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アメリカで働く(多様な職業のインタビュー集)

現地情報誌「ライトハウス」が長年に渡り連載してきた人気コラム「アメリカで働く」は、アメリカで働く日本人・日系人、100名以上の皆さんへのインタビュー集。業種も、職種も異なる100名以上の皆さんそれぞれにとっての「アメリカで働く」とは?アメリカでの"キャリア"や"仕事"が見えてきます。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

経営コンサルタント/情報デザイナー(その他専門職)

宮嶋サトシさん

まずアクションを起こしてみることが大切
フィードバックは、自分の成長の証


日本で大手企業に勤務し、さまざまな夢や目標を叶えてきたが、会社の看板を背負わず、自らの力を試したいと渡米を決意した宮嶋サトシさん。会計事務所に勤務するかたわら、業務時間外には個人事業を展開し、業務改善・改良に挑戦している。「頭の中も目標も『見える化』させることで、必ず前に進む」と話す宮嶋さんに話を聞いた。


【プロフィール】みやじまさとし◉1999年、住友不動産販売株式会社入社。社長室、IT戦略室で、主に広報、企画・開発、運営管理に従事。大学在籍時に、ウェブサイトや広告制作にて個人業開始。2008年に渡米し、同年よりTwo Miles公認会計士事務所勤務

まずは実践 トライアル・アンド・エラーで覚えた

日本で大学卒業後、住友不動産販売に入社しました。同社では社長室、IT戦略室といった、会社のコアの部分に携わってきました。社長室に勤務していた時には、一般的な秘書業務に加え、広報として、ウェブサイト上でどのように広告戦略をしていくかを学びました。その後、日本はITブームになりました。住友も競合他社に負けないよう、ITを駆使したプロジェクトを組もうとして立ち上げられたのが、IT戦略室でした。

大きな会社と言えども、新しい分野のチームでしたから、誰かが仕事を教えてくれるわけではありませんでした。例えばコンピューターひとつにしても、最初は本やウェブサイトで情報を集め、自分で色々いじってみる、トライアル・アンド・エラーの繰り返しで、やり方を見つけていきました。何かを始める時、僕はいつも即実践。まずやってみて、壁にブチ当たってから、「じゃあ、これはどうやるのかな?」と探ってみる、そういう方法でやってきました。

所属部署のフロアで仕事をしていて、ふとあることに気付きました。それは、どこの部署でも室長になられている方は、みんな数字に強いのです。僕もいつかはみんなを導く人になりたいと思っていましたので、数字に強くならなくてはいけないと思いました。ビジネスをする以上は、会社の規模が大きかろうが、小さかろうが、お金の管理は絶対に必要になってきます。ですから、お金や数字に強いことは、とても重要なことだと思うんです。それが、後に今の仕事につながっていったのだと思います。


会社の肩書きがない状態で 自分を試してみたい

ライトハウス国際教育事業部のプログラムにて

ビジネスモデルの特許取得に携わったり、僕がデザインした住友のウェブサイトが本に載り、入社1年目にして自分の名前を残すことができました。社会的に知名度のある企業で経験を積ませていただいてきたのですが、何か物足りないと言うか、結局自分は会社の名前を借りて、仕事をしているだけではないかと感じました。それで、自分自身の力で何かにチャレンジしてみたいと思い、2008年に渡米を決意しました。

現在、勤務している日系の会計事務所では、各スタッフがゴール設定、顧客の期待を上回るサービスの提供、モデルカンパニーを目指しています。私は、税務申告書の作成、ブックキーピング、給与計算だけでなく、米国法人設立、会計をベースとした経営に関するコンサルティングや業務フローの短縮化、プロジェクトマネジメントを担当していています。

担当させていただいているクライアントは主に日本の上場企業ですので、駐在員人事の入れ替わりが頻繁にあります。すると、社内の会計システムが崩れてしまったり、担当者が実はどんな業務をしているのか、よくわかっていないといった状況が多々あります。その場合、「マインドマップ」というものを作って差し上げて、お客様の頭の中、業務のフローをわかりやすく情報デザインするという仕事をしています。

頭の中だけで考えているだけでは、ぐちゃぐちゃになりがちです。何から進めればいいのか、どこに向かって行くのか、今何をすべきなのか、やらなければならないことが多ければ多いほど、わからなくなります。それをお客様と話をしながら、目に見える形に落とし込んでいきます。

僕の仕事は、「コンサルタント」と言うより、「情報デザイナー」だと思っています。お客様から情報を聞き取り、その情報を誰が見てもわかるようにデザインするということです。


小さな改善を積み重ね 大きな結果を生み出す

僕は、会計事務所の仕事とは別に、個人事業としてもお客様を抱えています。もちろん自分のお客様からの依頼は、会計事務所の業務時間内には一切行いません。ですから、朝、会社に出勤する前の1時間ほどと、就業時間終了から寝るまでの時間のみで行います。契約の時点できちんとこうした状況をご説明し、ご理解いただいたところでスタートします。

会計、経営コンサルタントの仕事というのは、時間単位で契約を交わします。お客様からご依頼いただいた時間内に、お客様の求めるものを完結させなければなりません。でも実際は、「この時間内に、ここまでやりましょう」と引き受けた仕事が、予想よりはるかに時間を要することもあります。しかし、お客様にはすでにお約束をし、契約を交わしています。そうなった時は、残りの時間内に、どれだけ業務を凝縮して詰め込めるかが、自分へのチャレンジとなります。小さなことで言うと、キーボードの短縮キー(ショートカット)を覚えて使っていけば、それが何度も積み重なれば、すごい時間の短縮になります。そういった方法を見つけ出すことで、業務改善につながり、自分のスキルアップにもなっていきます。

誰もが忙しい日々を過ごしていて、まとまった時間はなかなか取れないものです。でも、5分間でできることって、実はすごくたくさんあるんです。そういう細切れの時間を有効に使い、ちょこちょこやれることをためていけば、結果的にすごくたくさんのことが達成できることを、身を持って体験しています。多くのことを限られた時間内に、的確にお客様に提供できる能力を鍛えたいという人がいたら、会計事務所は、それを磨くのに一番良い場所ではないかと思います。


自分と関わることに 期待を持ってもらいたい

話が少し戻るのですが、24歳の時、尊敬していた祖父が亡くなりました。祖父は、僕が大学進学や就職、会社で大きなプロジェクトを成し遂げた時、いつも「おぉ、良うやったなぁ」と誉めてくれる人でした。祖父に誉められたい、フィードバックをもらいたいと思って頑張っていた部分があったので、その心の拠り所がなくなってしまい、大変寂しい気持ちになりました。

葬儀は親族だけで、ひっそりとしめやかに行う予定でした。ですが、祖父は著名人ではなかったのですが、気が付けば大勢の参列者が弔問に訪れていました。その方たちに聞くと、「私は、あなたのおじいさんに昔、こんなことをしていただいたんです」と、感謝する話ばかりでした。人生の最期に、こうして多くの人が集まってくれるのは、人として本当に幸せなことだと感じました。この時、僕もたくさん知識を付けて、祖父と同じように多くの人にそれを伝え、分け与えることができる人にならなくてはならないと、固く決意しました。これがきっかけとなり、「あの人と関わると何かがある」という期待を持ってもらえる人物になりたい、誰かの架け橋になりたいという思いを抱くようになりました。

昨年は、「頭の中を見える化する」というテーマで、僕が得意とするマインドマップを紹介するセミナーをさせていただきました。また、ライトハウスの国際教育事業部を通して日本から訪れる学生たちに、少し人生の先輩として話をする機会にも恵まれました。こうして最近、少しずつ自分のやりたいこと、目指すものが実現しています。

どんな仕事に就くにしても、理想の自分や生活、そういうものをまずイメージして、そこに向かうためには今何をすべきなのか、あまり考え過ぎず、まずアクションを起こしてみることが大切だと僕は思います。何かをする時、「できないかも…」と不安だけが先に立ってしまったら、前に進めません。勇気を持って、なるべく周囲からフィードバックをもらえる環境を、自分から作ることです。自分から聞くのも勇気がいりますよね?でも、周囲から誉めてもらえたらモチベーションアップにつながりますし、不備を指摘してもらえれば改善できます。フィードバックは、自分の成長の証だと思います。

(2012年6月1日号掲載)