アメリカの子育てに関する法律

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アメリカでは子育てに関する法律や常識が日本と異なります。 なかでも児童虐待に関する見方はかなり厳しいので、よく理解しておきましょう。 また、アメリカの学校は自由というイメージですが、実際にはさまざまな校則が存在します。  
 
※このページは「ライトハウス 2024年春夏の増刊号」掲載の情報を基に作成・更新しています。

日本より厳しい児童虐待に対する認識

児童虐待には、肉体的、性的、精神的虐待、養育の拒否などがあります。多種多様な文化が共存するため、親子で一緒にお風呂に入るといった文化も性的虐待と見なされかねない点に気を付けなければいけません。
 
なかでも特に気を付けたいのが児童遺棄です。例えばカリフォルニア州では、6歳以下の子どもを12歳以上の監視がない状況で一人で車中に放置してはいけません(鍵が付いたまま、エンジンがかかったまま、またはその両方の場合や、子どもの健康や安全を重大な危険に晒す状況である場合)。また、緊急時の対応ができる年齢になるまでは、子どもだけで留守番をさせてはいけません(具体的に何歳までを「子ども」とするかは発育状況によっても異なるため、一概には言えません)。子どもが英語を話せない場合は、成長度合いにかかわらず、親の保護が必要です。
 
アメリカでは子どもに精神的・肉体的トラウマを残すような体罰を与えることは「しつけ/教育」ではなく、「虐待」と見なされます。人前で怒鳴ったり、子どもの前で親同士がけんかをしたりすることも心理的な威圧として虐待に含まれます。
 
なお、これらの虐待行為を知った場合は、警察や児童施設に通報(Childhelp National Child Abuse Hotline・☎1-800-422-4453)したほうが良いでしょう。また、医療、教育関係者、児童福祉関連施設の職員など多くの専門職種の人たちが、職務上虐待の疑いを感じたら通報するよう法律で義務付けられています。
 
通報を受けると、24時間以内にソーシャルワーカーが家庭を訪問し、調査が行われます。例えば、子どもをお店で大きな声で叱っただけで通報され、調査を受けるというのは、日本人の教育慣習からすると納得いかないかもしれません。しかし、アメリカでは些細な行為でも、疑わしき行為は早いうちに調査し、深刻な問題が起こる前に虐待の芽は摘み取る、という文化が根付いていることを理解しなければなりません。
 
調査の結果、子どもが危険にさらされている状況だと判断されると、保護され、両親は裁判所に出廷を命じられます。裁判で児童虐待の事実があったと判断された場合は、虐待した者は、裁判所の警告や指示に従い、裁判所の指定の場所でカウンセリングを受けます。児童虐待は家族法の下、親権を剥奪されることは稀ですが、犯罪法では、しっかりと罰せられます。
 
なお、近年、国際結婚の夫婦間で問題となっているのが子どもの連れ去りです。国境を越えて不法に連れ去られた子どもの返還や面会交流を確保するための「ハーグ条約」により、たとえ実子であっても共同親権を持つアメリカ人の配偶者の同意を得ず、日本人の親が日本に連れて帰ると「拉致」と見なされ、誘拐罪で国際指名手配される恐れがあります。特に別居中、離婚申請中の場合は、たとえ州外であってもこうした事情にも注意しましょう。

子どもの校則違反は保護者の責任に

学校に関する法律は、州の教育法に基づいて各学校区で指針が設けられ、それに沿って校則が決められています。校則は毎年見直され、年度の始まりには新しい校則のハンドブックなどが配られます。保護者は、校則や学校方針の通知には必ず確認のサインをします。サインをしたら、その内容に同意したことを意味しますので、子どもの校則違反は親の責任になります。
 
また、「ゼロ・トレランス」という生活指導方針も、日本とは大きく違うため注意が必要です。
 
同方針の骨子は、
①銃刀および武器になり得る物(例えば鉛筆削り用のナイフ)、その模倣品
②暴力、脅迫行為、反抗的な行為・態度
③薬物・タバコ・アルコール
の3つを学内から排除することです。
 
学校生活に不適切な服装(ギャングスタイルの服装など)、人種差別用語やその他不適切な表現の使用を校則違反とする学校もあります。校則で禁止されている物を友人からもらい、それを持っていただけでも違反となります。薬物に対しての校則も厳しく、常備薬や風邪薬でも届け出をしていなければ違法薬物とされることも。氏名や担当医の名前などを明記した薬を保護者が保健室に届けるなどの細かいルールがあります。
 
銃を模したキーホルダーまでもが違反(後に処分は撤回されましたが)とみなされることもあり、学校によっては厳しく取り締まられることもあります。
 
カリフォルニア州では、子どもが学校を欠席することに関して厳しい法律が設定されています。無断欠席をした子どもはもちろん、無断欠席を許した親も罰金や禁固刑になる可能性があるので注意しましょう。
 
校則を含めた現地校のシステムに関する情報、いじめに関する相談などは、日系の非営利団体、JERC日米教育サポートセンター(https://www.jerc.org・☎ 424-488-2009 / 月~ 金: 9am-5pm)が日本語で受け付けています。同センターでは、海外在住日本人子女と保護者に対する教育のサポートを中心に積極的な活動を行っているので、気軽に相談してみると良いでしょう。
 
監修/宮本ガン美紀子法律事務所(www.mikikomgunnlaw.com)

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