脚本家/制作総指揮 グラハム・ヨースト

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米国の健全さ、懐の深さに脱帽!

トロントで生まれ育ったが、今年米国に帰化。大学卒業後、ニューヨークでテクニカルライターの仕事を5年、1987年LAに。『Hey Dude』で放送作家の訓練を受け、『The Powers That Be』『Band of Brothers』等を経て、2002年『Boomtown』で注目を浴びた。映画『Speed』『Broken Arrow』等、映画とテレビの世界で活躍。『Raines』が打ち切られ、『Band of Brothers』続編の脚本を手直し中。

1件の犯罪を複数の「目」で語る異色捜査ドラマ『Boomtown』を創作したグラハム・ヨースト。被害者と対話して殺人事件を解決する『Raines』でも、ヨーストらしいユニークな世界を映像化したが、いずれも短命に終わってしまった。「よそ者」の観点から米国を語る放送作家として、今後も大いに期待したい。

『Raines』が継続されなくて、とても残念です。

ヨースト(以下Y):今朝、娘の学校で話をする際に、パイロットを観せたんですが、映像がキレイなので、我ながら感心してしまいました(笑)。「新番組だったらヒットするかな?」程度の後押しだったので、仕方ないと思っています。NBCが空前のヒットを模索するのはわかるのですが…。

『Boomtown』も24話まで。あの体験から何を学ばれましたか?

Y:編集室で通しで観ると筋が通っても、コマーシャルでぶつ切りになって、「誰の視点だっけ?」と混乱を招いたので、HBOで制作すべきでした。物書きとしては、配役が良ければ良い本が書けるというのも実感しました。短時間で台本を書けると自負していましたが、テレビは時間との競争。「完璧ではないけど、この辺でいいか」の妥協ができるようになりました。でも、優秀な撮影班を雇えば、筋を書き換えて、方向転換が容易にできる媒体ということも学びました。

昔から脚本家を目指しておられたのですか?

Y:父がカナダの映画評論番組に出ていたので、芸能界にどっぷり浸かって育ちました。今でも、「最近、面白い映画観た?」で会話が始まるほど。それでも具体的に計画があった訳ではなく、大学卒業後2年程トロントで遊んでから、真面目にやろう! と。ニューヨーク大学で夏期講座を取ったし、友達もいたので、自然にニューヨークに足が向きました。『Soap Opera Digest』『Spy-Tech』『Vitamins & Minerals』など、原稿料を払ってくれるならどこにでも投稿して、5年(笑)。

腰痛からスパイ用具の記事まで、テクニカルライターとして活躍された後、芸能界への転向はどのように?

Y:出版社の友達を通じて、素敵な女性に会ったのですが、残念ながら彼がいて…。彼がNickelodeonで番組制作をしていて、皮肉にも仕事をもらいました。1年後、同局初のオリジナル番組『Hey Dude』のライターに起用され、本格的に放送作家になりました。2年ほどして映画の企画を思いついたので、友達に話したら面白いと言われて。『Speed』が生まれて、人生が大きく変わりました。

いつもユニークな世界を創造されますが、今後の企画は?

Y:『Band of Brothers』続編の本の手直しをしています。舵取りは、スピルバーグとトム・ハンクスに任せています。でも、『Boomtown』も『Raines』もアイデアから編集までやったので、いったん何もかも仕切ってしまうと、一部だけに関わるのは歯痒いですね。この2作はどうしてもやりたくて我慢してもらいましたが、ロサンゼルスに住んでいないので、家族にも負担が…。それを考えると、次は映画が良いかな? と。今のところ未定です。

米国に帰化されて、プレスツアーにミニ星条旗を持って登場されましたが、ユニークな観点は変わりませんね?

Y:「よそ者」の目で客観的に見ているから、ここで生まれ育った人とは違いますね。文化的背景が違うと、周囲を見るフィルターが違いますから。慣れっこになってしまって気がつかない点を指摘できるし、そういう観点を発表する機会があるのが米国の健全さ、懐の深さですね。

お手本にしてこられたのは?

Y:やればできる! と示してくれた父。何冊も本を出しましたから。それと、英国生まれ、トロント育ちで、『The Flying Nun』や『The Partridge Family』などを創作し、ハリウッドで大活躍したバーナード・スレード。背景がよく似ているので、希望を与えてくれた人です。
 
(c)2007 ABC FAMILY

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