特定犯罪被害者を救済するためのUビザ

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瀧 恵之 弁護士

Q:私はアメリカ市民の彼と結婚しましたが、度重なる暴力に悩まされています。先日、警察に出頭した際に、このことによって彼からグリーンカードのサポートが受けられなくなり、米国に入国できなくなる心配があると告げました。すると、最近“Uビザ”というものができて、私の場合それに該当するかもしれないので、弁護士に相談してみるよう言われました。Uビザとは、どのようなビザですか?

A:移民局は、2007年9月5日にUビザの中間最終決定(interim final rule)を発表しました。この中間最終決定とは、法律自体は確定しているものの、再度、変更が加えられるかもしれない状態を指します。
 
まず、Uビザは、以下の4つの条件を充足することが要求されます。
 
(1)申請者が指定された犯罪の被害者であり、その結果として、身体的、あるいは精神的損害を受けたこと
(2)申請者が当該犯罪行為に関する情報を持っていること
(3)当該犯罪の調査、起訴を行うにあたり、申請者が今まで手助けになってきたこと。あるいは、今後手助けになること、あるいは手助けになるであろう可能性が高いこと
(4)当該犯罪行為が米国の法律に反していること。あるいは、米国内において起きた行為であること
 
ここで指定された犯罪とは、レイプを始めとする性的犯罪、特にドメスティックバイオレンスに関連した犯罪がそれに当たります(厳密にはリストがあり、27個の犯罪が指定されています)。

必要と判断されれば永住権の申請も可能

Uビザの申請は、I-918という申請書によって行います。申請は、犯罪の被害者であれば誰でも申請できるというものではなく、連邦・州・郡・市などにおいて犯罪行為を調査、あるいは起訴する権限を与えられている政府機関(例えば警察、検察官、裁判官等)から、「I-918 Supplement B」という書類において認可を受けなければなりません。
 
また、このUビザは、米国内に滞在している人に限らず、日本からでもアメリカ大使館を通して申請することができます。扶養家族に関しては、申請者の配偶者、18歳未満の子供も同じく取得することができ、申請者が21歳未満の場合は、両親も同時に申請することができます。
 
Uビザは、移民局の会計年度で1年間に1万件(扶養家族の分のUビザは、この数に含まれません)しか発行されないことになっています。しかし、これに漏れた場合であってもWaiting Listの中に入ることができ、順番が回ってくるまでの間、就労許可や再入国許可の申請が可能です。
 
Uビザは一般的に4年以上の許可は下りないとされていますが、犯罪行為の調査を必要としている政府機関が、それ以上の期間が必要であると判断した場合には、それ以降の延長も可能です。Uビザの申請料は、政府の政策目的から無料とされており、指紋登録(Finger Print)の費用80ドルのみが必要とされます。
 
Uビザにて3年以上滞在し、犯罪行為の調査を行う機関が必要と判断すれば、その後、グリーンカードを申請することも可能とされています。また、あなたの場合はドメスティックバイオレンスによる被害者であるため、このUビザを申請できるだけでなく、I-360という書類を移民局に提出することによって、3年間待つことなく、グリーンカードの申請を行うこともできます。この場合は、警察からのレポートだけでなく、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポート等も有力な証拠になります。
 
(2008年5月1日掲載)

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