エンターテイメント

今週のオススメシネマ

ジャンル ドラマ
オススメ度 ★★★

スラム街の少年が、
クイズ番組で億万長者に!?

Slumdog Millionaire
出演 | デヴ・パテル、アニール・カプール、フリーダ・ピント、他
監督 | ダニー・ボイル
世界的なスマッシュヒット作となったゾンビ・ホラー映画『28日後…』、その続編『28週後…』で、廃墟となったロンドンをゾンビが猛スピードで走り抜けるスタイリッシュな映像が光っていたダニー・ボイルだが、本作『スラムドッグ・ミリオネア』でも彼の才能は健在。

インドの大都市ムンバイのスラム街を、警官に追われて駆け巡る子供たち。彼らが、路地や瓦礫の山、土管の上を逃げ惑う冒頭のシーンは圧巻。エキゾチックでアップテンポな音楽が流れ、カメラは、色とりどりのサリーを身にまとう人々、道端でウロウロしている犬や鶏などの動物の間をくぐり、ダッシュで逃げる子供たちを追う。

映し出されるスラム街の日常と、そこに浮き彫りにされる人々の貧しさ…。この“貧しさ”こそ、“スラム街出身の貧民が億万長者になる”という題名に込められたテーマ。日本でも、みのもんた司会で人気を博した、全問正解すれば億万長者になれる人気クイズ番組『クイズ$ミリオネア』。このインド版クイズ番組で、スラム街出身の18歳の青年ジャマル(パテル)は、前人未到の200万ルピーを獲得する。

物語は、イカサマをして賞金を得たとジャマルが警察に連行され、自白のための拷問を受ける場面から始まる。続いて、ジャマルが正解の答えを知るきっかけとなった、スラム街で生き延びるために経験した出来事が、フラッシュバックで描かれる。7歳のジャマルは兄と2人で、ちょっとした盗みを働きながら生き抜いている。世界遺産でもあるタージ・マハル廟で、観光客の脱いだ靴をすかさず盗んで町で売りさばいたり、観光ガイドになりすまして、いい加減な解説でお金をだまし取るなど、子供なのにどうしてこんなに金稼ぎのアイディアが出るんだろう? と、そのサバイバル精神の旺盛さには圧倒される。

ジャマルは同じ年頃の美少女ラティカ(ピント)と仲良しになるが、ギャングの追手から逃れる際に彼女と離れ離れに。成長した兄は地元ギャングの一員となり、弟のジャマルはアルバイトをしながら堅実な生活を送っている。幼い頃の淡い恋心を忘れられず、ジャマルはラティカを見つけ出そうと、人気番組『クイズ$ミリオネア』に出演して、彼女を探しだそうとするが…。

1ルピーが2円くらいだから、200万ルピーは約200万円。ジャマルは、貧しい人々の夢を体現する憧れのヒーローだ。砂漠のオアシスやスラム街の街角で、小さなTVに人々が群がり、彼が一攫千金を目指す姿に声援を送る光景に、胸が熱くなった。

ダニー・ボイルの映像は、そこに映る色彩だけでなく、うだるような暑さや、道端に立ち込める異臭、人々の熱狂や歓喜などを余すところなく捉え、映像の魔力さえも感じさせる。『フル・モンティ』のサイモン・ビューフォイの脚本も素晴らしいが、ヴィカス・スワラップの原作『ぼくと1ルピーの神様』も読んでみたくなった。来年のアカデミー賞の呼び声も高い、秀作。


【 文:MAMIKO KAWAMOTO
【文:MAMIKO KAWAMOTO
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