映画『今日という日が最後なら、』 柳 明菜監督 × サンプラザ中野くん

2008年4月11日~20日まで開催された「Japan Film Festival 2008」にて上映された『今日という日が最後なら、』。同作が初監督作品となる柳明菜監督とエンディング曲を歌うサンプラザ中野くんさんがプロモーションも兼ねて訪米した。2人に今作のテーマと意義についてお聞きした。

今回の作品を作ったきっかけは?

柳監督:根本にあったのは子供の頃からの映画作りの夢でした。でも、無理なんじゃないかと諦めかけていた時、社会起業家研究会というのがあって、第1回の合宿が八丈島だったんです。「社会起業家として、あなたの世界の変え方を八丈島で教えてください」というのが課題のテーマで、そんななか、忘れそうだった夢を思い出したんです。

サンプラザ中野くんさんは、なぜエンディング曲を歌うことに?

サンプラザ中野くん:映画の最初のプレゼンに呼ばれて気に入ったから、「オレ、歌手だから、歌を歌うよ」という約束をしたんです。社会起業家としての志が響いたのと、脚本はまだできていなかったんですけど、あらすじが面白いと思ったんです。あと、離島が好きで、八丈島も行ったことがあるんで、いい島だったなあと思って。

作品は島おこしを越えたところがあると思うんですが?

柳監督:映画を通して島おこしというのは、もちろん頭の片隅にはありましたが、それがメインではないです。ただ、完全なフィクションを作るというのは嫌だったんですね。で、ノンフィクションでもドキュメンタリーでもない、何か夢で現実を引っ張っていけたらという思いがすごくあったんです。なので、作中でお祭りをやるというのを思い立った時に、実際にみんなが楽しめるお祭りにしようとしました。
 映画というのは作る過程にも物語があるから、制作過程で何か1つ夢を作るのもありだと思ったんです。今後もそれはできるんじゃないかと思います。

作中での「祭り」の意味は?

柳監督:すべてを忘れ、すべてを思い出すみたいな、情を再生するという意味なんですね。「八丈祭」の「八」は8を横にして「∞」、「丈」は「情け」と書いて、「祭」を再会の「再」にして(∞情再)。無限の情をもう1度呼び起こしたかった。それを物語の軸にしているんですね。

対照的な姉妹を通して、伝えたかったことは?

柳監督:1歩踏み出せば世界は変わる、という物語にしたかったんです。すごく極端な言い方なんですよ、「1歩」と「世界が変わる」っていうのは。でも、ちっちゃなことでもいいから何かやってみることで、世界って変わっていくんだよ、というのが見せられたらと思いました。

1歩踏み出したところで、世の中何も変わらないという雰囲気が世の中に漂っている気がします。

柳監督:はい、極端に感じていました。私も夢を持っていたけど、挫折も多かったですし、「映画はビジネス」「どんなに夢を持っても無理」とか、色んなことを言われると、私自身も段々とそう言うようになってきたんです。そのムードを覆したいと思いました。

サンプラザ中野くん:僕は、最近の若者は結構やる気あるなという気がします。その代表が柳監督で、映画の立ち上げの時から見ているんですが、不撓不屈の精神で、ぺっちゃんこになった所から、またムクムクと膨れ上がっていくという感じ。私もすごく勇気をもらいました。

明日も明後日も永遠に続くと感じて生きている人が多い?

柳監督:今日という日が最後なら、という気持ちは大事だと思うんです。あなたと私が会っているこの一期一会と同じことです。今は今でしかない。一瞬で過去になっていくわけですから。そういう気持ちで生きるっていう。「未来で生きていると、一生未来で生きていくことになっちゃうよ」って、昔、言われたことがあって、ハッとしたことがあるんですよね。

本作で影響を受けてほしい層は?

柳監督:1番は大学生ですね。チャンスがなかなか掴めなくて、結局、やりたくないことをやっている葛藤と、でも「将来安定したらやるんだ」という気持ち。実は正直、私もまだ迷いの段階です。夢はちゃんと追い続けて、本当にやりたいことをすることが大事なんじゃないかということは、薄々気付いているんです。だからそれを実証したいという思いで、今、頑張っています。止める理由っていくらでも作れちゃう。でも、それを越えて続けられたら、変われるんじゃないかと思うんです。

サンプラザ中野くん:僕の場合は、子供の頃から歌が好きで、スターにすごく憧れて。それで歌を歌い出して、そのまんま大学に行かなくなっちゃったんで、就職できなかった。だから前に進むしかなくて、頑張って何とかデビューできたんですけど。
 僕は好きなことを職業にしたけど、好きなことだけをやっているわけじゃない。嫌な人もいるし、嫌な仕事もしているわけですよね、部分的には。だから、「オレは望んでいない仕事を仕方なくやっている」という人と、本当に微妙な差だと思います。

本作をどういう気持ちで見てほしいと感じていますか?

柳監督:単純に楽しんでもらったり、こんな美しい場所があったんだとか、そういう風に感じてもらえたらいいですね。結果的に、ちょっと迷っていた人とか、夢があるんだけどどうしようかなと思っている人が、「1歩踏み出してみようかな」「何かやれることからやってみようかな」と、エンパワーメントされたらうれしいです。

LAの日本人にメッセージを。

サンプラザ中野くん:ロサンゼルスは空が広くて、土地も広くて、とても気持ちが大きくなっています。威張っているわけではないですけど(笑)。僕の歌い方も、『Runner』のように勇気付けながらも、『大きなタマネギの下で』のようにホロッとさせる、という新境地なので、日本を離れて寂しいと感じた時には聴いてみてください。

柳監督:日米両方を見た上で、良いところを伸ばして日本を良くし、アメリカ自体も色々改善していくことで、お互いハッピーになれるんじゃないかと思います。あと、時々日本に帰って来て、八丈島みたいに残されている文化に目を向けて、「日本っていいものを持っているな」というのを実感してほしいです。

『今日という日が最後なら、』
監督・脚本・編集:柳明菜
出演:森口彩乃、柳裕美、他
公式サイト:www.livefree.jp
ストーリー
 八丈島で生まれた双子の姉妹。2人がまだ幼いうちに、身体の弱い舞子(柳)を残し、聖子(森口)を連れて母親は島を飛び出す。それから20年後、段々と活気がなくなりつつある島。そこで自由奔放に育った舞子は「八丈祭」を行い、島を盛り上げようとする。
 お祭り直前、舞子は「今日という日が最後なら、何をしたいか考えました」と書かれた置手紙を残し、聖子に会いに突然都会へ飛び出す。閉鎖的な環境にいた聖子は家を抜け出し、2人で島へ渡る。
 状況が変化するにつれ、2人の歯車は狂い始める。たった数日間で20年の時をどれほど縮められるのだろう? まったく違う環境、違う性格、それでも君と一緒にいたい。過去でも未来でもない、今を共に生きるために…。

【PROFILE】

■やなぎ・あきな

 愛知県出身。慶應義塾大学在学中、社会起業家のゼミ合宿で八丈島の地域貢献の研究を通じて、映画作りに目覚める。卒業後、映画制作の合同会社The☆Willowsを設立、代表に。初監督作品『今日という日が最後なら、』では、資金集めや脚本なども手掛ける。

■さんぷらざ・なかのくん

 1960年山梨県生まれ。早稲田大学政治経済学部除籍。80年、パッパラー河合、ファンキー末吉らと「爆風スランプ」を結成、『Runner』『リゾ・ラバ』『大きな玉ねぎの下で』などヒット曲多数。99年に活動休止、株取引、健康関連のコラムなどを連載。今年1月、芸名をサンプラザ中野から変更。
 
(2009年1月1日号 掲載)

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