雇用によるグリーンカードの申請・取得

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雇用によるグリーンカード取得にかかる期間と手続き

瀧 恵之 弁護士

Q:私は現在、H-1Bビザで働いていますが、H-1Bビザは最長6年までですので、グリーンカードの申請を考えています。アメリカが不景気になって以来、グリーンカードの取得が困難になり、取得にかかる時間も非常に長くなったと聞きました。何が困難で、どれくらいの期間を必要とするのですか?

A:確かに、アメリカが不景気になってから、グリーンカードの発給プロセスに変化が見られます。雇用を通してグリーンカードを取得するプロセスは細かく分けて、①「規定給料の設定」、②「人材募集広告」、③「Labor Certificationの取得」、④「I-140の審査」、そして、⑤「I-485(あるいはConsular Processingを通して)の審査」の5つがあります。

グリーンカード取得までの各ステップ

①の「規定の給料の設定」は、今までにも行われていましたが、非常に短期間で取得可能でした。しかし、最近になってシステムが変更され、このプロセスだけで約2カ月を要するようになりました。また、規定の給料の額が、以前よりも高く設定されています。ここで問題となるのが、スポンサーとなる会社が、規定の給料を支払えるだけの経済的能力があることを、④の「I-140の申請(審査)」の際に立証しなければならないということです。これに関しては、後述します。
 
給料の設定が終わった後は、②「人材募集広告」を約1カ月間行い、さらにその人材募集広告の反応を見るために1カ月間待ちます。
 
③の「Labor Certification」のプロセスですが、最近では以前に比べてかなり遅れ気味になっています。Audit(質問状)の来ないケースでも、Labor Certificationを取得するのに、約8~10カ月を要しています。また、Auditを受けたケースでは、Auditのプロセスだけで1年以上を要しています。
 
④の「I-140の審査」は、先述したように、スポンサー企業が労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるかどうかが、その審査の主な対象となります。それは、以下の3つのステップで判断されます。
 
第1に、申請者が、現在その会社で(H-1Bビザ等を持って)働いている場合、既に規定の給料が支払われているかどうかです。もし規定の給料が既に支払われている場合は、仮にその会社が赤字であったとしても、認可される可能性は大です。
第2に、もし申請者の給料が規定の給料に満たない、あるいは、現在その申請者が働いていないような場合は、会社の純利益が規定の給料額以上あるかどうかが判断の対象となります。もし規定に達していれば認可される可能性は大です。逆に規定に満たない場合(例えば、会社が赤字のような場合)は、この判断基準をパスできません。
第3に、現在の給料も会社の純利益も規定に達していなかったとしても、規定の給与を支払えるだけの会社の資産があれば、基準をパスすることが可能です。これは、会社の資産表(貸借対照表)から判断されます。
 
また、これ以外にも問題を回避するための手段は多々あります。それらは会社の形態、納税申告のタイプにより異なるため、申請を開始する際に専門の弁護士に相談することをおすすめします。

グリーンカード取得までの時間に差が出るEB-3とEB-2の違い

④の「I-140の審査」を乗り切れば、最後のプロセスである⑤「I-485(あるいはConsular Processingを通して)の審査」を残すだけとなります。ここで問題となるのは、「Priority Date(優先日)」です。
 
H-1Bビザからのグリーンカード取得には、「EB-2」と「EB-3」の2つのカテゴリーがあります。EB-2は、修士号を持っているか、学士号+5年の職務経験のある人が該当します。EB-3は、学士号を持っているか、2年の職務経験のある人がその対象となります。EB-2に該当する人は、現在のところ、このPriority Dateに左右されることがなく、先述のAuditを受けなければ、約2年から2年半でグリーンカードを取得できます。
 
しかしながらEB-3の場合には、申請者のPriority Dateが回って来る(Currentになる)まで、I-485の申請を待たなければなりません。Priority Dateは、③「LaborCertification取得」の際に決められます。現在のPriority Dateは、http://travel.state.gov/visa/bulletin/bulletin_1360.htmlにて確認できます。
 
ちなみに2010年7月付けのPriority Dateは、2003年8月15日です。ただし、今申請を開始しても7年かかるという訳ではありません。現在1カ月で2カ月分、Priority Dateは進んでいます。このペースが保たれれば(これより速くなったり、遅くなる可能性があります)、Priority Date待ちで、約3年半かかるということになります。
 
(2010年7月1日号掲載)

グリーンカードの申請で取得までの時間短縮の動き

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在アメリカの会社でH-1Bビザで働いています。グリーンカード(永住権)の申請を考えているのですが、現在、申請から取得までに非常に時間がかかっていると聞いています。これから申請を開始すると、取得まで何年も待たされることになるのでしょうか?

A:あなたのような人に、朗報があります。
 
アメリカが不景気になって以来、グリーンカードの手続きは、非常に遅くなりました。Labor Certificationの取得(労働局での審査)に1年以上かかるようになり、EB-3(後述)ですと、「Priority Date(優先日)」が著しく逆戻りし、その後も1カ月で2カ月分しか申請処理が進まないといった状況下にありました。しかしながら、ここ2カ月で変化がありました。Labor Certificationが、ほとんどのケースで6カ月以内、早いケースですと2カ月ほどで認可を受けています。また、EB-3のPriority Dateに関しても、6月までは1カ月間で2カ月ほどしか進んでいなかったのが、7月から8月に掛けて、一気に10カ月も進みました。
 
以下、これらの手続きについて、もう少し詳しくご説明しましょう。
 
グリーンカードの申請にあたって、まずあなたが最初に判断しないといけないのは、EB-2(第2優先)で行うか、EB-3(第3優先)で行うかです。一般的に、EB-2での申請の基本的条件としては、修士号(Master)以上の学位を持っているか、そうでない場合は、学士号(Bachelor)に加え、5年以上の職歴があることが必要です。
これに比べ、EB-3は、学士号を持っているか、そうでない場合は、2年以上の職歴があれば良いとされています。
 
仮に修士号以上の学位を持っているか、学士号に加え、5年以上の職歴があったとしても、あなたの取得した修士号、または学士号が何の専攻か、5年間の職歴も、どこで、どのような職務に従事したかということが問題となります。専攻や職歴が、スポンサーとなる会社の職場で活かされるものでなければならないのです。
 
EB-2のPriority Dateは、ここ長い間、常に”Current”となっていますから、もしあなたがこのカテゴリーに該当すれば、Priority Dateによって手続きを足止めされることはありません。Priority Dateに左右されることなく、手続きを進められるので、申請開始から約1年半で、グリーンカードを取得することができます。また、仮にあなたがEB-2のカテゴリーに該当せず、EB-3のカテゴリーで申請を行ったとしても、いつ就労許可が下りるかわからない、また、最終的にグリーンカードを取得できるのも気の遠くなるような先の話、といった状況が、先述したようにここ2カ月ほどで、大幅に改善されてきています。

改善の動きが出たグリーンカードの申請状況

グリーンカードの申請には、「Prevailing Wage(規定の給与)」の設定(これに現在約2カ月かかっています)、そして「募集広告」(同約2カ月)を終えた後、労働局に「Labor Certificationの申請」を行います。この段階では、前述のように従来は1年以上を要していたのが、現在では半年以内、早いケースで2カ月程度で認可が得られています。
 
労働局での審査で認可され、Labor Certificationが下りた後は、Labor Certificationを添付し、移民局へ永住権の申請書を提出します。この移民局でのプロセスは、大きく2つに分かれます。1つ目は、「書式I-140の申請」です。これは、スポンサーである会社が、当該従業員(申請者)に労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるかどうかが、審査の主な対象とされます。次に、EB-3のカテゴリーでグリーンカードを申請する場合の最大の問題となる、Priority Dateが待っています。EB-3における申請では、このPriority DateがCurrentにならない限り、申請の最終段階に進むことができません。
 
この段階においても、今まで1カ月につき2カ月しかPriority Dateが進まないという状況が、突然10カ月も進みました。もちろん今後、どのような変化が見られるか、大いに注目されるところです。いずれにせよ、アメリカが不景気に入り、グリーンカードの申請状況が著しく悪化して以来初めての大きな改善ですので、多くの申請者にとって朗報と言えるでしょう。
 
(2010年8月1日号掲載)

グリーンカード申請中の労働とアメリカへの出入国について気を付けるべき点は?

吉原 今日子 弁護士

Q:グリーンカード(永住権)を申請中で、先月「労働許可」が取れました。1度日本に帰国しようと思っていますが、何か気を付けなければいけない点はありますか?ちなみに労働ビザ(Hビザ)は切れていて、3年間の延長申請を行っている最中です。

A:グリーンカードの申請中に取れる「労働許可」には、2通りあります。「Labor Certification」と「Employment Authorization」です。これらは、グリーンカード申請者の間でしばしば混同して考えられ、誤解を生む原因となっています。1つ目の「Labor Certification」は、グリーンカード申請者の間では「労働許可」と呼ばれていますが、「労働認可証」と訳すのが妥当かもしれません。
 
Labor Certificationは、グリーンカード申請の第1ステップです。労働局(Department of Labor)が発行するもので、移民局にグリーンカードの申請を行う前に取得すべき書類に過ぎません。ですから、これによって就労資格を得ることはできません。

「I-140」と「I-485」の申請が必要

グリーンカード取得のプロセスでは、労働局でLabor Certificationを取得後、移民局にて「I-140」と「I-485」の2つの申請を行う必要があります。これらをおおまかに区分すると、I-140は「雇用主の審査」、I-485は「申請者個人の審査」が行われるプロセスと言えます。
 
I-140の申請は、Labor Certification取得後すぐに開始できますが、I-485は申請者の「Priority Date(優先日)」が来た時点で申請可能となります。ちなみに現在(2013年7月時点)、グリーンカードの審査カテゴリーにおける「第3優先」の場合は、2009年1月1日以前のPriority Dateを保持している人が、I-485の申請を行うことができます。

出入国できるか否かはビザステータスが関係

I-485の申請を行う以前の段階でアメリカからの出入国が可能かどうかは、グリーンカードの申請とは関係がなく、ビザステータスがどうなっているかによります。もしあなたが取得した「労働許可」がEmployment Authorizationではなく、Labor Certification である場合、あなたはビザの延長申請を行っている最中ですので、通常はこの段階でのアメリカからの出入国はおすすめできません。ビザ延長の手続きが完了するまでアメリカ国内で待つか、急を要する場合には「プレミアムプロセス(Premium Processing)」を申請し、ビザの延長手続きを早めることをおすすめします。
 
プレミアムプロセス(Premium Processing)は、移民局に1225ドル支払うことにより、15日以内に結果を得ることができます。緊急の場合は、アメリカ出国後、日本国内でビザ延長手続きが完了するのを待ち、日本のアメリカ大使館・領事館でビザを取得して、アメリカに帰国する方法もあります。
 
I-485の申請をアメリカ国内ではなく、日本のアメリカ大使館で行おうとしている場合(Consular Processing)は、日本での面接までにアメリカからの出入国が可能かどうかは、グリーンカードの申請プロセスとは関係ありません。ビザステータスが現在どうなっているかが問題となるので、この場合も同様に前出の選択肢の中から選ぶことになります。
 
一方、Employment Authorization は、I-485 と共に申請を行い、申請後約2、3カ月で取得できます。これを取得すれば、現在働けないステータスの方も就労が可能となります。取得したのがEmployment Authorization の場合、アメリカから出入国できるかどうかはビザステータスとは関係なく、「再入国許可(Advance Parole)」を取得しているかどうかが問題になります。Advance Parole は、Employment Authorizationと同様、I-485と共に申請し、約3、4カ月で取得できます。これによりI-485の申請中、アメリカからの出入国が可能になります。現在、I-485に加えてEmployment AuthorizationとAdvance Paroleを同時に申請すると、Employment AuthorizationとAdvance Paroleの両方の用途を1枚で兼ねるカードが送られてきます。このカードの取得後であれば、現在ビザスタンプが切れている場合でも、出入国が可能になります。

H-1Bビザ保持者は許可を受け、出入国可能

H-1B、L-1ビザ保持者を除いては、Advance Parole申請中のアメリカの出入国は認められていないため、I-485が却下されてしまいます。これは、H-1B、L-1の場合、アメリカでの短期就労と永住の意思を持つ(Dural Intent)ことが認められているからです。あなたの場合、H-1B保持者ですので、Advance Parole申請中でも、H-1Bの移民局での認可を取り、H-1Bの大使館面接を受ければ、アメリカの出入国が可能です。
 
(2013年7月16日号掲載)

グリーンカードを取得した後に気を付けるべきことは?

吉原 今日子 弁護士

Q:私は会社を通してグリーンカード(永住権)を取得しました。グリーンカードの取り扱いなどについて、今後気を付けるべきことはありますか?

A:グリーンカードを取得すると出入国に制限がなく、職業選択も自由で、米国内の滞在期間に制限がありません。米国民との婚姻を通して取得する「条件付きグリーンカード」の場合を除いて、通常、グリーンカードの有効期限は10年です。しかし、更新することができるので、実質的に永住が可能となります。さらに5年間、納税等の基本的義務を果たし、犯罪歴などもなければ、米国市民権を申請することもできます(米国民との婚姻を通してグリーンカードを取得した場合は、3年後に市民権の申請が可能)。
※詳細は「気になるメリット&デメリットどう違う?市民権vs永住権」にまとめています。
 
グリーンカードを取得することにより、全世界の所得が米国での課税対象となります。しかし、日米間の様に「相互租税条約」を結んでいる国との間では、対象国で課税されていれば、米国では免税、または減税となります。米国では、納税者は基本的に確定申告(タックスリターン)を行います。企業に勤務する人の場合、日本の源泉徴収と同じ形態で納税するケースがほとんどです。
 
それ以外に、グリーンカード保持者が18~26歳の男子の場合は、兵役義務「Selective Service」に登録しなければなりません)が発生します。兵役の義務を拒否することはできますが、拒否することによって、将来の市民権申請に制限が出てきます。
 
また移民法では、米国に在留する外国人は、常にグリーンカード、もしくはその受領書を携帯する義務があるとしています。その義務を怠った場合、軽犯罪とされ、100ドル未満の罰金、または/および30日未満の禁固刑が課されます。
 
これは、長い間存在してきた法律ですが、取り締まられてきませんでした。しかし、最近、この法律が執行され始めているという現状が、明らかになってきています。ですからグリーンカード保持者は、常にカードを携帯しなければなりません。

米国外での長期滞在にはRe-entry Permitを取得

グリーンカード取得後に、もし6カ月以上米国を離れる場合、「Re-entry Permit」を申請する必要があります。これは、長期にわたり米国外に滞在しても、再度米国に戻る意志があることを証明することにより、グリーンカードを維持し続けられるシステムです。Re-entry Permitがない状態でグリーンカードを維持するには、連続180日以上米国外に滞在しないことが、1つの条件として挙げられます。また、180日以内であっても、長期にわたり出入国を継続し、米国外での滞在期間が過去5年間で合計2年半以上になると、永住の意志を放棄したと見なされ、グリーンカードを失う可能性があります。
 
例えば、日本に連続して5カ月間滞在し、米国に戻り1週間だけ滞在し、再度日本に5カ月滞在するというようなことを繰り返した場合、米国入国の際、入国審査でグリーンカードを取り上げられることになります。入国審査官にグリーンカードを取り上げられた際、コンテスト(異議申し立て)を行うかどうか聞かれます。行わない場合は、一般の観光者と同じように観光のステータスで入国が許可され、最高90日までの滞在資格が与えられます。
 
異議申し立てを行う場合は、移民局の裁判所への出頭日をその場で知らされます。裁判では、米国永住の意志があるかどうかが焦点となり、この意志がないと判断されると、グリーンカードを失うことになります。永住の意志の確認では、客観的な証拠(例えば、米国に会社を持っていて、米国民の従業員が多数いるなど)が吟味されます。そして、その判断基準は極めて厳しいと理解した方が良いでしょう。

一方、Re-entry Permitを申請した場合、1回の申請で最長2年間、グリーンカードを維持しながら米国外に滞在できます。その間、米国への出入国は自由にできます。2年以上、米国外に滞在する場合は、いったん2年以内に米国に戻り、滞在中に再度Re-entry Permitを申請します。2度目の申請までは、2年間のRe-entry Permitを取得できますが、3度目以降は1年間のみとなります。
 
ここで気を付けていただきたいのは、Re-entry Permit取得後、米国を2年間離れると、その後、市民権を申請することができないということです。なぜなら、市民権申請の条件として、過去5年間に連続して180日以上米国外に滞在していないこと、および過去5年間のうち、合計半分以上の期間、米国内に滞在していることと、規定されているからです。
 
(2011年3月16日掲載)

まもなく21歳になる娘と一緒にグリーンカードを取得するには?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、日本の大学を卒業後、7年間働いた後にアメリカに来ました。現在、Eビザを保持し、会社を通してグリーンカードを申請しています。私の場合、グリーンカードは1年半程で取得可能と聞いていますが、私にはアメリカの大学に通う長女がいて、もうすぐ21歳になります。私がグリーンカードを取得する前、娘が21歳の誕生日を迎えてしまうと、私と一緒にグリーンカードが取れないだけでなく、その時点でEビザの資格がなくなり、学生ビザに切り替えないといけないと聞いています。そうすると学費も上がるので、何とか一緒にグリーンカードを取りたいと思います。何か良い方法はありますか?

A:4年制大学を卒業し、5年以上の職歴(あるいは、職歴がなくとも修士号以上を取得)があれば、グリーンカードの申請における第2優先のカテゴリーに属し、通常よりも遥かに短い期間で取得することができます。仮にあなたのお嬢さんの21歳の誕生日までにグリーンカードが取得できない場合、お嬢さんが「Child Protection Act」の適用を受けることができるかどうかが大きな問題となります。この点について、以下に述べさせていただきます。
 
雇用を通してグリーンカードを申請する場合、一般的にその第1段階として、労働局に「Prevailing Wage(申請職種における平均的な給与)」がいくらであるか確認した後、人材募集広告を出します。そして、労働局に「労働認可証(Labor Certification)」の申請を行い、その認可を受ける必要があります。この最初の手続きには、通常Prevailing Wageの要請から人材募集広告完了まで約3カ月、労働局の審査に約3~5カ月、合計で平均約7カ月を要しています(2011年3月時点)。ただし、労働局からの監査(Audit)を受けてしまった場合(これは、一般的にランダムに行われる場合がほとんどです)には、さらに10カ月を要することになります。
 
第2段階では、スポンサーである会社が、当該従業員(申請者)に労働局が定める規定の給料を払うだけの経済的能力があるかどうかが審査されます。この申請は、通常I-140による申請と呼ばれます。最後に第3段階として、申請者自身が条件を満たしているか、犯罪歴や不法滞在歴がないかなどが審査されます。この申請は、通常I-485による申請と呼ばれます。

労働認可証の取得時期が大きな鍵

あなたの場合は、第2優先のカテゴリーでの申請が可能なため、前記の第2段階の申請(I-140)と、第3段階の申請(I-485)を、同時に移民局に行うことができます。Child Protection Actでは、I-485の申請を行った時点で、子供が21歳に達していなければ、その後、グリーンカードの取得までにどれだけ時間がかかっても、子供も同時に取得できると規定しています。従って、I-485の申請が認可され、あなたがグリーンカードを取得した時点で、お嬢さんが21歳の誕生日を既に迎えていたとしても同時にグリーンカードを取得することができるわけです。さらに、I-485の申請が何らかの理由で却下され、その後、不服の申し立て(Motion to reopen、Motion to reconsider)、あるいは異議の申し立て(Appeal)を行い、その後、認可を勝ち取ったような場合であっても、Child Protection Actが適用されるとされています。
 
従って今回の場合、いつ前記のLabor Certificationを取得できるかが重要な鍵になります。労働局からの監査を受けない場合ですと、前述したように、現在、平均約7カ月間でLabor Certificationの手続きを終了することができる一方、監査を受けてしまうと、合計で約17カ月間かかることになります。あなたがこの監査を受けなければ、かなりの可能性でお嬢さんは、一緒にグリーンカードを取得することができるでしょう。
 
しかしながら、万一監査にかかってしまい、Labor Certificationが認可された時点で、お嬢さんが21歳の誕生日を迎えてしまっていれば、ご一緒にグリーンカードを取得することはできません。その場合、家族申請、あるいは独自に申請することを考えなくてはなりません。そこで、現時点でまだLabor Certificationの申請に到っていない段階にあるのならば(監査を受けるか否かは、特殊な場合を除いてあなた自身がコントロールできないことであるとしても)、Labor Certification申請までの時間をできる限り無駄にしないように、Prevailing Wageのリクエストや人材募集広告等の手続きを、円滑に進めておくことをおすすめします。

永住権(グリーンカード)申請の「I-140」手続きに「プレミアムプロセス」適用開始

吉原 今日子 弁護士

Q:私はH-1B ビザを取得しており、現在アメリカでグリーンカード申請中です。最近、「I-140」の手続きに「プレミアムプロセス」が適用されたと聞きました。これによって私のビザ、グリーンカード取得にどのような利点があるでしょうか。教えてください。

A:雇用を通してのグリーンカード申請の場合、大きく分けて3つのステップがあります。第1ステップは、「Labor Certification」(労働局の審査-「PERM」と呼ばれるもの)です。これは、アメリカ国内に、あなたが申請している職務を果たせるアメリカ人がいないことを証明するための審査です。第2ステップの「I-140」では、主にスポンサー会社が、労働局で定められた給料を支払うことができるかを審査します。第3ステップ「I-485 / Consular Processing」は、申請者自身が条件を満たしているかの審査です。
 
今回、法改正(2009年6月29日より施行)により、第2ステップに「プレミアムプロセス」が適用されるようになりました。これにより、通常約1年間かかっていたI-140の審査結果を、わずか15日間で知ることができます。この法改正により、グリーンカード取得においてどのような変化が出るのかは、グリーンカード申請のカテゴリー、申請方法によって変わります。

「EB-3」カテゴリーの申請者への影響

EB-3(4年制大学卒か、2年間の訓練を必要とする職務に就いている場合)で申請している人は、第2ステップの申請が終わっても、自分の「Priority Date」が回って来るまで、第3ステップに入ることはできません。従って、第2ステップの審査が早く終わっても、グリーンカード取得期間が短縮されるわけではありません。
 
しかし、多くのグリーンカード申請の却下原因が、このI-140の審査にあります。理由としては、スポンサー会社が労働局で定められた給料を申請者に払うことができないと判断される場合が多いです。ですから、I-140の結果を早く知ることで、現状のスポンサー会社で申請を続けるか、別のスポンサー会社を探した方が良いのかの判断が早くできます。

「EB-2」カテゴリーの申請者への影響

「EB-2」カテゴリー(4年制大学を卒業し、スポンサーである雇用主の業務に関連した職務に5年以上従事しているか、修士号を取得している場合)でのグリーンカード申請には、第3ステップをアメリカ国内で申請する方法(I-485)と、日本で申請する方法(Consular Processing)があります。アメリカ国内で申請する場合、I-140とI-485 を同時に行えます。この場合、I-140 の結果を早く知ることができても、I-485 の結果が出なければグリーンカードを早く取得することはできません。ですから、米国内で申請している人にとってのベネフィットは、EB-3で申請している人の場合と、ほとんど同じです。
 
しかし、第3ステップをI-485 ではなく、Consular Processing で行う人にとっては、グリーンカード取得の時間がかなり短縮できると考えられます。日本で申請をする場合、第2ステップ(I-140)の申請が終わった後、第3ステップの審査が日本で行われ、審査終了後、日本での面接後、グリーンカードが届きます。ですから、通常約1年かかるI-140の審査を、15日間で終わらせることによって、1年近くグリーンカード取得時間を縮めることができるということになります。

法改正によるH-1Bビザへの影響は?

H-1Bビザの有効期限は、通常最長6年間です。しかし、H-1Bビザの期限が切れる1年前からグリーンカード申請(第1ステップ)を始めていれば、期限が切れた後も1年ごとの延長が可能です。また、H-1Bビザの期限が切れてしまう前に、第2ステップ(I-140)の審査が終わり、認可を受けていれば、H-1Bビザの有効期限を3年間延長することができます。
 
以前は、H-1B ビザの6年間の期限が切れる6カ月前からでなければ、I-140でプレミアムプロセスを行うことはできませんでした。しかし、今回からは、それに関係なくI-140でプレミアムプロセスを行うことが可能です。ですから、H-1Bビザの失効期限まで6カ月以上あっても、3年ごとの延長が可能になります。 グリーンカード申請カテゴリー、申請方法によって、法改正の影響は違ってきます。また、H-1Bビザの延長をする時点で、期間があとどれくらい余っているかによっても違ってきます。ですから、現在の状況を弁護士と相談され、プレミアムプロセスを利用した方が良いのかどうか、判断してもらった方がいいでしょう。
 
(2009年8月16日号掲載)

PERM施行開始から約3年、雇用を通じてのグリーンカード申請の状況

KEVIN LEVINE 弁護士

永住権(グリーンカード)の取得プロセス

PERM は永住権(グリーンカード)の取得プロセスを早める目的でアメリカ労働省により2005年の3月に施行されたプロセスで、雇用を通じての永住権申請における労働認可(Labor Certification)の手続き期間を短くするというものです。現在、労働省では大量の申請を受領しており、幸運にも申請が下りている人もいますが、その後の過程で “優先日(Priority Date)”と“未処理残留数(Quota Backlogs)”で問題が生じています。
 
アメリカの移民法では毎年度(年度は10月から翌年の9月まで)、グリーンカードの発給数をすべてのビザカテゴリーごとに定めています。さらに雇用を通じてグリーンカード権を申請する場合、雇用主、国などにより、EB-1(第1優先枠)、EB-2(第2優先枠)、EB-3(第3優先枠)といったカテゴリーに分けられます。特定のビザカテゴリー、もしくは国籍について、発給数の制限を越えてしまう場合、ウェイティングリストを作り、申請がファイルされた日により優先順位をつけ、ケースの手続きが進められます。この日付が“優先日”と呼ばれるもので、ほとんどのケースの申請に大きく影響するとても重要なものです。なお、この日付は雇用を通じた申請の場合、労働認可が労働局でファイルされる日と同じ日です。
 
永住権を取得するためには、ビザナンバーが有効にならなければなりません。これを優先日が有効(Current)になったと言い、自分の優先日より古い優先日を持つ人が未処理で残っているうちは順番が回ってきません。現在有効になっている優先日は、アメリカ国務省が毎月発表する公報Visa Bulletin でわかります。2008年2月付のVisa Bulletinによると、現在、有効になっているEB-3の優先日は2002年11月1日となっています。また、EB-1、EB-2 のケースは現在の優先日が有効になっています。つまり、古い優先日のケースで未処理のものはないということです。しかし、これのカテゴリーも近い将来、状況が変わる可能性があります。
 
なお、EB-3 はEmployment-Based Third Preference の略で、Skilled Worker と呼ばれるカテゴリーです。これにあてはまるのは専門職、もしくは技術を有する労働者で、学士号を持っているか2年以上の就労の経験がある者。特に寿司シェフやH-1B ビザで働いている人がこのカテゴリーに該当します。 また、EB-2 はEmployment-Based Second Preference の略で、該当するのは修士号や博士号を持つ専門家です。EB-2 かどうかを決定する学位の条件については、申請者がどんな学位を持っているかではなく、雇用される企業のジョブポジションにおける必要条件によります。さらに、最低学士号を必要とする仕事でも、責任を伴った5年の経験があれば、修士号のレベルとみなされ、EB-2 に該当すると認められます。
 
(2008年1月16日号掲載)

アメリカグリーンカードについて、雇用ベースの取得など

KEVIN LEVINE 弁護士

Q:雇用を通してグリーンカードを申請しています。PERM導入前に労働認可の手続を始めたのですが、なかなか認可が下りません。また、優先日についても現状を教えてください。

A:PERM(Permanent Foreign Labor Certification Program)は、適当なアメリカ人労働者が見つからない場合に、雇用主が外国人労働者を雇うことができるプログラムです。このプログラムは、迅速かつ確実に実行するための改善策として、2005年3月28日に施行されました。主な改善点は、IT技術の発展を利用した申請プロセスの再構築および合理化と、州と連邦の重複する役割の削除です。この整理統合されたプロセスでは、申請上問題のないケースの場合、以前は何カ月、時には何年もかかっていたのが、45日から60日でプロセス可能になりました。
 
また、このプログラムが施行され始めた当初は、多くのコンピューター上の問題がありましたが、2006年の始め頃から効率的に動き始めるようになりました。PERMが導入され始めた頃には、約36万2000件もの未処理の労働認可申請書が、山積みにされたままになっていました。政府は、ダラスとフィラデルフィアにバックログ(未処理ケース)の解消のためだけに、バックログセンターを設立しました。2007年1月25日現在、バックログは67パーセント減少し、9月30日までには、すべて解消できる見通しです。
 
グリーンカードを雇用を通して取得するには、2段階のプロセスがあることを理解するのが重要です。労働認可のケースが政府に申請された日付、「優先日(Priority Date)」が設けられており、この優先日が有効にならなければ、アメリカでグリーンカードは取得できません。現在、米国修士号、もしくは学士号に加え5年以上の職務経験が必要とされる職業に関しては、この優先日が10月に再び有効になると思われます。ただし、専門職のカテゴリー(学士号保持者または2年以上の就労経験者)は、有効になるのにたいてい2、3年かかりますが、予測をするのは難しいことです。このため、移民法改正の議論の際に、再び議会が雇用を通したグリーンカード申請カテゴリーの発給ビザ数を増やすことが、重要なポイントとなります。
 
(2007年8月16日号掲載)

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