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ミスター世界の食文化紀行

"ミスター世界"こと、関根正和さんによる「食」に関するライトハウスの人気コラム。食体験にまつわる楽しい話題や、移民の国アメリカならではの当地のレストラン情報をご紹介します。世界各国の珍しい食材や独特な調理方法、料理の特徴など、読めば新たな発見があるはず!

ミスター世界…世界230以上の国・地域を旅し、本場の食体験と、LA界隈の4000軒以上のレストラン食べ歩きの経験をもとに、食文化評論家として活躍。

ミスター世界
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エスカルゴ鍋

ミスター世界(関根 正和)

「Escargot」(エスカルゴ)、つまりカタツムリは
フランスを代表する食材のひとつ…。
パリに行ったら、本場のエスカルゴを食べてみないことには
話にならない…。

夕食時ともなると観光客であふれかえる
パリのカルチエ・ラタン。
レストランの外に貼り出されたメニューをみると
どこもかしこもオニオン・グラタンにクレープ
それにエスカルゴ。
エスカルゴがフランス料理の象徴のように思っている外国人が
いかに多いかということであろう。
オニオン・グラタンやクレープは、たしかにパリでもポピュラーな食べものだが
エスカルゴは、観光客むけのレストラン以外には、めったにないのである。
とはいえ、食べてみれば、これはけっこううまいものだ。

ブルゴーニュ地方が本場とされていて、「ブルゴーニュ風」とよばれる食べかたは
内臓を取り除いたエスカルゴに、ガーリックとパセリとエシャロットを刻んでまぜた
熱ーいバターをたっぷりからませて食べる。
フランスのバターは香りがいいし、それだけ舐めたってえらくうまいんだから。

カタツムリなんて食感がキモチ悪い、と言う人もいるかもしれないが、要するに巻貝である。
つまりサザエやタニシなどの仲間が、陸上に上がっただけの話だ。
サザエやタニシは、日本でも壷焼きにしたり、味噌汁に入れたりして食べる。
カリブ海でも、コンクという小さな巻貝を茹でて食べるのはとてもポピュラーだ。

エスカルゴの食感もまさにそれで、歯に心地よい弾力がある。
ミル貝やタコの食感にも近い。
そう言えば、タコだってもともとは巻貝が貝を捨てて進化したものらしい。
ブルゴーニュでは、エスカルゴたちにブルゴーニュ(つまりバーガンディ)ワインを作る
ブドウの葉を食べさせて育てる。
だから、特に香りもよく、おいしいのだ。

もちろん、衛生的に育てられる。
LAでも、雨がたくさん降ったあとにそのへんにカタツムリが這い回っているが
あれは寄生虫もいるし、泥の成分の中の人体に有害なものも食べているから
取って食べるわけにはいかない。

カタツムリを食べるのは、なにもフランスの専売特許ではなく、中国や韓国でも食べるし
日本でも昔から味噌汁に入れたり、そのまま茹でて食べる地方があるという。
インターネットでしらべたら、三重県に、「エスカルゴ牧場」なるものがあった。
ここは、エスカルゴを養殖して日本のフランス料理店などに卸しているらしいが
「牧場」という名がコワイではないか。
馬や牛の牧場のように、エスカルゴが野原一面を
ゾロゾロと走り回っている姿を想像してしまう。

それはともかく、僕はエスカルゴは「ブルゴーニュ風」でしか食べたことはないが
巻貝の一種なのだから、サザエやトコブシと同じように
壷焼きにしてもうまいのではないだろうか。
あるいは、味噌ナベにでもしたらどうだろう。
カタツムリは漢字で「蝸」と書くのだから「蝸鍋」にしたら字ヅラもいいですしね。

(2007年11月1日号掲載)


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