今週のオススメシネマ
正義の女神が映画をジャッジ | テミス裁きの神殿
【バックナンバー】
歴代No.1のオープニング週末興収
|
「ヒース・レジャーの演技はオスカーものだ!」「2時間半でも絶対飽きない!」などと、この映画を観てネガティブなコメントをする人がほとんど見当たらない。同じくアメコミ映画『アイアンマン』でも同じような反応を耳にしたものだ(『アイアンマン』の方が観終わってスカッとするが)。
スーパーヒーローものが立て続けに公開されて食傷気味だったが、確かにレジャーの演技は素晴らしかった。何かが乗り移ったような狂気が全身にみなぎり、今年1月の彼の急死を知って観ているせいか、不吉な感じをもさせる怪演。『時計じかけのオレンジ』でマルコム・マクダウェルが演じた、凶悪な青年アレックスをイメージして役作りをしたというレジャーのジョーカーは、“誰にも止められない”という存在感と、“バットマンには倒せないだろう”と感じさせる絶対的な何かがある。 前作『バットマン・ビギンズ』の続編となる本作は、バットマン(ベイル)に強敵ジョーカー(レジャー)が現れ、ゴッサムシティーが恐怖に陥るところから始まる。地方検事として街へ新しく赴任してきた正義感にあふれるハーベイ・デント(エッカート)は、凶悪犯罪一掃に乗り出す。バットマンとデント、そしてゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)は、ジョーカーの凶行を止めようとするが、白塗りの顔に裂けた口をしたピエロのような顔つきのジョーカーは、バットマンがその正体を明かすまで、凶悪犯罪を繰り返すと挑戦する。 『メメント』を手がけた監督クリストファー・ノーランと、弟のジョナサン・ノーランによる脚本が素晴らしい。体裁やモラルを捨て去った人間の本性があふれたジョーカーのセリフには、哲学を感じる。常に二者択一を迫るジョーカーは、理性ある人間が極限状態に置かれ、獰猛な本性をむき出しにするのを嬉々として見つめる。そして彼は、「戦争で兵士が死んでも人々は驚かないのに、町で誰かが殺されると慌てふためく」と、世の中の常識をあざ笑う。バットマンについても、自分と同じフリーク(変わり者)で、町の人々は彼を必要な時しか受け入れないと、痛いところを指摘。まさに真実の囁きだ。それを知っていながらも、町を守ろうと、“闇の騎士(ダークナイト)”役を貫くバットマンが痛々しい。 ほかのスーパーヒーロー映画よりずっとダークで、気分爽快のアクションムービー! というより、人間の深層心理をついた良質のドラマだ。ちょっと暗いが、見応えある骨太な作品。バットマンが頑張れば頑張るほど、それに挑戦してくる敵が現れるのだから堪らないが、既に『ダークナイト』に続く次回作には、ジョニー・デップがバットマンの強敵であるナゾナゾ好きの天才頭脳犯リドラー役を演じると、もっぱらの評判だ。また、フィリップ・シーモア・ホフマンも、謎のペンギン怪人役のオファーを受けていると噂されているから、ヒット記録を塗り替えた作品なだけに、まだまだ続編が続きそうだ。 【 文:MAMIKO KAWAMOTO】 |
【文:MAMIKO KAWAMOTO】
「ヒース・レジャーの演技はオスカーものだ!」「2時間半でも絶対飽きない!」などと、この映画を観てネガティブなコメントをする人がほとんど見当たらない。同じくアメコミ映画『アイアンマン』でも同じような反応を耳にしたものだ(『アイアンマン』の方が観終わってスカッとするが)。


