離婚の手続きをする

日本ではお互いに納得済みなら離婚届を出すだけですが、アメリカでの手続きは複雑。離婚までの書類の手続きや裁判の手順、親権や養育費の問題など、その概要を挙げてみました。個々の事情により違ってくるので、あくまでも目安としてください。

離婚理由が問われないアメリカでの離婚

離婚申請をするには、例えばカリフォルニア州では、夫婦どちらかが州内に6カ月以上、申請するカウンティーに3カ月以上住んでいることが条件です。ニューヨーク州では、離婚申請までの過去2年間に、夫婦どちらかが州内に継続して住んでいる、もしくは過去1年間に、夫婦どちらかが継続して州内に居住し、かつ州内で挙式をしたか夫婦として共に州内に居住していたことがあるかが条件となります。アメリカでは、全ての州で配偶者に明白な落ち度(浮気や家庭内暴力など)がなくても離婚を請求できる「No-fault Divorce」が認められています。落ち度があった場合は、財産分与、子どもの養育費や扶養費の額で不利な裁定が下るのは言うまでもありません。具体的な手続きは、州によって若干異なりますが、いずれにしても多くのプロセスを経る必要があります。まず夫婦どちらかが申請書(Petition-Marriage)、召喚状(Summons)などの必要な書類を裁判所に提出し、離婚申し立てをします。裁判所は受理後に、第三者(Process Server)か相手に受理された書類を手渡します。第三者とは、申し立てた本人やその親戚以外の18歳以上の人を指し、通常、弁護士事務所や郡保安官局が代行します(カリフォルニア州の場合)。離婚相手がニューヨーク州に住んでいる場合は、申請者本人以外の州内に住む18歳以上の人が、被告宣誓供述書(Affidavit of Defendant/ニューヨーク州の場合)を含む書類を直接届けます。ちなみに離婚の手続きに入ったら終了まで、子どもを州外に連れ出すことはできなくなりますので注意しましょう。
召喚状を受け取った人は、30日以内に召喚状送達証明書(Proof of Service of Summons)を裁判所へ提出します。30日以内に返答をしないない場合は、申立人の要求通りの判決が下ります。ニューヨーク州では、申し立てに異議がなければ、Affidavit of Defendantを記入、署名し、40日以内に返送します。離婚書類の内容に異議があり、「Notice of Appearance」を相手側が申請した場合、弁護士を雇い離婚裁判となります。
カリフォルニア州、ニューヨーク州ともに両者が、それぞれ資産と負債の明細書(Schedule of Assets & Debts)および収入と支出の申告書(Income & Expense Declaration)と、その2種の書類の開示申告書を、相手に開示します。その後、財産分与、子どもに会う権利、養育費などを協議していきます。資産の分配も話し合うことになります。財産分与などで合意できなければ裁判になりますし、親権で合意できなければ家庭裁判所での裁判(ニューヨーク州の場合)になり、かかる時間も費用も増えてきますので、できるだけ協議、調停で合意に到ることが重要でしょう。
話し合いの結果、合意できたら、ようやく最後のプロセスです。離婚合意書(Marital Settlement Agreement)、離婚判決書(Judgement)、離婚判決の告示(Notice of Entry of Judgement)を裁判所へ提出。資料に判事が署名し、離婚申し立て受理日から約6カ月で離婚が成立します。
ちなみに、カリフォルニア州では、結婚5年以下、子どもがいない、家などの不動産を持ってない、自動車を除く共有資産が2万5000ドル以下、夫婦どちらかの個人資産が2万5000ドル以下、自動車ローンを除く夫婦の負債が4000ドル以下、夫婦が離婚に同意している、双方とも生活費の援助が必要ない、財産の分配に同意している、などの条件を満たす場合には、手続きが簡素な「Summary Dissolution」ができます。他州でもこれらと似た条件で、「Summry/Simple Divorce」の手続きが取れます。弁護士を雇わないで離婚手続きができるため、費用がセーブできます。
なお、冒頭に述べたようにアメリカでは相手に落ち度がなくても離婚を請求できるため、「慰謝料」の概念が存在しません。財産分与、子どもの養育費や扶養費(妻が専業主婦の場合など)についても明確なガイドラインがあるため、両者が合意しない限り、それを大幅に外れる裁定は下りません。

親権の種類はさまざま訪問権は詳細を合意書に

親権(Child Custody)や子どもに会う訪問権(Visitation Right)は、カリフォルニア州では調停裁判所(Conciliation Court)で弁護士や裁判官抜きで仲裁人を交えて話し合い、調停(Mediation)でも折り合いが付かない場合は裁判所の法廷審問(Court Hearing)で裁判官に判断を委ねます。
親権には、養育権(Physical Custody)と、子どもがアメリカ生まれの場合、人生における決定権を有する親権(Legal Custody)があります。そして親権の行使には、父母共に親権を持つ「Joint」と、どちらか一方のみが持つ「Sole」に分かれます。
訪問権の合意書には、子どもと会う頻度、面会時間、時間の過ごし方、どこへ誰が送迎するのか、誕生日や祝日、長期休暇をどちらの親と過ごすのかなど詳細なルールが盛り込まれます。虐待などのよほどの問題がない限り、子どもと一緒に暮らさない親に対し訪問権が与えられることがほとんどです。訪問権を与えられた場合、定められた時間内で子どもとの面会が許可されます。それ以外の時間に子どもを勝手に連れ出すと、誘拐とみなされることもあるので気を付けなければなりません。

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