国際結婚における子どもの国籍と永住権取得

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国際結婚における子どもの国籍と永住権取得

吉原 今日子 弁護士

Q:私はアメリカ人の男性と国際結婚して、永住権を取得しました。現在妊娠中で、主人の仕事の関係上しばらく日本に滞在することになりました。その間に、日本で出産しようと思いますが、子どもには将来的に日本か米国籍を選ばせてあげたいと思っています。日本で生まれた子どもに米国籍を取らせることは可能でしょか?

A:まず、各国が定める国籍法には「血統主義」と「出生地主義」の2種類があります。血統主義とは、日本のように国籍取得においてどちらかの親の国籍が子どもの国籍となるものです。一方、出生地主義とは、親の国籍にかかわらず、自国で生まれた子は自国民とします。アメリカでは、後者の出生地主義を取り入れています。また、アメリカの法律には、重国籍を持つアメリカ人や、子どもの時に第2の国籍を取得したアメリカ人に対して、成人後にどちらかの国籍を選択しなければならないという事項は言及されていません。日本では、20歳未満で二重国籍になった場合は22歳に達するまでに、また20歳以上で二重国籍になった場合はその時点から2年以内に、いずれかの国籍を選択しなければなりません。この期限内に国籍を選択しなかった場合は、法務大臣から国籍選択の催告を受け、場合によっては日本国籍を失うこともあり得ます。

5年以上居住していれば子どもの米国籍申請が可能

アメリカ、アメリカンサモア、スウェイン諸島以外の場所で、アメリカ人とアメリカ人以外の親から、1986年11月14日以降に生まれた子どもが米国外国籍と米国籍を同時に所有するためには、米国籍を持つ親が子どもの出生前に最低5年間はアメリカに居住していたという条件を満たすことが必要です。その5年間のうち最低2年間は、その親が14歳以上の期間でなければいけません。5年以上米国内に居住をしていたと証明するには、アメリカの税金申告書、雇用証明書、アパートの賃貸契約書、米国籍保持者本人による宣誓供述書などを入手します。
 
上記の「居住」とは、住民としてアメリカに居ただけではなく、実際に米国内に留まった期間を意味します。つまり、旅行を含め、米国外に滞在した期間はアメリカに実際に居た期間とは認められません。証拠として古いパスポートの提示を求められる場合もありますが、提出が不可能の場合は他の証明書が必要になります。
 
ただし、米国外に居たとしても、米軍や米国政府関係の職務で海外に勤務していたことが書類によって証明できる場合には、子どもに国籍を与える目的において、その期間はアメリカに居住していた期間として計算されます。米軍、または米国政府職員の扶養家族も同様に、実際は米国外に居た期間も居住期間とみなされます。また、親子関係を示すためには、子どもの出生届け記載事項証明書、米国籍を保持する親の米国パスポート、両親の結婚証明書、過去の結婚の無効証明書(離婚証明書や死亡証明書など)を用意する必要があります。
 
以上の条件を満たしていれば、アメリカ人の夫が日本にいても、お子さんに市民権を取らせることはできます。御主人が5年以上アメリカに居住していた証明を移民局に提出できれば、子どもに米国籍を取らせることができます。

米国外出産した子どもの渡米と米国パスポート申請

米国永住権保持者の母親が一時的に日本へ帰国していて、その間に出産した場合でも、次の条件が満たされれば、子どもは日本のパスポートを使い無査証で渡米が可能です。
 
①子どものアメリカへの入国が生後2年以内
②出生後の入国が親同伴
③その親のアメリカへの再入国が永住権保持者として子どもの出生後、初めて。
 
日本で子どもに米国パスポートを取得させるには、まず在日アメリカ大使館でパスポート手続きのための予約を取ります。16歳未満の子どもの手続きには、両親が一緒に大使館に行く必要があります。片親が一緒に行けない場合は、その親による未成年者のパスポート申請同意書を提出しなければいけません。
 
提出書類の一つに米国籍の証明書がありますが、米国大使館または米国領事館が発行するアメリカの出生証明書、「Consular Report of Birth Abroad(領事による国外出生記録)」がそれに当たります。
 
アメリカのパスポートに記載される名前には、戸籍と異なる名前を入れることができます。例えば、戸籍上は母親の名字になっていて、アメリカ人の父親の名字もパスポートに加えたい場合は「Affidavit Of Child’s Name(子どもの名前に関する宣誓供述書)」を提出します。アメリカのパスポートを取得できるのは、 面接を受けてから約2〜3週間後です。
 
(2014年6月16日号掲載)

アメリカ市民と国際結婚して子どもの永住権も取得する方法

吉原 今日子 弁護士

Q:アメリカ市民の男性と国際結婚し、永住権の申請をしようと思っています。私には2人の息子がいますが、息子たちも私と一緒に永住権が取れるのでしょうか?長男は現在19歳で、次男は10歳です。適切な申請方法があれば教えてください。

A:アメリカ市民が永住権のスポンサーとなる家族申請の場合、そのアメリカ市民が経済的に十分サポート可能な収入があることを証明する必要があります。移民局のガイドライン(2014 年4月現在)によると、生活保護支給の基準値の125%以上の収入が必要とされています。スポンサーのアメリカ市民に配偶者以外の扶養家族がいない場合、最低1 万9662 ドルの年収が必要です。扶養家族が増えると、年収額に1人当たり5075 ドルが上乗せされます。あなたの場合、相手の男性があなたとお子さん2人を経済的に支えることができる収入2万9812 ドルを得ている必要があります。
 
もしそのアメリカ市民に前述の経済能力がない場合、アメリカ市民、または永住権を持つ親、友人などを「ジョイントスポンサー」に付けることも可能です。
 
ただし、スポンサーまたはジョイントスポンサーは、永住権取得者が生活保護などの援助を受けた場合、それを返済する義務が出てきます。この義務は、永住権取得者が次の状況になるまで続きます。
 
①米国市民になる
②永住権を破棄し米国を離れる
③死亡する
④10年間(40 Quarters)納税する。
 
申請の手順ですが、「I-130」(Petition for Alien Relative)と「I-485」(Application to Register Permanent Residence or Adjust Status)という書類を移民局に提出します。申請から通常半年で、永住権を取ることが可能です。申請の際には、申請書、申請料の他に、出生証明書、健康診断書などを提出しなければなりません。書類を移民局に提出して約1カ月後には指紋採取通知がきます。この通知に記載されている日時に、移民局で指紋を取ることになります。また、申請後約2、3カ月で労働許可(Employment Authorization)と再入国許可(Advance Parole)が取得できます。
 
同じくらいのタイミングで移民局での面接に呼ばれますので、面接日には夫婦で出頭し、夫婦関係を証明する書類などを持参しなければなりません。これは、夫婦関係が偽装でないことを証明するためです。面接では、夫婦の出会いから結婚までの経過、夫婦生活についての質問がされます。認可されれば、永住権は数週間中に届きます。

子どもの年齢により変わる永住権の優先順位

連れ子の永住権も同時に取得したい場合、ご自身と相手の男性は子どもが18歳になるまでに結婚する必要があります。従って13歳の次男の永住権は、あなたと同時期に取得できますが、長男は19歳なので、あなたと同時に取得することはできません。ご自身の永住権を取得した後、長男の永住権をご自身がスポンサーすることになります。
 
家族を通して申請する場合に付けられる優先順位において、長男は第2優先A(Second Preference A – 永住権保持者の配偶者、または21歳未満の子ども)のカテゴリーに含まれます。優先順位付きの申請では、移民局に「I-130」 を提出後、申請書類の手続きが開始される日、つまり優先日(Priority Date)が回ってくるまで、審査を待たなければなりません。現在(2014年5月時点)の第2優先Aの優先日は、2013年9月8日です。従って、待ち時間は半年ですが、半年待っても優先日がくるかはわかりません。家族を通して申請される永住権には、毎年発行数が決まっているからです。その優先日は、毎月Department of State によって発表され、ウェブサイト(www.travel.state.gov/content/visas/english/lawand-policy/bulletin.html)で調べられます。長男は、優先順位がくるまで自分自身でビザを保有しなければなりません。学生であれば、「F-1」(Academic Student)ビザの申請が可能でしょう。
 
「養子縁組をすればいいのではないか?」と思われるかもしれません。しかし、アメリカ市民の養子として永住権を取得するには、子どもが16歳以下で、養父母と最低2年間は同居しなくてはなりません。もし、結婚や申請に時間がかかり、長男が永住権申請時に21歳を超えてしまった場合、長男は第2優先B(Second Preference B – 永住権保持者の21歳以上の未婚の子ども)の優先順位になります。第2優先Bの優先日は現時点で2007年2月1日ですので、待ち時間は約7年となっています。
 
最短期間であなたの長男が永住権を取得するには、彼が21歳になる前に「I-130」 を申請し、第2優先Aカテゴリーで永住権を申請することです。第2優先AとBでは、待ち時間がかなり違います。息子さんのためにも、ご自身の永住権申請を急がれた方がいいと思います。
 
(2014年5月16日号掲載)

米国民との国際結婚による永住権申請、子どもも一緒に取得できる?

吉原 今日子 弁護士

Q:私は日本在住の2児の母です。現在お付き合いしている米国籍の男性と国際結婚し、米国に移住しようと考えています。永住権は短期で取れると聞いていますが、子どものことが心配です。長女は現在18歳で、次女は12歳です。申請方法を教えてください。

A:米国市民が永住権のスポンサーとなる家族申請の場合、その米国市民が、経済的に十分サポート可能な収入があることを証明する必要があります。ガイドライン(2011 年7月現在)によると、生活保護が必要になる収入の125%以上の収入が必要とされています。スポンサーの米国市民に配偶者以外に扶養家族がいない場合、最低1万8387 ドルの年収が必要です。扶養家族が増えると、1人あたり年収額に4775ドルが上乗せされます。なお、米国市民にその経済能力がない場合、米国市民、または永住権を持つ親、友人などを、「ジョイントスポンサー」に付けることも可能です。
 
婚姻による永住権申請を日本で行う場合、申請から通常9カ月から1年ほどで取得できます。
 
まず、I-130という書類を米国の移民局に提出します。申請が認可されると、書類はナショナルビザセンターに送られ、審査後、ケースは日本の米国大使館に送られます。その後、申請者に面接日と必要書類のリストが送られて来ます。面接後、問題がなければ移民ビザが即日発行されます。ビザは6カ月間のみ有効ですので、期間内に米国へ渡航しなければなりません。

子どもの年齢により変わる永住権の優先順位

12歳の次女の永住権は、あなたと同時期に取得できます。しかし、長女は18歳を迎えていますので同時に取得することはできません。あなたが永住権を取得した後、長女の永住権をご自身がスポンサーすることになります。
 
長女は、永住権申請で第2優先A(Second Preference A̶永住権保持者の配偶者、または21歳未満の子ども)のカテゴリーに含まれます。第2優先の申請では、移民局にI-130を提出後、優先日(Priority Date)が回ってくるまで、審査を待たなければなりません。現在(2011年7月25日時点)の第2優先Aの優先日は、2008年7月22日です。従って、待ち時間は3年以上です。優先日は、毎月Departmentof State によって発表され、ウェブサイト(www.travel.state.gov/visa/frvi/bulletin/bulletin_4454.html)で調べられます。
 
移民局から娘さんの優先日が発表された時点で、娘さんが何らかのビザを保持して米国に滞在している場合、ステータスの変更(Adjustment of Status)を申請できます。申請後、約2~3カ月で、労働許可(Employment Authorization)と再入国許可(Advance Parole)が取得できます。 ステータス変更後、約4~6カ月で永住権を取得できます。
 
「では、養子縁組をすればいいのではないか?」と思われるかもしれません。しかし、米国市民の養子として永住権を取得するには、子どもが16歳以下で、養父母と最低2年間同居しなくてはなりません。
 
一番早く、家族全員で米国に渡る方法は、婚姻を通してではなく、ご自身がビザを取得することです。あなたがビザ(H-1B・L・Eビザなど)を取得すれば、18歳の長女は未成年者なので、扶養家族としてビザが取れます。しかし、長女の場合、21歳になるまでの3年間しか、あなたの傘下のビザを保持できません。
 
その後、米国市民の配偶者を通して永住権を取得したご自身をスポンサーとする場合、娘さんは第2優先B(Second Preference B – 永住権保持者の21歳以上の未婚の子ども)の優先順位になります。第2優先Bの優先日は、現時点で2000 年7月3日で、待ち時間は約10年となっています。21歳になった後、娘さんがご自身でビザを取得しなければ、永住権が取れるまでの期間、日本で待つことになります。
 
最短期間であなたの長女が永住権を取得するには、長女が21歳になる前にI-130を申請し、第2優先Aカテゴリーで永住権を申請することです。第2優先AとBでは、待ち時間がかなり違います。家族全員、一緒にアメリカで生活したいのであれば、長女は永住権が取れるまでのいずれかのタイミングで、何らかのビザ(学生、または就労ビザなど)を取得して、米国に滞在することになります。
 
(2011年8月16日号掲載)

国際結婚に際して子どもの国籍と永住権の問題

吉原 今日子 弁護士

Q:私は、アメリカ人の夫と結婚して日本に住んでいますが、できれば子どもには日本とアメリカ国籍を選ばせてあげたいと思っています。日本で生まれた子どもに、アメリカ国籍を取らせることは可能でしょうか?

A:世界には大まかに分けて、「血統主義」の国籍法の国と、「出生地主義」の国籍法の国があります。血統主義とは、国籍取得において、親のどちらかの国の国籍が子どもの国籍となります。一方、出生地主義とは、親がどこの国の国民であろうと、その国で生まれた子を自国民とするということです。アメリカは、出生地主義を取り入れています。
 
1984 年に改定された日本の国籍法では、従来あった、「国籍留保」制度を強化すると共に、「国籍選択」制度を新設しました。外国で出生したために重国籍者となった子どもは子どもの出生した日から3カ月以内に国籍留保の届けを行わないと日本国籍を失います。
 
そして、1986年11月14日以降にアメリカ、アメリカ領サモア、スウェイン諸島以外の場所で、アメリカ人と外国人の親から生まれた子どもは、アメリカ国籍を持つ親が、子の出生前に最低5年間(そのうち最低2年は14歳以上の時)アメリカに居住していたという条件を満たせば、アメリカ国籍も取得できます。米軍、米国政府の職務で海外に勤務していた場合は、書類によって証明できれば、その期間はアメリカに居たものとして計算されます。米軍、米国政府職員の扶養家族として海外に居た場合も同様です。
 
以上の条件を満たしていれば、アメリカ人の夫が日本にいても、お子さんにアメリカ国籍を取らせることはできます。

非嫡出子や再婚による永住権、国籍の取得について

では、もしアメリカ人との間に、非嫡出子がいた場合はどうでしょう。母親がアメリカ人で、アメリカ国外で出生した非嫡出子は、母親が子どもの出生前に連続して1年以上アメリカに居住したことがあれば、アメリカ国籍を取得できます。一方、アメリカ人の父親とアメリカ人ではない母親からアメリカ国外で生まれた非嫡出子は、アメリカ人の父親が子どもの出生前に連続して1年以上アメリカに居住したことがあり、さらに以下の条件を満たす場合には、アメリカ国籍を取得することができます。
 
父親が、子どもが18歳になるまで養育費を支払うと、宣誓供述する。それに加え、父親が子を認知したことを示す証明書、または居住地の法律で嫡出子とみなされる証明、もしくは子どもが18 歳になる前に、裁判所が子どもの父親であると認知しているという証明が必要になります。
 
以上の供述をすべて父親が、「Affidavit of Paternity Form」を使用して行います。場合によっては、親子関係を確認するためにDNA鑑定をするよう要求される場合があります。
 
これらの条件を満たしている場合、米国大使館にて手続きを行うことができます。その際、領事による海外出生報告書という書類を発行してもらいます。この書類は、アメリカの役所で発行される出生証明書と同じ効果を持ち、アメリカ国籍を証明する法的書類です。また、同時にアメリカのパスポートを申し込むことができます。
 
また、アメリカ人の夫と再婚してグリーンカード(永住権)を申請しようという場合に、日本人の前夫との間に未成年の子どもがいるというケースも考えてみましょう。日本人の前夫の子どもを持つ日本人女性が、アメリカ人と再婚し、永住権を申請する場合、母親と同時に子どもも永住権を取得することができます。児童市民権法の適用で、子どもが市民権を自動的に取得できる場合もあります。
 
子どもが16歳未満のうちに父親が養子手続きを完了させた場合、その時点から子どもは米国市民の子として自動的に市民権を取得したことになります。その場合、市民権の証明書を移民局を通して申請できますが、場合によっては面接もあり、さらに発行までに6カ月から1年近くかかってしまいます。
 
前記の条件を満たしていれば、通常のパスポート申込書に子どもの永住権、父親の市民権、養子関係を証明する関連書類などを追加して、パスポートを直接申し込むことが可能です。
 
(2009年12月16日号掲載)

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