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Food

ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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ウサギおいし、かの山

ミスター世界(関根 正和)

ずっとまえにフランスに行ったとき のこと。

「フランスではウサギを食べる」と聞 きかじりしていて、「食べてみたい!」と 思った。

そこでいくつかのレストランに行っ て、「ウサギはあるか」と訊いてみたのだ が、どこに行ってもこたえは「Non」。

あとでわかったことは、ウサギという 食べものは基本的にジビエ(野生)で冬 の食材なのだが、そのときは夏だったの だ。

農場で飼われたものもあって、それ なら一年中出回っているけれど、どこの レストランにもあるというほどポピュ ラーなものではない。

中世のヨーロッパなどではさかんに 食べられたらしいが、畜産技術が発達 したことによって、大型の家畜の肉のほ うがポピュラーになったということだ。

いまのフランスでは、僕の経験による と、肉類でいえばだいたい牛、羊、鶏、豚、 鴨、の順番に多くメニューに出ていて、 その次あたりにだいぶ離れてウサギ (フランス語ではlapin=ラパン)かな、と いう感じだ。

英語ではrabbitのほかにhareとい う種類の大型ウサギがあり、メニューに はhareのほうがよく出てくるので、 知っておくと便利だ。

さて料理方法だが、ウサギの肉は概 して味が淡白なので、ラグー、つまりト マトなどを使った濃厚なソースにから ませることが多い。

ローストにすることもある。いい香り がうまれるのだ。

ちなみに、猫はウサギと似た味がす るというはなしだ。

僕は食べたことがないですけど。

僕がジビエのウサギを食べて感激し たのは、ボラボラ島の夏だった。

ボラボラ島は、フランス領ポリネシ アの一部だから、フランス人のシェフが やっているレストランが多い。

しかも、フランス人を含めてお金持 ちの観光客も多いから、驚くほどレベ ルの高いフランス料理が食べられる。

僕が食べたのは、海辺のよしず張り のようなデコアの店だったが、フランス 人の夫婦がやっていた。

南半球のポリネシアが夏ということ は、フランスは冬。

フランスから空輸してきたジビエの ウサギという冬の森の味覚を夏の海辺 で食べる、というその贅沢感もあいまっ て、えらく感激の味だった。

ウサギの味と食感は、一般的にいって、 脂けがとても少なく、鶏のささみに似 た、柔らかい、優しい感じ。

あのかわいいウサギの姿が味に現れている。

「あんなかわいいウサギなんか食べ ちゃって、残酷じゃないか!」という気 がしないでもないが、人間が見てかわ いいから食べてはいけない、かわいくな ければ食べてもいい、というのもおかし なはなしだな、と納得して食べる。

実際に食べてはいけないとされてい る文化もあって、ユダヤ人の食の規則、 コーシャーでは、ウサギは食べてはいけ ないもののひとつだ。

逆に日本のばあいは、四足動物の肉 を食べることを禁じていた時代でも、 「ウサギはウ(鵜)とサギ(鷺)に分けら れるから鳥だ。したがって食べてもよ ろしい」とされ、だからウサギは一羽、二 羽と数えるのだ*(Wikipedia)。

かなりのこじつけだが、きっとそれほ どおいしかったのでしょう。

*一羽、二羽と数える理由については、他にも諸説あり ます。

LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です

The Winery
ショッピングモール内にある、一見どこにでもありそうな大型アメリカ ンスタイルのレストラン。ところがこの店の料理の質は、決してどこに でもあるものではない。個性や演出というより、「味」そのものが高い。 「Rabbit Loin」という、ウサギの肉にスタッフィングした料理がある。
味:25 予算:$100
2647 Park Ave., Tustin
☎ 714-258-7600  www.thewineryrestaurant.net
Lunch: Mon-Fri  11:30am-3:30pm
Dinner: Mon-Thu 3:30pm-10:00pm Fri 3:30pm-10:30pm
Sat    5:00pm-10:30pm Sun 5:00pm-10:00pm
Open 7 Days

Animal
カジュアルでヒップで楽しい店。ウサギ料理や牛の脳などちょっと珍し いものもあるが、決して奇をてらった料理ではなく味で勝負している。 このウサギの脚を食べたらきっと「ウサギっておいしいね」と思うはず。
味:24 予算:$100
435 N. Fairfax Ave., Los Angeles
☎ 323-782-9225 www.animalrestaurant.com
Sun-Thu 6:00pm-11:00pm
Fri & Sat 6:00pm-2:00am
Open 7 Days

(2011年1月16日掲載)


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