交通事故の対処方法

アメリカでの主な移動手段は車。交通事故は遭いたいものではありません。万が一、事故を起こしたり、巻き込まれたりした場合に備え、対処法を知っておきましょう。

交通事故後は専門家に相談し的確な処理を

日本ではどんな交通事故でも警察官が事故現場に来ますが、アメリカ、特に大都市ではケガ人がいない、飲酒運転でない場合などは当事者たちのみで情報を交換し、後は保険会社や弁護士に任せる場合がほとんどです。
 
ケガ人がいる場合はすぐ警察に連絡し、救急車を手配するなどして手当てを受けさせることが先決ですが、それ以外の場合は、まず交通を妨げない場所に車を移動し、相手と情報交換を行います。名前、住所、電話番号はもちろん、免許証番号、車のナンバープレート、メーカー名、車種、そして保険会社の名前とポリシー番号などをしっかり控えておく必要があります。同乗者がいる場合は、氏名や人数も確認しておくと良いでしょう。また、必ず目撃者を見つけ、その人の名前と連絡先をメモしておくこと。カメラで事故直後の道路の様子、車の損傷状態などを撮影しておくことも大切です。
 
事故の中でも特に気を付けてほしいのは、交差点での衝突事故。どんな場合も、左折車より直進車の方が優先です。左折する車は、赤信号ギリギリで直進してくる対向車に十分注意しましょう。
 
警察官が来た場合は、現場で両者の話を聞きながらポリスレポートを作成します。これが後で保険請求を行う時の資料になります。事故後の処理を少し間違えただけで、大きな損害を負うケースも多いため、保険会社か保険代理店に連絡する前に、日本語の分かる交通事故専門の弁護士などに相談するのも一つの方法です。納得がいくまで無料で相談に乗ってくれるところもあり、弁護士に正式に依頼したとしても、通常被害者側からの依頼は成功報酬で弁護を請け負ってくれることが多いので、その場合は、初期費用を払う必要はありません。
 
保険会社や保険代理店に事故報告を行うと、担当調査員が事故の責任がどちらにあるかを調べ、車の損害に対し、賠償金の割合などを相手方の調査員と交渉しながら最終決定を行います。車の修理は保険会社の鑑定員が事故車の損害を確認し、修理費用の見積もりを算出を待ちましょう。

加入は義務、自動車保険のしくみ

(ライトハウス・ロサンゼルス版 2005年4月16日号掲載)
職務質問

ドライバーであれば必ず加入するよう義務付けられている自動車保険に関して、ダイワ保険代理店の代表・安岡さんに聞いた。まずは基本的な保険のしくみについて。
 
「ライアビリティーと呼ばれる対人対物補償には最低限入ってください。これは過失事故を起こした場合、相手の人身や車輌、物損をカバーするものです。カリフォルニア州では、最低対人1人につき1万5000ドル、事故1回につき3万ドル、対物5000ドルが義務付けられていますが、最近は高級車に乗る人も増えているので、実際これでは不十分です」。ちょっと当たっただけでも修理費は5000ドル。ましてや、接近物を感知するセンサー部分に当てようものなら、修理費はもっとかかるだろう。同代理店では、対人1人につき10万ドル、事故1回につき30万ドル、対物は50万ドルと、10倍近くの補償額をすすめている。
 
また、不動産や会社など資産を所有している人の場合、さらに「アンブレラ保険」に入っておくと良いと安岡さんは言う。万が一、相手から訴訟を起こされ補償額を超えた場合に適用されるものだ。対人、対物の補償額の総額は30万ドルが限度だから、それ以上になった場合には資産のリスクを守るために、このアンブレラ保険がカバーしてくれる。掛け金は年額~ドル程度なので、入っておくと安心だろう。
 
次に、相手側に過失があり、その相手が保険に加入していない場合、自分側の損害をカバーするものとして、無保険者保険にも入っておきたい。自分自身と同乗者の医療費や慰謝料、そして自分の車の損傷をカバーするもの。「エリアにもよりますが、保険加入義務があるにもかかわらず、実際には多くの無保険者がいますので、加入をおすすめします」と安岡さん。幸い、過去10年間で無保険者は30%から15%へと半減したが、それでも10人に1、2人は無保険者がいる。同代理店のクライアントの7割以上は、無保険者保険に加入しているそうだ。

事故率や人口、エリアで変わる保険料

自動車保険加入例

また、搭乗者保険はどちらの過失かに関わらず、自分自身と同乗者が事故でけがをした場合、医療費がカバーされるもの。車輌保険は、やはり過失の有無にかかわらず、自分の車のダメージをカバーするもの。盗難や火災、いたずら、物が落ちてきたなどの災難にも対応し、損害額から免責額を引いた金額が支払われる。免責額は通常ドル。損害額が免責額以内の場合は、自己負担になる。「車がリースやローンの場合は、必ず入ることをおすすめします。自分で入らないと、リース会社やローン会社が強制的に割高料金で入れてしまいます」(安岡さん)。
 
その他、事故で車の修理をしている間に借りる必要のあるレンタカーの費用をカバーするレンタカー保険や、けん引費用、緊急ロードサービスなどを付け加えることもできる。
 
「保険は1年または6カ月ごとに必ず更新されます。保険会社は事故率など独自に統計を取り、さまざまなデータをもとに保険料を決めます。ZIPコードが1つ違うだけでも保険料が違ってきますし、保険会社によっても設定金額が違います。保険会社は何百社とありますので、いろいろ比べて決めるとよいでしょう」と安岡さん。一般的に事故が少ない地域、市街地から遠い地域ほど保険料は安くなる。また、個々人の車の走行距離や使用頻度によっても保険料は変わってくる。これらの情報は自己申請なので、例えば通勤先が変わったなどの場合は早めに申し出て保険料を変えてもらった方が良いだろう。

交通違反をした時、保険はどうなる?

事故や違反をすれば、次の保険料に影響を及ぼすことは必至だが、具体的にどのような仕組みとなっているのだろう。これにはグッドドライバーの条件の中にいるかどうかが大きな分かれ目となる。
 
「グッドドライバーは、運転歴が3年以上、違反は1ポイントまで、または人身のない事故1回までとされ、保険料が20%割引になります。違反を1ポイント取られた場合、保険料の値上げは何十ドル程度ですが、2ポイント以上になると、この割引がなくなってしまうため、数百ドル以上、値上がりしてしまいます」と安岡さん。保険料が上がるのは事故や違反の直後ではなく、その保険の有効期限が終わった更新後。保険会社によっては、グッドドライバーしか受け付けないところもあるが、違反・事故歴があっても受け付ける保険会社も多数ある。保険料金も極端に高くないところもあるようだ。
 
違反は通常、スピード違反と信号無視が1ポイントで、これらはマイナーチケットとも呼ばれる。駐車違反は罰金のみでポイントは取られない。そして、2ポイント以上はメジャーチケットと呼ばれ、飲酒やひき逃げなどが含まれる。保険会社では、これらのDMV(Department of Motor Vehicle)のポイントをベースに独自にポイントを数えている。
 
マイナーチケットの場合、DMVで科されたポイントは3年間で消える。また、8時間の講習やインターネット上のトラフィックスクールで合格すれば、ポイントはゼロに戻される。この受講によるポイントの帳消しは18カ月に1度しか使えないので注意。短期間のうちに何度も違反をしてグッドドライバーの境目を越えないようにしたい。しかし、いずれにしても保険会社でのポイントの影響は3年間残るとのことだ。また、飲酒運転によるポイントは7年間は消えない。値上がり率は一概には言えないが、特に飲酒の場合、年間支払額がもともと多い人ほど上がる率が高くなる。
 
ちなみに、走行中の交通違反(Moving Violation)で警察官に呼び止められた場合は、指示に従ってすみやかに路肩に駐車し、車内で次の指示を待つこと。両手はハンドルを握ったままに。指示に従わないで、車から出たり、バッグやグローブボックスを開けようとすると、銃を持って抵抗してくると思われ、警察が発砲してくる可能性もあるので注意。むやみに反抗的な態度を取ったり言い訳をすると、Reckless Driver(無謀ドライバー)とみなされ、さらに重い罰金を科されることもありうる。

事故後の交渉は、専門家に任せる

安岡さん

「保険加入義務があるのにもかかわらず、多くの無保険者がいるので、無保険者保険への加入をおすすめします」(安岡さん)

ダイワ保険代理店のクライアントの事故で多いのは、後ろからの衝突、左折車と直進車との衝突、駐車場での衝突、車線変更時の衝突の順で多いそうだ。もちろん日頃の安全運転が第一だが、実際に事故に遭った場合、どうすればよいのだろうか。
 
「交通の妨げにならないように車を移動させ、まずはに通報します。けが人がいる場合は、すぐに応急手当をしてください。けが人がなく小さい事故の場合は、警察が来ないこともありますが、相手が保険に入っていなかったり、飲酒運転だった場合も警察を呼ぶべきです」(安岡さん)。
 
警察が来た場合は、警察の方でポリスレポートを作ってくれる。警察が来ない場合は、お互いに必要な情報の交換をする。具体的には名前、住所、電話番号、免許番号、保険会社名、ポリシーナンバー、車種、プレートナンバー、目撃者の名前と連絡先の電話番号など。
 
そして、事故後、自分の保険会社か代理店に連絡する。相手方との交渉は、基本的に双方の保険会社に任せることになる。気をつけたいのは、事故に遭った車は、それ自体が大切な証拠となるので保険会社の承諾を得ずに修理をしてはならないということだ。
 
「保険会社は事故現場には行きませんので、自分の車、相手の車、全体の状況がわかるような証拠写真を撮っておくことをおすすめします。普段からグローブボックスに携帯カメラを入れておくとよいでしょう。また、車にはペンと紙を置いておくようにしてください」(安岡さん)。
 
さらに、けがや車の損傷で750ドル以上のダメージがあると判断される場合は、10日以内にDMVに報告する義務がある。
 
当て逃げされた場合は、相手が見つからなければ自分の車輌保険を使うことになる。しかし、車のプレートナンバーをメモして警察に通報すれば、相手の住所から探し当てることができる。車の盗難はたいてい車のパーツを取るのが目的なので、警察に通報すれば2、3週間で見つかるとのこと。こちらも車輌保険でカバーされることになる。
 
最後に他州で違反・事故に遭った場合。他州でチケットを切られても、カリフォルニアのDMVに通知がいくため、保険も影響を受ける。管轄の裁判所から通知が来るので、裁判にしたい場合はそこまで出かけて行く必要がある。また「事故の場合、アメリカ国内とカナダでは保険は通常カバーされますが、メキシコはカバーされませんので、国境を越える前にメキシコ用の保険を購入してください」(安岡さん)とのことだ。

弁護士は相手側、保険会社との交渉も

事故に遭った場合に関して、さらに詳しいアドバイスを、交通事故のケースを数多く取り扱うアーサー・バーナル弁護士に聞いた。
 
「相手と情報交換をする時に、必ず証拠となるもの、自動車保険のカードと運転免許証を実際に見せてもらってください。偽の名前や住所、保険を持っていると嘘をつく人も中にはいますので」(バーナル弁護士)。
 
入手した情報はすべて、正確にメモを取ることが大切。何日の何時に、どこの道のどの車線で、どの方向からどれくらいの速度で、といったことや、その時の信号の色、交通量などもメモしておくこと。また、現場に居合わせた目撃者を見つけ、第3者としての証言と名前、連絡先をもらっておくことも大切だ。
 
また、お互いの車や身体が大丈夫かどうかを確認することは必要だが、その場では、どちらの過失かということを議論したり、やみくもに相手に謝ったりしてはいけない。相手のその時の身体の状態もメモしておくと良いだろう。また、小さな事故でもできれば警察に来てもらい、ポリスレポートを取ってもらうと、自分が覚えていないことも、警察の方できちんと記録してくれているので、後で裁判になった時などに助かる。
 
「英語が話せない相手の場合、助手席の同乗者などに通訳してもらうなど、なんらかの方法を取るように努力してください。もし、それでも話ができない場合は、最低でも車の免許証と保険証の情報だけは入手しておくように」(バーナル弁護士)。逆に、自分自身が英語が苦手だったり、複雑な事故状況をうまく話せないこともある。日本語のわかる交通事故専門の弁護士などに連絡を取り、相手との間に立ってもらうのが得策だろう。交通弁護士は通常、成功報酬で請け負ってくれ、依頼者側は弁護士費用を払わなくてもよい。
 
また、「事故に遭った時点では身体がどこも痛まなくても、翌日に首などが痛み出すことが多いですね」とバーナル弁護士。弁護士は保険会社との間にも立ってくれ、治療代の交渉などもしてくれる。弁護士は本人に代わり、身体的・精神的な損害補償を保険会社と交渉してくれる。
 
実際に裁判になった場合、当事者同士の他、事故現場にいた目撃者や事故を分析する専門家が呼ばれて、過失がどちらにあったかを検証することになる。なお、裁判は事故が発生してから2年以内であれば、起こすことができる。

事故が起きたら10原則

① 必ず停車する
いかなる事故でも、法律により運転者は停止する義務がある。これを怠り当て逃げすると、過失がない場合でも多額の罰金刑が課せられることがあるので要注意。
 
② 事故車を移動
軽い事故の場合、路上で事故車を停止させたままだと渋滞を引き起こすばかりか、次の事故にもつながりかねない。車輌はすみやかに、路肩に移動する。
 
③ 警察を呼ぶ、必要に応じて救急車を呼ぶ
近くにいる人に助けを求め、911に連絡する。その際にけが人がいるかも聞かれるので、簡単な状況を説明する。
 
④ けが人への対応
負傷者は、動かすことによってけがが悪化することが多いため、車内で火災が発生しているなどの危険がなければ動かしてはならない。重傷の場合は救急車の到着を待つ。
 
⑤ 警察への対応
警察官が免許証の提示などを求めてくるので、それに対してすみやかに情報の提示を行う。パニック状態に陥っている場合は、状況が正確に説明できないため、落ち着くまで待ってもらう。
 
⑥ 相手への対応
警察のレポートの控えがある場合は不要だが、そうでなければ、相手側の連絡先や保険などの情報をお互いに交換する。
 
⑦ 目撃者を確保する
事故の状況を正確に把握し、責任の割合を決めるために、なるべく目撃者を確保した方がよい。裁判になった時、証人になる可能性も高い。また、目撃者が非協力的な場合もナンバープレートだけは控えておくように。そうすれば後で連絡先を調べ、後日協力してくれるよう交渉することもできる。
 
⑧ 現場のメモをとる
事故の状況をなるべく正確にメモする。走行方向やスピード、通りの名前、車の位置や向きなどできる限りの情報を記録しておく。
 
⑨ 保険会社に連絡
事故後、落ち着いたら自分の契約している保険会社に連絡し、事故の連絡を行う。
 
⑩ SRフォームをDMVに提出
カリフォルニア州で事故が発生した場合、人身事故および750ドル以上の物損は事故後10日以内にDMVへ届け出ることが義務づけられている。その書類はSRフォームと呼ばれ、DMVオフィスで配布している他、保険会社でも入手できる。
 

■取材協力
◎ American Honda Motor Co., Inc.

☎ 310-783-2000
www.honda.com
 
◎ Pit Line Int’l Inc.
☎ 310-532-0270

http://pit-line.com

 
◎ K&K Car Clinic
☎ 310-398-1173
 
◎ Rod & Shout Automotive
☎ 310-503-6972
 
◎ Neptune Speed
☎ 714-842-8548
www.neptunespeed.net
 
◎ Daiwa Insurance Marketing, Inc.
☎ 310-540-8595
www.daiwainsurance.com
 
◎ Law Office of J. Arthur Bernal
☎ 310-756-2571
 
(本文登場順)

※このページは「ライトハウス 2017年春の増刊号」および「ライトハウス・ロサンゼルス版 2005年4月16日号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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