキ、何にでも感謝感激する私が目ざわりな訳だ。
 
(c)Jason Merritt/Filmmagic

[業界コボレ話]
今秋の新番組の主人公がニューフェイスばかりと、前回書いたが、プレスツアーでもキャストや制作陣に必ず投げかけられた質問だった。
『House』のヒュー・ローリーは、「(ギャラが)安いからに決まってる」と苦笑する。二十数人に上るイギリス、スコットランド、オーストラリア、デンマークからの出稼ぎ俳優は、経費削減に必死の撮影所にとって、願ったり叶ったりのはずだったが…。「Dialect Coach(方言指導)」を雇って発音矯正しなければならないのは、誤算だった。アメリカ人役だから変なアクセントや意味不明の台詞は御法度だが、予算が組まれていない上、コーチの数に限りがあるという「需要と供給」の関係が、まったく考慮されていなかったようだ。
映画『SAYURI』で一緒に仕事をしたコーチは、猫の手も借りたい忙しさ。映画ではコーチは高給取りだが、年間の仕事数に限りがある。しかも、テレビは付け焼き刃で逸話をこなすため、最低1年はコーチが不可欠らしい。コーチ不足解決が先か? 打ち切りが先か? 意外な落し穴という裏話。

 
 

父は俳優、叔母は往年の歌手シルビー・ヴァルタンという環境で育ち、10歳で米国に移住したマイケル・ヴァータン。かつて『Alias』の主役ジェニファー・ガーナーと公私共に恋仲だったが、ガーナーがさっさとベン・アフレックとできちゃった結婚して、今は「花の独身」。
最新作『Big Shots』では、皮肉にも妻に浮気されて傷つく、繊細なジェームス・ウォーカー役を演じる。「共演者は皆家庭持ち、仕事が終わっても飲みに行く相手がいない、デートに花束を持参したいけど、どう解釈されるか不安で躊躇してしまう」とパーティーで打ち明けてくれた。
繊細過ぎるのか、失恋の傷口が塞がらず怖じ気づいたままか? 花でもシャンペンでも、いつでもお相手しますよ。スターにだって悩みはあるのだ。
 
(c)2007 American Broadcasting Companies, Inc.

[業界コボレ話]
今秋の新番組は『Lost』等の大所帯の群像劇からスケールダウンした「4人組」が主流。
『Desperate Housewives』男版と言える『Big Shots』は、結婚や恋愛に一喜一憂する男盛りCEO4人。庶民レベルの男4人組が毎日1台の車で通勤する『Carpoolers』。富も地位も手にし、『Sex and the City』のビッグになった、21世紀の女4人組の『Lipstick Jungle』と『Cashmere Mafia』。どちらに軍配があがるか?
犯罪捜査モノには手を出さないはずのABCは、女刑事、検事、検死官、レポーターが事件を解決する『Women’s Murder Club』で勝負。
懲りずに登場する群像劇は、『Cane』や『Dirty Sexy Money』。「恵まれていても悩みはある」と口を酸っぱくして言われてもねぇ…。共感を覚えないのは私のひがみ?

 
 

番組の制作陣やキャスト(局から評論家のあしらい方を伝授されていると聞く)が登場し、評論家の質問に答えるパネルインタビューを次々とこなすプレスツアー。私は強烈な照明が照らし出す舞台からも見えるかぶりつきに座るため、パーティー席上で、「最前列でニコニコしていた人だ!」と、覚えていてくれる制作者あり、「笑顔に救われたわ!」と、白状するマナ板のコイ状態のスターあり。
今年は距離が近かったのか、意思疎通が頻繁にあり、カイル・チャンドラーやマイケル・ヴァータンとの対話を目撃した仲間に冷やかされた。目が合うとニッコリの役者や、私を認めるや否や舞台から「元気?」と尋ねてくれるお馴染みも増えた。これだから止められない!
 
©2007 American Broadcasting Companies, Inc.

[業界コボレ話]
『On the Lot』は、監督志望者に毎週異なるジャンルの映画を作らせ、一般投票で勝者を選ぶ『American Idol』の映画版。DreamWorksの契約を手にしたウィルは、才能はもちろんのこと、人柄が抜群。
ハリウッドには、才能があってもなくても威張っている輩がごまんといる。人柄がいかに大切か体験した私は、「この人と仕事したいか?」探知機の針が敏感になった。夢を実現する険しい道を踏みしめて来た人には、ウィルの勝利は我が身のことのようにうれしかったのでは?
番組の低視聴率は、芸能界の内幕に誰も興味がないことを実証した訳だが、終盤戦に残ったのが好青年ばかりだったのは、視聴者も見るところはしっかり見ている証拠。女性が残らなかったのは遺憾だが、ウィルの映画に期待したい。

 
 

昨夏、私が「何かやましいことでも?」大賞を差し上げた『Shark』のジェームス・ウッズ。独りでまくしたて評論家を煙に巻いたが、今年は共演の美女ジェリー・ライアンとインタビューに登場。ウッズのセクハラ、差別発言は野放し状態。「PC (Politically Correct)で行きま賞!」を贈り、改善を期待する。
クリストファー・タイタスとジョシュア・マリーナが完全に仕切った『Big Shots』のパネルインタビュー。意味不明の答えだけでなく、内輪の冗談を交わし、繊細なマイケル・ヴァータンをからかうことしきり! 目立ちたがりの子供のような行動は目に余ったので、「お黙りで賞」を贈りたい!

[業界コボレ話]
私が応援していた『Friday Night Lights」がほとんど無視され、興味を失った矢先に、エミー賞取材に席を用意しますと言われた。引き受けたのは良いが、着て行く物がない! 仕事着は、埃だらけのセットのどこにでも座れるジーンズに限るので、ドレスなどすっかりご無沙汰。着飾っても女優に勝てる訳がないから、逆に目立たない方が良いと思うが、張り合っている広報のお嬢さん方もいて、「クライアントより目立ってどうするの」と意見したくなってしまう。
6年前は、ドレッシーなスーツで参加するつもりだったが、結局テロで参加できなくなった。「あのスーツで良いかな?」と思ったら、イブニングと指定された。仕方がないので、生まれて初めてイブニングを購入。奮発していたら、稿料から足が出てしまった。トホホ。

 
 

ABCの新番組『Dirty Sexy Money』のパネルインタビューに、久しぶりに登場したグレッグ・バーランティ。当コーナー初回インタビューで紹介したハリウッドの「希望の星」は、着実に輝きを増している。『Brothers & Sisters』の制作陣に加わり、サリー・フィールドのエミー賞受賞スピーチにもあがる大物になった。荒波に揉まれた結果か、(見た目も)昔より逞しくなってうれしい。
主役ニック(ピーター・クラウザ)の妻を演じるゾーイ・マックレラン。昔、『JAG』で海軍の下士官を好演したが、完璧な変身を遂げたため、パイロットを観た時も気がつかなかった。プロフィールを読んで初めて、「大人になったな」と改めて見直した。ますます輝いてほしい。
 
Photo: (c)2007 American Broadcasting Companies, Inc.

[業界コボレ話]
エミー授賞式会場への道が黒のリムジンやタウンカーで埋め尽くされた光景は圧巻だった。リムジンの横を車で走ると、「誰が乗っている?」と目を凝らす癖がついているが、この日は道行く人が覗き込んでくる姿が滑稽だった。どうせ見えないのだから、あの癖は止めようと反省。
授賞式は、出費の割には期待外れが私の感想。レッドカーペットを心ゆくまで楽しめなかった、会場1階が立ち入り禁止で、天井桟敷からスターを拝まなければいけないなど、プレスツアーの方がワクワク、ドキドキ度は何十倍も高いと再確認した次第。
だが、アメリカ・フェレーラが主演女優賞、『30 Rock』が最優秀コメディー賞に輝いた快挙は忘れ難い。助演女優賞を受賞したキャサリン・ハイグルは穴馬だっただけに、純粋にはしゃぐ姿が新鮮だった。

 
 

1年振りのプレスツアー初日。Hallmark局は、団塊の世代が対象なので、昔懐かしいタレントを起用したオリジナル映画満載だ。
映画の広告に登場した俳優エリック・ラ・サールはベントン医師を演じたベテランだが、『ER』のことを聞かれ「良い体験だったけど、過去をほじくり返してもムダ」と、けんもほろろ。確かにそうなんだけど…。私の大好きなカーターをいびる、高慢ちきな外科医は演技ではなかったと確信した次第。
一方、評論家に混じって昼食を共にした『Somewhere in Time』で名を馳せたジェーン・シーモア。6人出産した後も40キロを維持=霞を食べているとばっかり。食べ物を口に運ぶ瞬間を目にしてしまった!
 
Charlie Galley @ Getty Images

[業界コボレ話]
私も初参加させていただいた『Television Week』誌恒例の評論家投票2008年夏版が発表された。最優秀25作の1位に輝いたのは当然と言える『Lost』だが、これがエミーにつながるだろうか? 2位 『The Wire』、3位『30 Rock』。私の大好きなドラマ『Friday Night Lights』は5位で、視聴率1位を誇る『House』より上だったのはうれしい限り。ほかにもうれしいのは、コメディーの秀作『The Big Bang Theory』と『The New Adventures of Old Christine』の入選と、小粒のダイアモンドのような癒し系ドラマ『Eli Stone』が、かろうじて入選したこと!
驚きはCWの『Gossip Girl』が24位に入っていたことだ。ほかにいくらでも質の高い番組はあるのに! 理由が知りたい。
「最悪!」に選ばれたのは懺悔をクイズ番組にした『The Moment of Truth』。人の運命を弄んだ下品な番組だったから当然だ。
ただし、今年1月6日から6月20日までに未放送の逸話を放送していなければ、投票の対象にならない。脚本家のストで今年はスケジュールが大幅に崩れたので、投票したくても資格がない番組もあった。

 
 

ストの影響で、15話のみの尻切れトンボのまま、打ち切り? と懸念された『Friday
Night Lights』。10月からシーズン3が再開される。吉報! と喜んだのだが…。
よくよく聞いてみると、オリジナル番組が欲しかったDirecTVが制作に関与し、今回は13話限り。加入者を増やすための餌なのだ。従って、加入していない私はシーズン3が始まっても、指をくわえて眺めているしかない。
来年2月NBCで放送されるとは言うが、最初から応援していた番組をDirecTVにさらわれてしまったような気がするのは私だけだろうか? 積み残しされたような気分で、DirecTVに乗り換えるより、加入者を探して録画してもらおうと企んでしまう。
 
© SCI FI/James Tappin, © USA Network, All Rights Reserved.

[業界コボレ話]
6月下旬から、HBOやBBCのパイロットが届き、「この調子で地上波局の新番組も来るのか?」と思いきや…。パイロットが間に合わなかった『Crusoe』『My Own Worst Enemy』『90210』、変更だらけの『Life on Mars』『Eleventh Hour』『Privileged』、パイロットの海賊版をYouTubeで観ろと言う『Fringe』など、不安材料だらけ。
最たる例がNBC『Kings』のパネルインタビュー。タイトルや役名から時代劇を想像したが、プロモ写真はNYが舞台の法廷ドラマの雰囲気。プロデューサーの意味不明の説明に、数人が追求し続け、主役のイアン・マックシェインの逆鱗に触れてしまった。評論家に噛みついてどうする? 前途多難の番組だ!

 
 

『Ally McBeal』で、アリーの初恋の相手ビリーを演じたギル・ベローズを覚えておられるだろうか? 同じ役を長く演じたくないと早々に降板し、以来アリーの相手役は入れ替わり立ち替わりとなったが、番組は火が消えたようになってしまった。時々「ベローズはどうしたかな?」と思っていたら、FOXの『24』に出演しているらしい。11月のつなぎ編放送の宣伝にプレスツアーに駆け付けた(写真左端)。
映画、舞台、祖国カナダのテレビに出ていたらしいが、ビリーの面影はどこにもない。髪が薄くなったからか、長めの髪はボサボサ。革ジャンにジーパンで、目に入った瞬間「これ誰?」と思ったほど。歳と共に魅力を増すジョージ・クルーニーの秘訣は何なのだ?
 
© FOX

[業界コボレ話]
米国のテレビ業界もアイデア不足なのか、放送作家ストでシリーズ化が間に合わなかったのか、昨年の海外タレント輸入ブームに変わり、海外の作品を米国版に焼き直すブームのようだ。
話題は、イギリスで放送された『Life on Mars』。デビッド・E・ケリーが米国版にすることで期待が集まったが、フタを開けてみたら、パイロット撮影後にケリーは降りてしまい、主役のジェイソン・オマラのみが残って新制作陣とNYでやり直し。
ほかにもイギリスの作品は『Worst Week』『Eleventh Hour』、オーストラリアから拝借した『Kath & Kim』、珍しいところではイスラエルの番組を焼き直した『The Ex List』など。このブーム、吉と出るか?

 
 

LAに越して間もない頃、『Alias』で注目を浴びたJ.J.エイブラムスにインタビューした。まるで言葉にして発しないと、脳が一杯になるかのように早口で話すエイブラムスを前に、「何歳かな?」と思うばかり。あれから5年余り、14歳にしか見えない!
 
話題作『Fringe』のインタビューに登場。『Felicity』以降は複雑怪奇な筋で有名だが、新作も1話でも見逃すと意味不明になるかと質問が出た。「まだ放送中に、久しぶりに『Alias』を観たら、3分で混乱したよ。『これ誰だっけ?何の関係があるんだ!』と、画面に向かって叫んだほど。あれじゃ、誰も理解できないよ!」と創作した本人の懺悔。あー、良かった。終盤には『Alias』を放棄した私、頭が悪い訳ではなかったのだと納得。めでたし、めでたし。
 
Photo: © FOX

[業界コボレ話]
エミー賞とはスケールが違うものの、テレビ評論家協会も毎年秀作を表彰する。昨年は、『Friday Night Lights』が皆のお気に入りだったので、数部門で表彰されたが、授賞式に参加できず悔しい思いをした。
 
今年は晴れて投票、授賞式にも参加。私のお気に入りは『Mad Men』で、3賞を受賞した。
 
HBOの『John Adams』はミニシリーズ賞を受賞、制作総指揮のトム・ハンクスのスピーチに会場が湧いた。今や映画界の大物だが、駆け出しの頃は『Bosom Buddies』というコメディーで女装していた。ハンクスが『Mad Men』の創作者マット・ワイナーと歓談する姿は感慨深かった。「ここから傑作が?」と、想像力が膨らんだからだ。

 
 

シャンペン色のドレスで、『The Starter Wife』のプレミアを知らせるデブラ・メッシングのUSA局のCF。ハル・ベリーに次いでメッシングのベストドレッサーぶりは有名なのだが…。
 
小枝みたいな身体に、袋のようなグリーンのドレスでインタビューに登場したメッシング。胸元がはだけて、気にしている様子。これってテープで留められるはずでは? ダサいポニーテールもいただけない。評論家仲間に聞いたところ、プレスツアーではベストドレッサーのタイトルは当てはまらないらしい。いつもノーブラで露出度の高いドレスで現れて、目のやり場に困るとか。レッドカーペットに立つ時は、優秀なスタイリストを雇っているに違いない。雲泥の差にがっかりしたというお話。
 
Photo: © NBC/Chris Haston

[業界コボレ話]
職業柄、言葉が放つエネルギーに敏感になり、師と仰ぐオープラ・ウィンフリーを真似て、ニュース番組を日常から閉め出した。心の糧になる番組を厳選して観るようにしている。
 
9月1日号でご紹介した『The Bonnie Hunt Show』が、まさにそれ。「幸せを呼ぶ」トーク番組には、ハントと同類項の地に足の着いた善人が登場する。
 
9月11日のゲストは幼友達に腎臓を寄贈したオースティンと、普通の大学生に戻れたジョナスの若者2人。テロ追悼話でなく、「人間、捨てたものではない!」と心が温まった。貴重なトーク番組も、低視聴率では打ち切られるので、同番組をぜひ観ていただきたい。公開録画体験したい方、この番組は狙い目かも?

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