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ジャンル ドラマ
オススメ度 ★★

南米版『Slumdog Millionaire』
感動ラブストーリー

Sin Nombre
◉出演 |エドガー・フロレス、ポリーナ・ガイタン、クリスチャン・フェレ、他
◉監督 |キャリー・フクナガ
南米を横断してアメリカを目指す、違法移民の物語。暗くて社会派の作品かな? と思ったが、『Slum dog Millionaire』の様に恋愛物語をベースにしているので、テーマは重いが爽やかな感動も味わえる、バランスのいい作品に仕上がっている。

ホンジュラスに住む10代の少女サイラ(ガイタン)は、希望のない将来に絶望を感じ、父親の住むアメリカへの移住を志す。また、同じ様にメキシコに自分の人生に疑問を感じている青年がいる。ウィリー(フロレス)は、地元ギャングのチンピラだが、ワルになり切れず葛藤している。自分がスカウトしてきた弟の様な12歳の少年スマイリー(フェレ)にイニシエーションとして暴行を加えるのも苦痛でたまらない。ある日、ウィリーは、彼女をギャングのリーダーであるリル・マゴに殺されてしまう。その頃、サイラは親戚と一緒に、まずはホンジュラスからメキシコへの亡命に成功する。ここからアメリカ行きの列車に乗り込んで、国境付近まで行こうというのだ。そこへ、移民を狙ったウィリー、スマイリー、リル・マゴが、サイラたち一行を襲う。リル・マゴがサイラを暴行しようとした時、ウィリーは思わずリル・マゴを殺害し、サイラを救う。ウィリーは、裏切ったギャンググループから命を狙われながらも、サイラを国境まで連れて行くと決心する。

サイラを始めとする移民たちが、狭い列車の屋根で身をひそめ、国境を目指す姿がリアルに映し出され、“命がけの旅なんだな”と彼らの境遇を実感。行く先々の村で、「頑張れよ」と果物を放られ、温かい声援を浴びる微笑ましいシーンがあるかと思えば、「移民なんか出て行け」と石を投げられる場面もあり、ドキュメンタリーを見ているような力強い演出が印象に残る。寡黙で、他人を避けるようにしている一匹狼のウィリーが、次第にサイラに心を開き、自分と殺された彼女が幸せそうに映ったデジカメの映像をサイラに見せるシーンなど、若い2人のやり取りが実に瑞々しく描かれている。


2009年のサンダンス映画祭で上映され、監督賞、撮影賞を受賞した本作が、監督、脚本を手がけたキャリー・フクナガの長編監督作第1作目だというから驚きの才能だ。決してメジャーでコマーシャル作品ではないが、よく組み立てられた脚本、さりげないが力強い演出、南米の貧困と風景の美しさを余すことなく捉えた映像、すべてがいい塩梅で織り交ぜられた力作。


ほぼ無名の主演の俳優の演技も素晴らしい。サイラ役のガイタンは、『Maria Fullof Grace』で鮮烈なデビューを飾ったカタリーナ・サンディノ・モレノを思わせる美貌と、確かな演技力を見せた。



【 文:Mamiko Kawamoto
【文:Mamiko Kawamoto
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