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ジャンル ドラマ
オススメ度 ★★

早くもアカデミー賞有力候補!?
クリント・イーストウッド監督最新作

Changeling
出演 | アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコビッチ、他
監督 | クリント・イーストウッド
“Changeling=すり替えられた子供”がタイトルの直訳。文字通りこの映画の核は、ある日息子が行方不明になり、発見されて無事帰宅したが、自分の息子ではなかった…という“すり替え話”である。

タイトルだけ聞くと、この映画は、犯罪スリラーなのか? ホラーなのか? または社会派ドラマか? いや、親子の愛情ドラマか? と、色々と思い巡らせるのだが、このすべての要素が詰まった映画が、本作『チェンジリング』だ。これだけ多くのジャンルを取り入れようとすると、ごった煮的で、サブプロットがたくさん入っているだけの焦点がずれた作品になってしまうのだが、イーストウッドが監督をすると、あら不思議!? すっきりと見事にまとまってしまう。『ミリオンダラー・ベイビー』で監督、主演を務め、この作品で2005年度のアカデミー賞作品賞、主演女優、助演男優、監督賞の計4部門を受賞したイーストウッドが、『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』に続いて監督をした新作だ。

1928年、ロサンゼルス。電話交換所で働くシングルマザーのクリスティーン・コリンズ(ジョリー)がある日帰宅すると、9歳の息子が行方不明に…。5カ月後、息子が見つかったという朗報がクリスティーンのもとへ届く。母親と息子の感動の再会を取材しようとプレスが押しかけた駅のプラットフォームでいざ再会してみると、それはまったくの別人だった。「私の息子ではない」と初めから否定するクリスティーンだが、少年は自分は実の息子だと言って譲らず、無理やり警察に説き伏せられて少年を家へ連れて帰る。

長期間クリスティーンの息子を発見できなかっただけでなく、今度は間違った人物を探し当ててきた、という失態を取り繕うために、ロサンゼルス市警は躍起になる。クリスティーンが諦めることなく息子の捜索を嘆願すると、市警は彼女を強制的に精神病院へ送る。そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは、ロス市警の悪行に耐えかねていたブリーグレヴ牧師(マルコビッチ)だった。こうして息子を取り戻したいと切望する母親は、国家権力と真っ向から立ち向かう運命に。

女性の権利が低く見られていた時代に、とりわけ勝気でも社会的地位が高いわけでもないごく一般の女性が、子供を取り戻したいという“母の愛”に突き動かされていく姿は、時代を超えて共感できるだろう。社会派の小難しい映画ではなく、母と子のメロドラマを強調するのでもなく、スリラーとしてのエンターテインメント性の高い、骨太な作品に仕上がっている。諦めないジョリーを見て、日本
人拉致被害者である横田夫妻の姿が思い浮かんだ。

不景気な世相を考えると、暗めのテーマではあるが、不条理な運命に打ち勝とうとする人間ドラマを力強く描き出した秀作。イーストウッドが作曲した、しっとりとしたピアノの音色も心地良い。来年の賞取りレースに間違いなくからんでくるだろう。

【 文:MAMIKO KAWAMOTO
【文:MAMIKO KAWAMOTO
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