妊娠と出産

言葉も医療のシステムも異なるアメリカでの出産は何かと不安になりがちです。ドクターや医療機関の選び方、加入している医療保険による出産費用のカバー率の違い、入院期間、アメリカと日本への出生届など、知っておきたい事柄をまとめました。

ドクター選びと妊娠前検診の重要性

出産準備の第一歩は産婦人科を訪れることから始まります。アメリカでは、子どもを持つ計画をした時点で初回検診を受けます。初診の内容は日本とほぼ同じで、尿検査、血液検査、問診、内診など。出産の障害となる持病や、風疹の抗体などの検査も行います。なお、検査や問診では、自分や家族の過去の医療履歴に関する質問があります。日常会話に不自由しない人でも、病名などの専門用語はあまり知らないものなので、あらかじめキーワードを調べておくか、可能であればスマートフォンを持参し、分からない言葉があれば、その都度検索すると良いでしょう。大切なのは、ドクターの質問をよく理解しないままにしておかないことです。
ドクター選びは、医療保険がHMO(Health Maintenance Organization)の場合、ファミリードクターに産婦人科医を紹介してもらいます。PPO(Preferred Provider Organization)の場合は、HMOより自由にドクターや医療機関が選択できます。
ドクターを選ぶ際に大切なのは、加入している医療保険のグループに属しているかどうか。英語が苦手な場合は、日本語が通じるかもチェックしておきましょう。病院によって受けられる医療サービスが違いますので、そのサービス内容、ドクターがどの病院で分娩を行うのかも確認します。分娩する病院を確認する際は、個室提供の有無、自宅からの距離、出産後すぐに保育器に入れず、母親が素肌の上に抱いて保育する「カンガルーケア」を提供しているか、重篤な新生児に対応が可能な新生児集中治療室の有無などを見ましょう。
妊娠は大きく分けて、初期(0~16週)、中期(17~35週)、後期(36~40週)に分けられますが、妊娠27週までは月に1回、28週以降35週までは2週に1回、それ以降は週1回診察を受けるのが平均です。アメリカでは女性だけでなく、夫婦で来院するのは珍しくありません。パートナーにも同行してもらい、一緒に胎児の心音を聞いたり、超音波映像を見るといいでしょう。

保険のタイプで異なる出産費用のカバー率

医療保険を利用する場合、保険のタイプにより、カバー範囲が異なります。多くの産婦人科は妊娠中の検診にパッケージ料金を適用しています。
出産後の入院は、日本では4~7日なのに対し、アメリカでは1、2日。帝王切開でも3、4日で退院になる場合がほとんど。産後は体調回復に4~6週間ほどかかります。産後の回復を遅らせる可能性があるため、この時期の無理は禁物です。
保険を使用せず現金で支払う場合、妊婦や乳児の状態、病院により異なりますが、一般的に検査から出産後の入院までの合計で、普通分娩で約1万5000ドル、帝王切開は約2万1000ドル必要です。
医療保険に未加入で、出産費用を自力で賄うのが困難な場合は、低所得者向けの医療プログラムを利用できます。収入・資産が一定金額以下の場合には、連邦政府と州政府が共同負担する医療扶助制度である「Medicaid」(www.medicaid.gov)や州の低所得者向け福祉制度(例えばカリフォルニア州なら、「Medi-Cal」)のサポートが受けられないか、調べてみましょう。また、Medicaidのサポートが受けられない場合にも、Children’s Health Insurance Program(CHIP)のような無料の医療保険サービスが利用できることもあります。詳しくは、www.InsureKidsNow.govなどのサイトで情報を収集してみてください。なお、海外旅行者保険では出産費用は一切カバーされないので注意が必要です。

日本とアメリカへ出生届を提出

妊娠中は出産準備クラスなどを受講してみましょう。母乳育児を支援する団体、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル・ミルキーウェイグループ(www.llljapan.org)では、母乳育児に関する情報を日本語で提供しています。災害時における乳児の栄養法なども紹介しているので参考にしてみてください。
アメリカは出生地主義のため、アメリカ国内で生まれた子どもは、自動的にアメリカ国籍を取得できます。病院で出産すると出生届の用紙をくれるので、その場で記入すれば病院が提出してくれます。ですので、名前はあらかじめ決めておきましょう。子どものラストネームは、父親姓でも母親姓でも構いません。
希望すればソーシャル・セキュリティーナンバーの申請も可能です。1カ月ほどで自宅にカードが郵送されますが、ソーシャル・セキュリティーナンバーは個人情報の柱になるので、番号の取り扱いは要注意です。カリフォルニア州やニューヨーク州では、出生証明書は州保健局に請求します。
どちらかの親が日本国籍を有する場合は、その子どもも日本国籍が取得できます。子どもが日本国籍を留保するには、父親または母親が、出生届書の「日本国籍を留保する」欄に署名、押印し、出生後3カ月以内に所轄の総領事館に出生届を提出します(詳しくは在米大使館と総領事館を参照)。3カ月を過ぎると受理されませんので、「出生届書」など必要な書類は、あらかじめ準備して確認しておきましょう。その期間を過ぎると、日本国籍は取得できなくなるので注意しましょう。
 
監修/鈴木葉子婦人科 ☎657-218-4022

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