アメリカ・グリーンカード(永住権)の申請手順と最新動向

アメリカ永住権(グリーンカード)とは

アメリカへの出入国が自由で滞在に期限がなく、職業も自由に選択できる許可書。条件を満たしていれば、米国以外の国籍を持つ者に対して発給される。

  • 有効期間:10年(結婚の場合は最初2年の期限付き、以降10年)
  • 更新の可否:可
  • 取得にかかる時間:6カ月~2年
  • 費用概算(弁護士費用含む):約4000ドル(結婚ベース)、11000ドル(雇用ベース)※家族は1人2000ドル程度追加(日本での申請は1人1000ドル程度追加)
  • 配偶者の扱い:永住権
  • 配偶者の労働可否:可

 

永住権の最新状況と申請手順

更新を続ける限り半永久的に米国滞在が可能となる上、自由な就労が保証される永住権(グリーンカード)。今も昔も移民が憧れるビザです。この申請では、①雇用主、②アメリカ市民や永住権保持者の家族、のどちらかをスポンサーにして申請するのが一般的です。①の場合、申請者の資質や従事するポジションにより5つのカテゴリーに分類されます。
 
「EB-1」:優先就労者(日米で管理職、あるいは特殊な人材)か、科学、教育、芸術、ビジネス、スポーツなどの分野で突出した能力(トップ2~3%)を持つ人物。
「EB‐2」:大学院卒か、学士号と5年以上の職務経験を持つ人物。
「EB‐3」:4年制大学卒か、2年以上の職務経験を持つ人物。
「EB‐4」:宗教など特別な仕事に従事する人物。
「EB-5」:50~100万ドルの投資条件を満たす投資家。
 
このうち、日本人の申請カテゴリーとして圧倒的に多いのが「EB‐2」と「EB‐3」です。ここでは主にこの2つを説明します。申請において、次の5つの過程を経なければなりません。
 
①規定給料の設定:労働局により、スポンサー企業が申請者に支払う給与額が設定される。
②人材募集広告:スポンサー企業が30日間人材募集広告を出し、その後の30日間で広告の反応(応募者の有無)を確認する。
③「Labor Certification」の取得:②で応募者や適格者がいなければ、外国人である申請者が永住権を取得してもアメリカ人労働者に不利益が及ばないことを労働局が認める「Labor Certification」が下りる。
④雇用主の審査(I-140):スポンサー企業に、①の給与額を払うだけの経済力があるかどうかを主に審査する。認可後180日経てば、異なる雇用主に移行(転職)しても申請は進むため、仮にスポンサーが倒産しても、新しい雇用主がいれば問題ない。ただし、申請する職務は酷似している必要がある。
⑤申請者個人の審査(I485):非移民から移民へのステータス変更と、就労許可証(EADカード)や一時渡航許可証(Advance Parole)を申請。

優先日と「I-485」

労働局が「Labor Certification」の申請を受理した日(③)か、「Labor Certification」が不要な場合は移民局が「I140」申請を受理した日が、申請者の「Priority Date」(優先日)となります。これは⑤の審査を待つ番号札のようなもので、オンライン上の「Visa Bulletin」(毎月更新)で自分の優先日が来た時点で⑤の申請開始となります。「EB-2」では④⑤を同時に申請できますが、「EB-3」では④の許可後に⑤の申請に入るため、これまで⑤の開始までに数年の待ち時間がありました。しかし最近では、「EB-3」の待ち時間は解消されています。
 
これに対し、2017年8月の時点で「EB-2」に待ちが発生(優先日は2015年4月1日)。従来とは逆転現象が起こりました。ただこれも、10月にはほぼ待ち時間がない状態に戻ると思われます。
 
①~⑤のステップを通過すれば、永住権が手元に届きます。

グリーンカード(EB-2&EB-3)2017年の優先日(待機時間)推移

毎月、移民局から発表される優先日の推移です。「C」は、優先日に関係なくI-485の申請を受け付けるという意味。8月分を見ると、これまで「C」だったEB-2が、15年4月1日以前の優先日を持つ申請者のみ受け付けとなっています。一方EB-3が「C」となり、待ち時間がなくなりました。

EB-2 EB-3
1 C 8/1/2016
2 C 10/1/16
3 C 12/1/16
4 C 2/15/17
5 C 3/15/17
6 C 4/15/17
7 C 6/8/17
8 4/1/15 C

 

EADカードの変更点(米国内で「I-485」を申請する場合)

・これまでは申請後90日以内にEADカードが送付されていたが、今年1月から90日以上待つケースが出てきた。
・延長申請は有効期限の4カ月前からしかできなかったが、6カ月前からできるようになった。
・期限ぎりぎりで延長した場合、期限が切れた時点から新しいカードを入手するまで働けなかったが、期限前に申請さえ終えていれば、期限が切れても(カードが未到着でも)働くことが可能。ただし、期限が切れてから延長申請した場合はカードが来るまでは働けない。

アメリカ永住権(グリーンカード)申請時の注意点あれこれ

雇用を通した永住権申請には職歴が必要ですが、スポンサー企業での職歴は認められないため、現職以前の雇用証明・労働記録が必要となります。大橋弁護士によると、この取得が案外難しいようで、「大体の日本人が日本での職歴を使うことになりますが、昔のこと過ぎて『会社の連絡先が分からない』『当時の上司がいない』『雇用記録がない』などの理由で雇用証明を入手できないことがあります。また、これは④の段階で必要となりますが、①~③の段階ではすでに前職と雇用証明を発行してもらう約束をしておかないと申請に間に合わないことがあります」と注意を促しています。
 
申請に必要なのは、18歳以上で2年以上フルタイムとして働いていた記録で、いつのものかは問われません。ただし、面接で業務内容を詳細に質問されることがあるため、当時の業務内容をしっかり説明できるようにしておいてください。
 
フルタイムの社会人経験があれば、「F-1ビザ」からでも永住権申請は可能ですが、大橋弁護士は、「F-1ビザ」で5年以上滞在していると永住権取得が困難になる可能性を指摘しています。理由は不法就労の嫌疑がかかるためで、従来なら提出書類は「I-20」(学校の入学許可書)だけで済んでいたのが、在学証明や成績証明、授業中のノート、学生時代の生活をまとめた文書、日本からの仕送りや入出金の記録など多岐にわたる書類を要求されることがあります。学歴の推移も重視され、語学学校→2年制大学→4年制大学→大学院と学歴を上げる流れに逆行する記録があると、追加書類の対象となります。
 
●関連記事:雇用によるグリーンカードの申請・取得

婚姻による申請

アメリカ市民との結婚による永住権申請は、現在申請開始から半年ほどで取得できています。審査のポイントは、アメリカ市民が申請者をサポートするだけの十分な経済力を持っているかどうかで、不十分であれば、アメリカ市民か永住権保持者の親や友人を「ジョイントスポンサー」にすることができます。
 
面接では、この結婚が純粋な恋愛の結果であることの証明が求められます。そのため、交際時の2人の写真や電話の通話記録、手紙、Eメール、共有財産や同居の有無を証明する手紙や書類を面接に持参すると、偽装結婚ではないことを証明しやすくなります。なお、市民との婚姻による申請では、過去の不法滞在や不法就労は問われません。ただし、不法就労の場合は遡って税金が徴収されます。
 
永住権保持者との結婚では取得まで約2年かかっており、その間、申請者は何らかの合法的な滞在ステータスを持っていなければなりません。市民との結婚と違い、過去の不法滞在・就労は取り締まり対象となるため、過去の滞在記録、特に「F-1ビザ」滞在者は学校生活の様子や生活費の出所などを証明する文書の提出が求められます。
 
●関連記事:アメリカ人との結婚によるビザ・永住権の取得

抽選と投資による永住権申請

「EB-5」は、投資により取得するカテゴリーです。これは起業のための投資でなければならず、既存ビジネスへの投資は認められません。会社はアメリカ市民か永住権保持者を10人以上雇っている必要があり、申請が通ると2年間限定の永住権が下ります。その間、会社が順調に経営されれば、10年間有効の正式な永住権が発給されます。「EB-5」の永住権申請では、最初の2年間で会社が倒産すれば永住権は取得できず、投資金は戻ってきません。また、現在は正式な永住権取得まで7~8年かかっているため、少々リスクの高いカテゴリーと言えそうです。
 
●関連記事:投資によるグリーンカードの申請・取得
 
その他、永住権抽選プログラムがあります。これはコンピューターによる無作為の抽選により、毎年5万人に永住権を発行するプログラムです。左上の表を見ると、当選者数が5万人を超えていますが、これは、当選しても申請資格や移住する気がなかったり、書類不備で却下となったりする場合を見越して多めに当選者を出しているからです。このプログラムでは、当選しただけでは永住権は取得できず、当選後正しく申請し、面接にパスしなければなりません。当選後の申請は、当選者に与えられるケースナンバー順に進み、発給数が5万に達した時点で終了。この時に5万の枠に入っていなければ当選は無効となります。
 
●関連記事:アメリカ・グリーンカード(永住権)の抽選プログラム
 
(取材協力:大橋幸生弁護士・Taki Law Offices/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載)
 
※上記は2017年9月1日現在の情報です。掲載後、内容が変更・改正される場合がありますので、最新情報や個別の事例につきましては移民法弁護士にお問い合わせください。

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