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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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カレー・咖哩・카레

ミスター世界(関根 正和)

「今日はカレーにしよう」。「わーい!」。と、どこの家でも歓声があがるほど日本ではポピュラーなカレーライス。言うまでもなく、インドで生まれ、イギリスに渡り、日本に伝来した食べものだ。

じつは、日本に伝来したあと、カレーライスはそこで歩みを止めたわけではない。そこからさらに先をめざしたのだ。

台湾と韓国にも到達し、この二ヶ国でもカレーライスは完全に食文化に根付き、いまではとてもポピュラーな食べものだ。

台湾では咖哩飯という。咖哩とはもちろんカレーの当て字だ。

これがウマイのですね。

日本のカレーとはちょっとちがう。日本でも戦前はこういうカレーを食べていて、それが日本統治時代の台湾に渡り、いまに残っているらしい。

まず、色が黄色い。

ターメリックはたくさん使うが、そのほかの香辛料、たとえばキュミンやカルダモンはあまり入らないからだ。色だけではなく、食べてみると日本のカレー、ましてやインドのカレーのように複雑な香辛料がからみあったという味ではなく、シンプルでストレート。

グもちがう。

じゃがいもが入らないことが多い。肉もあまり入らない。そのかわり、ピーマンと玉ねぎが大きなブツ切りで入る。けっこうクセになる味である。香港や上海でも近年は同じようなカレーがポピュラーだが、僕は台湾から入ったものではないかと思っている。一方、韓国のカレーもやはり統治時代に入ったのだろうが、その後日本と同じように発展して、日本のいまのカレーにとても近い。色は台湾よりもっと茶色いし、ドロッとしている。肉も入る。

日本との最大の違いは、掻き混ぜることである。

日本人の多くは、白いごはんの上に乗ったカレーを、端からスプーンで切り崩しながら食べていきますよね。僕もそうで、カレーの部分と白いゴハンの部分が微妙にムラがあるのが好きで、ひと口ずつ、カレーの濃いところ、ほぼ白飯だけというところ、そしてその中間、この食べ分けがすごく楽しいのだ。韓国人はそういう考え方にはまったくクミしないらしい。

掻き混ぜる。なにしろ掻き混ぜる。

あるとき韓国料理店で食事をしていたら、となりのひとがカレーを注文した。興味をもって観察していたら、皿が到着し、かれはスプーンを取り上げてカレーとライスを掻き混ぜ出した。数えていたら、ひと口目を食べるまえに、なんと85回掻き混ぜた。ホントです。

つまり、ゴハンのひと粒ひと粒の隅々まで、満遍なくカレーがまぶされ色がつくことを確認して、はじめて彼らは口にするのである。

ドルソッカレーというものもある。ドルソッ・ビビンバという石の釜で温めたビビンバがあるが、あの要領でカレーライスがでてくる。これはかなりうまい。

それと、日本では福神漬けかラッキョウがついてくるが、韓国のばあいはというと、まあ言うまでもないですね、キムチがついてくる。

いちど元祖インド人に日本、台湾、韓国のカレーを食べくらべてもらって、どれがいちばんうまいと思うか聞いてみたいと思っている。



LAではココ!「予算」は2人分です
Canaan(迦南美食)
台湾・上海料理の店で、開店したり閉店したりの激しいチャイニーズにあって、人気を保っている。小籠包や台湾風チキンカレーライスがある。
予算:$15
11610 South St., Artesia
☎562-809-8369  
Lunch: Mon-Fri  11:00am-3:00pm
Sat & Sun  8:30am-3:00pm
Dinner: Mon-Fri  4:30pm-10:00pm
Sat & Sun  3:00am-10:00pm
Open 7 Days

Curry Hyang
カツカレーやパスタ、オムライスなど、日本の洋食屋さんと似たメニューがいろいろある韓国系洋食屋さん。シーフードカレーやカニコロッケでも有名。
予算:$20
3068 W. 8th St., Los Angeles
☎213-389-0800 
Mon-Sat 10:00am-10:00pm
Sun 12:00pm-8:00pm
Open 7 Days


(2011年12月1日号掲載)


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