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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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まだある!眺めの良いアウトドア・バー

ミスター世界(関根 正和)

最近の本誌で、「眺めの良いアウトドア・バー」という特集があったのをご覧になっただろうか。

とてもいい特集だ。

一年中気候のいい南カリフォルニアやハワイのこと(この記事はハワイでも読まれているのです!)、このすばらしい贅沢を享受せずしてなんとしよう! ピクニックで食べるお弁当やオニギリって、家の中で食べるよりずっとおいしく感じるでしょう?

それと同じで、沈む夕日を見ながらのパティオや、陽が落ちてからファイアピットを囲んで飲むお酒って、格別のうまさがある。

そして、まわりのお客たちのピープルウォッチングも楽しい。

じつは僕は最近も、すばらしい経験をしたところだ。

この6月にマルセイユに行ったとき、そこで泊ったRelais et Chateaux*の、こぢんまりしたブティックホテル。

地中海の湾が見渡せる小高い丘にあって、うっとりするほどの景色だ。

夕方、パティオバーに出て、ワイフと共にプロバンス産のロゼワインなど飲み始めた。

まわりのテーブルは、どれもマルセイユやニースあたりの高級住宅地から来たと思われる、いかにも生活に余がありそうなフランス人ばかり。

7、8人のおしゃれな年配グループも楽しそうに談笑しながら飲んでいる。

僕たちのすぐとなりのテーブルは、30過ぎと思われるカップルで、これが着こなしといいアクセサリーといい、ワインの飲みかたといい、胸のすくようなカッコいい男女だ。

アメリカ人にはカジュアルなよさはあるけど、こういうふうに「決まった」人というのはそう多くない。

ウェイターたちもピチッとグレーのタキシードを着込み、これがまた全員いい男。

海を渡る涼しい風と、ピッと冷えたロゼワイン、おしゃれなアミューズ(突き出し)。

至極のときとはこのことである。

そして、適当なタイミングで、室内のレストランのテーブルに移る。

このレストランの料理が、僕の拙なる文章力では書ききれないすばらしいものだった。

30点満点で30点以外つけようがない。

料理もさることながら、このレストランの最大の想い出は、外の風にふかれながらの食前酒と、テーブルクロスのフォーマルなディナー、という「2ステップの組み合わせ」だった。

最初から最後までテーブルに座ったままでよりも、楽しさが二倍になる。

じつは、逆もまた真なりで、食事が済んだあとに、ファイアピットのまわりで炎を見ながらディジェスティーフ(食後酒)、というのもまた格別だ。

もちろん、フランスだけではなく、アメリカにもパティオバーのある店はたくさんある。

でも考えてみたら、日本ってあまりそういう店ってないですよね。

土地が狭いせいだろうか。

南カリフォルニアは、夕方の空気の気持ちよさは世界一だ。

ハワイの、花の香りを含んだ湿り気のある空気も、世界に類をみない。

アメリカにいるときこそ、楽しまなくちゃ。


(2011年8月16日号掲載)


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