アメリカで働く・学ぶ

アメリカで働く

研究とは人間の総合力が試される場。
独創性や行動力、長期的なビジョンも必要

物理学者 合田 圭介さんさんの場合

 UCLAで博士研究員として医療、防衛分野で研究開発に携わる
合田圭介さんをご紹介。国防総省や大手企業からの資金援助で研究開発を行う。
将来はこの経験を活かし、日米でビジネスを立ち上げたいと話す。

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ごうだ・けいすけ■札幌市生まれ。1998年に渡米。99年UCバークレーに編入、2001年学士課程を修了。MIT物理学科にて07年博士号取得。同年秋よりUCLA電気工学部の博士研究員。「Southern California Science Network@UCLA」(http://scsn.us)主宰。「うに倶楽部」(http://goda.bol.ucla.edu/uni)主宰。www.ee.ucla.edu/~goda

物理学は自然の根本を追究する学問

研究室のミーティングにて。研究員は世界中
から集まり、バックグラウンドもさまざま

 子供の頃から物を作るのが好きで、小学校高学年の頃は日本レゴ大会に参加し、10回以上優勝したことがあります。当時はレゴの種類が少なく、モーターなどの部品を自分で買ってきては加えて、宇宙基地や恐竜を作りました。
 物理に興味を抱いたのは、高校生の頃。物理を理解し、何かを自分で作りたいと思っていました。そこで早稲田大学の理工学部に進みましたが、科学で活躍している偉人は皆、留学していることを知り、最先端の研究をするためには海外に出た方がいい、言葉や文化に慣れるためにも早い方がいいと思い、早稲田を中退。シリコンバレーのコミュニティーカレッジに入りました。
 そこで1年、一般教養を履修後、UCバークレー物理学科の学士課程で学びました。いつか留学しようと思っていたので、日本でも英語の勉強には力を入れていましたが、やはり言葉の点で苦労しました。しかも、コミュニティーカレッジとは学ぶ内容も格段の差です。しかし、チューターとして他の学生に勉強を教えたりして英語を使う機会を増やし、勉学に励んだ結果、首席で卒業できました。
 物理というと抽象的で、高校の授業で学んだ複雑な数式を思い浮かべる人も少なくないと思いますが、物理学というのは古代ギリシャの自然科学に源があり、天体現象から生物現象まで幅広い範囲にわたる自然の根本を追究する学問です。物理学は自然科学すべての基礎ですから、その守備範囲は広く、さまざまな分野のシステムの根本を作っています。例えば、バイオテクノロジーや電気工学、また金融の世界など、物理学者はさまざまな分野で活躍しています。ですから、物理学者は工学的な知識に加え、各分野における知識も必要です。
 物理学者の仕事は、大きく2種類に分かれます。1つは探求型、もう1つは創造型。探求型では自然のわからない現象を探求し、解明します。創造型では自然法則を利用して人類に役立つものを創造します。“知の創造”と言っていいかもしれません。

使命感も大きい医療・防衛の研究開発

 科学でまだまだ解明されていない分野の1つは宇宙です。NASAに代表されるように、アメリカには財力もあり、宇宙物理学の歴史もあります。私はUCバークレー卒業後、物理学の最先端である宇宙物理を学ぼうと、MIT(マサチューセッツ工科大学)に進みました。そこでは、ブラックホールや中性子星を観測する観測機を作るプロジェクトに携わりました。この観測機は、実際にワシントン州とルイジアナ州で使われています。
 MITで博士号を取得し、カリフォルニア工科大学で研究滞在した後、UCLA電気工学学部のオプトエレクトロニクス研究室に博士研究員として就職しました。ここを選んだのは研究室の責任者であるバーラム・ジャラーリ教授とその研究実績、研究環境が素晴らしかったからです。
 プロジェクトは主に、研究室がさまざまな機関や企業から資金援助を受け、学生の指導も行いながら研究員がチームや個人で担当します。この研究室には15名が所属していますが、他の研究室や企業との共同研究も多く、常にさまざまな人が出入りしています。
 我々のクライアントは国防総省や企業で、レーザーと電気を基盤とした技術を使い、医療・防衛・通信の研究開発を行っています。例えば、医療の分野ではガンやHIVに関する新しい治療技術や診断法を、防衛についてはレーザー通信やミサイル迎撃システムを、通信では無線通信の新技術を開発しています。
 人の生死に関わるプロジェクトなので、とても責任を感じますし、やりがいもあります。また、どの分野も予算が大きいため、研究のしがいがあります。しかし、競争が非常に激しく常に新しい物を生み出していかなければならないという使命感もあります。
 研究開発には知識や知性も必要ですが、それだけではダメなんです。実際にはチームで行うことが多く、協調性が問われますし、独創性も必要です。そして、独創的に考えたものを実現させる行動力や、研究資金を調達する交渉能力、チームを率いるリーダーシップ、部下を教育する能力など、さまざまな能力が要求されます。つまり、研究者にはビジネスパーソンとしての才覚も必要なのです。私は、研究とは人間の総合力が試される場だと認識しています。

アメリカは理系大国成功のチャンスも大きい

 今までなかった物を作り出すということが、この仕事の醍醐味です。ゼロの状態からアイデアを生み出し、実用・商品化されて世の中に出て行くというプロセスが面白いです。もちろん、できあがった物によって人助けになったり、国を守ったり、世の中を便利にしていくという意義の大きさも、やりがいにつながっています。
 博士研究員は大学生を対象に講義を行ったり、大学院生と共にグループプロジェクトを指導したりします。私は今後、アメリカのトップスクールの教授になり、同時に自分でビジネスを立ち上げたいと思っています。大学教授が研究開発した技術でビジネスを始めるのは、アメリカではよくあるケースです。そこには優れた人材や資金が集まってきますし、企業としての成功率も高いのです。私は日本とアメリカで一大企業を作り上げたいと思っています。
 日本に比べ、アメリカは理系大国です。研究者が働く環境や条件は日本より数段良いし、チャンスも大きい。また、アメリカにはさまざまな人材が集まっているため、アイデアも広がります。この世界で成功する人は、情熱的で行動力があること、長期的な展望を持ち、今、何をすれば良いかを把握し、それを実行できる人だと思います。

(2008年10月16日号掲載)