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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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オリーブは果物か

ミスター世界(関根 正和)

「日本で最も重要な果物」というと、何だろう。
みかん? スイカ? それとも柿?
いまいちはっきりしないが、ヨーロッパでは至極はっきりしている。
ブドウである。どうです、異論の余地がないでしょう。
もちろん、粒を食べることよりも、ワインの原料として。
そして、その次にくるのが、オリーブだろう。
オリーブ・オイルの原料としてはもちろんのこと、原型のままピックルズにしたり、
マリネードして食べるか、料理に入れて盛んに消費される。特に南ヨーロッパがそうだ。

でも、オリーブって果物?
Wikipediaによれば、「植物界、被子植物門、双子葉植物網、ゴマノハグサ目、モクセイ科、オリーブ属、オリーブ種の果実」である。全世界の生産量の36%はスペインだ。
実際にスペイン、特にアンダルシアなどの南部を旅すれば、レストランに入ると、だまっていてもかならず、小皿に乗ったオリーブが何種類かテーブルに登場する。もちろん、マドリッドなどでもタパスのメイン・アイテムのひとつだ。

スペイン語ではaceitunasという。olivoという単語もあるが、これはオリーブの木のことをさす。
このaceitunasがほんとにうまく、黒や緑、大きいの小さいの、
ガーリックなどの香辛料をいれたりいれなかったり、店によって味が違う。
スペイン旅行の大きな楽しみのひとつである。
ギリシャでは、グリークサラダにフェタ・チーズとともにさわやかな香りをつけ、
イタリアではペンネ・プタネスカにアンチョビとともに適度な塩味を出し、
モロッコではタジーヌという土鍋で蒸したチキンに、デーツとともにエキゾティックな風味を加える。
南フランスやポルトガル、中近東、さらにはウクライナでも、
オリーブを使ったおいしい料理を食べたことが思い出される。
そういえばイギリスでも、ドライ・マティーニにオリーブをひとつ入れるのが、正当な飲みかただっけ。
日本人にはこのオリーブのすばらしさに気づいていない人が多い。
スーパーあたりでビン詰めのオリーブを買ってくると、
だいたいが酸っぱすぎるか塩辛すぎて、オリーブってこんなものだね、と片付けられてしまう。

でもちょっと待って。日本の漬物だって、ほんとにおいしいのは自分で漬けるか、
さもなければ、専門店で樽で漬けてるものを買ってくるでしょう。
オリーブも、自家製で漬けている店から買ってくると、目からうろこが落ちるくらいうまい。
そして、ワインを飲みながらのつまみとして、すばらしい。
ワインとオリーブの相性がいいのは、似た果物として、似た性質があるからだろう。
ミカンやスイカをワインを飲みながら食べることを想像していただければ、
オリーブの相性がわかると思う。

もひとつオリーブと相性のいいのはトマトだ。これも果物である。
自家製オリーブを買ってきて、トマトサラダに、ピザに、トマトソースのスパゲッティに、数個乗っけて食べてみてください。

(2007年4月1日号掲載)


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