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ゴルフ徒然草

ヒデ・スギヤマが、ゴルフに関する古今東西の話題を徒然なるままに書きまとめた、時にシリアスに、時にお笑い満載の、無責任かつ無秩序なゴルフエッセイ。

ヒデ・スギヤマ/平日はハリウッド映画業界を駆け回るビジネスマン、
週末はゴルフと執筆活動に励むゴルフライター。

ヒデ・スギヤマ

vol.13 プロゴルファー大山志保

大山志保さん。
日本の女子プロの中でも、トッププレイヤーの一人として活躍されています。
特に今年は好調のようで、この夏は2週連続で優勝を果たし、
3週連続の期待がかかるという大一番を迎えました。
今年の8月のことです。
今回はその重要な試合、
“新キャタピラー三菱レディース”で起きた出来事に関して書いてみます。
トーナメント初日。
好調にラウンドを続けた彼女が12番まで来た時、
「頭の中が真っ白になり、どう対処していいのか全く分らなかった」
と後で告白(雑誌「アルバトロス・ビュー」より引用)するほどの衝撃を受けます。
それは、自分のバッグに入っているクラブの本数が、ルールの14本を越えていたのです。
一瞬のうちに、『ルール違反、大量の罰打付加、3週連続優勝は無理…』などのキーワードがぐるぐると頭の中を巡ったことでしょう。
競技委員を呼んで自らルール違反を申告し、規則どおり4打の罰則が与えられました。

3週連続優勝がかかっていたため、彼女に対する注目は抜群に高く、
なのに自分の不注意で優勝どころか予選通過も怪しくなったことに、
彼女は深いショックを受け自分を責めました。
しかしそこにはもう一人、彼女以上に落ち込んでいる女性がいたのです。
それはキャディさん。いつもゴルフ場のハウスキャディを指名する大山プロのパートナーは、
当然ここで働く一般のキャディでした。
キャディにしてみれば、クラブ本数の確認忘れなんて全く自分のドジ。
本人のショックもさぞかし辛い想いだったことでしょう。
翌日はキャディを辞退したい旨をゴルフ場に伝え、一度は受理されました。
そしてもしそのままだったなら、そのキャディは今後長きに渡り、
自分の不祥事に眠れぬ夜が続いたことでしょう。


でも、そこからの大山プロは素晴らしかった。
「全ては自分の責任です。明日も同じキャディさんでお願いします。予選通過に向けて二人でやり直させて下さい」
と伝えたのです。そしてクラブ側はその申し出を快諾しました。
さて翌日、二人の女性は必死で闘い、大山プロは見事に2アンダーでその日のプレーを終え、
合計1オーバーでギリギリ予選を通過したのでした。
見事に目標を達成した歓喜の二人… までは良かったのですが、
直後にそのキャディが倒れ、救急車で運ばれる騒ぎとなりました。
自分の不始末を責めて昨夜は一睡もできずに、
疲れきったままの真夏のラウンドで熱中症にやられたのです。
必死で看病する大山プロにとって、もう彼女は戦友のような存在だったことでしょう。

そして最終日、大山プロは6アンダーのベストスコアを出し、前日の48位タイから9位に急上昇。
初日の4打罰がなかったら、トップタイの成績だったのです。
そして翌週の“ヨネックス・レディース”でも見事に優勝。8月は4戦3勝という圧勝でした。
問題の試合も、罰打がなかったら優勝していたかも? 
でもゴルフを語る際に、“たられば”がいかに無粋であるかはよくおわかりでしょう。


彼女はルールを犯したから罰を受けた、従って9位という結果が彼女のあの週の成績なのです。
でも彼女は、その結果以上に多くの財産を得たように感じます。
失敗への潔さ、キャディを責めるのでなく見捨てるでもなく見事に救った才量、その後の集中力。
彼女は多くのことを学び、そして私は彼女のファンになりました。
大山プロのプレーやご尊顔を拝したことは無いのですが、
この出来事を通してとても好感の持てるゴルファーの1人として、
脳裏にしっかりと焼きついたのです。

以前にも書きましたが、このような心も技術も優れた日本人ゴルファー達が、
また米国の土俵に挑戦してくれる日が来ることを心待ちにしています。
何の心配もないですよ、大山さん。
貴方の技術と精神力、そして自我への厳しさは間違いなくワールドクラスです。
がんばれニッポン!

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