働く
JOB

アメリカでのビジネス・仕事

現地情報誌「ライトハウス」が人気コラム「アメリカ人と共に働く技術」をはじめ、起業・独立、マーケティングに関する情報など、アメリカでのビジネスに役立つ情報をご紹介。

ライトハウス編集部
ライトハウス編集部

21)生活とビジネスを一体化する
【マーケティング・センスを磨く】

マーケティング講座

みなさん、こんにちは! 阪本啓一です。
家事、してますか?


家事が発想の原点

 コンサルティングを通して、これまで千人近い企業担当者と一緒に仕事をしてきました。その体験から申し上げますと、マーケティングのセンスのある人とない人がはっきり分かれるなあ、ということです。これは知識の有無ではありません。高学歴でMBAホルダーのかたでも、失礼ながら、どうしようもないセンスの持ち主がいらっしゃいます。センスは、本をたくさん読んだり、セミナーに参加したりすることでは身につかないのです。センスを別の言葉に置き換えると、「目のつけどころ」と言っても良いでしょう。マーケティング・アイ(marketingeye)があるか、ないか。

 では、マーケティング・アイのある人はどこが違うのでしょうか。それは、「家事を知っている」かどうか。実はこの原稿を書いているのは自宅です。朝起きてから、朝食を作り、皿洗いをし、拭いて、棚に仕舞い、その後は洗濯物を庭に干しました。お風呂掃除もしました。以上すべての家事、今日は私の担当です。パートナーも仕事を持っていて、今日が締め切りの日なので、私が全般引き受けることにしています。

 自分で食器洗いをするから、シャープから出た新製品「なべピカさらピカ」が塩で洗い、8分の1節水にもなる、という広告が目に鋭く飛び込んできます。「洗剤を使わなくても、塩を使って水道水から硬水を作り出すため、タマゴのタンパク質もきれいに落ちる」という広告文章に強く惹かれます(笑)。また、限られたキッチンのスペース(日本の家屋はアメリカと比較して、キッチンの余裕が小さいです)で作業のしづらさを身をもって知っているので、同製品の、幅45僉奥行き29僉高さ46僂箸いΕ灰鵐僖トなサイズに驚き、羨望の気持ちが湧き上がります。大切なのは、「アタマで」サイズや汚れ落ちを理解しようとしなくても、「体感」でわかる点です。よくお勉強する人は、ややもすると「アタマで理解」しても、「ハラに落ちていない」のです。だからピントのずれた開発思想の商品が市場に出てしまうのです。

 あるマーケティング担当者は人気の斜めドラムの洗濯機の良さがわからない、とこぼしていました。話を聞いてみると、自分で洗濯をしたことなど、これまで1度もないというのです。オフィスでパソコンの前にばかり座っていて、商品企画などできるものではありません。

 私のマーケティング発想の原点は、やはり自分自身の家事経験なのです。


きっちり生活する

 企業の中でキャリアを積み、いわゆる「偉く」なっていくにつれ、「自分でやること」がどんどん減っていきます。具体的には、例えばレターひとつ自分では書かず、セクレタリーに文面を書いてもらい、自分はそのチェックとサインするだけ、というのも「あり」でしょう。しかし、これでは現場のことはわかりません。自分でレターパッドを選ぶ、封筒を選ぶ、どの切手がレターの相手にふさわしいか考える、こうした一つひとつの積み重ねがあなたの身体に「マーケティング・センス」を積み重ねていくのです。

 「Time is money」という言葉は一面の真理を語っています。しかしあくまで一面であり、こぼれ落ちてしまう側面もあるのです。即ち、「時間をかけることで経験に厚みをもたらす」点です。


生活とビジネスがつながる

 アウトドアウェアで人気のパタゴニア(Patagonia)はイヴォン・シュイナードによって、自分自身のクライミング経験をもとに創業されました。シュイナードの素朴な疑問「どうして1回か2回しかもたない粗悪なハーケンしかこの世にはないのか」が出発点です。自身もクライマーであり、サーファーである生活者ぶりが顧客の共感を呼び、一種カリスマ性ももたらして、パタゴニアの成長を後押ししてくれたのです。同社はスタッフが仕事を離れて4カ月ほどアウトドア・アクティビティーに集中することを許す組織システムを取っています。これは、アウトドアライフを実際にやっている人が作る製品でなければ市場への説得力を持たない、という強い信念があるからでしょう。

 生活とビジネスを一体化しましょう

(2005年10月1日掲載)