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韓国文化が浸透した理由

Lighthouse編集部

日本でも韓流ドラマは一大ブームを築いたが、韓国映画はハリウッドでも注目を浴びるようになった。伝統文化はもとより、現代文化の浸透も著しい韓国文化。韓国コミュニティーでは、祖国の文化を伝えるためにどのようなサポートをしているのか。前号に引き続き、今回は文化・教育の観点から、躍進する韓国コミュニティーの素顔を探ってみた。


「韓国系移民は、アメリカで韓国
文化を代表しているのです」
(キム領事)

文化は経済発展の基礎
国策としての文化振興

 年々、拡大し続けるLAコリアタウン。知らない人が通っても、そこがコリアタウンだとわかるのは、街並みにあふれるハングル文字のおかげだ。コリアタウンでは、文化が経済の発展を象徴していると言える。

 韓国文化と言えば、キムチや焼肉などの食文化からチマチョゴリに見る伝統文化まで、昔から日本人にはなじみが深い。近年は、韓流ブームという新たな韓国パワーで日本を席巻した。ここ南カリフォルニアにおいて伝統文化から現代文化まで、すべての韓国文化の浸透を担っているのが、コリアタウンにあるコリアセンター・ロサンゼルスだ。

 同センターは韓国の文化観光省が運営している団体で、伝統文化を取り扱うコリアンカルチャーセンター、観光を促進する韓国観光局、韓流ドラマやオンラインゲームなど、現代文化のリエゾン役のコリアカルチャー&コンテントエージェンシーの3部門から成り立っている。本国以外で韓国体験ができる最大の施設だ。

 博物館通りであるミラクルマイルの東端に、コリアンカルチャーセンターがオープンしたのは1981年。前号でお伝えしたように、80年代と言えば韓国からの移民がピークに達した時期。急増する韓国系移民の憩いの場としてオープンしたのかと思いきや、実は韓国政府の政策の一環として、文化を通じて米韓関係を促進する目的で設立された。

 「コリアンカルチャーセンターは、韓国政府が次世代に韓国文化を伝えるために設立したもので、80年代前半に東京、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルスの4カ所でオープンしました」と話すのは、ディレクターのキム・ジョンユル領事。

 昨年中には、上海、ハノイ、モスクワ、ベルリン、ロンドン、ブエノスアイレス、大阪の7カ所もオープンし、最終的には全世界30カ所でのオープンを目指している。

 日本の文化も、食文化から武道や武士道に至るまで、著しい勢いで世界に浸透していったが、茶道も空手も寿司も、一般人の先駆者が自費で海を渡り、何もないところからコツコツと苦労して広めたものだ。韓国では国を挙げて、独自の文化を世界に紹介している。なぜ、これほど海外での文化の促進に力を入れているのか、キム領事に聞いてみた。

 「文化というのは、経済を支える基本的なルーツになります。文化の振興は、経済的な観点から見ても、最も重要なことなのです」。

 文化イコール経済の繁栄というコンセプトは、ハリウッド映画の影響力を見れば納得できる。確かに日本でも、韓流ブームの影響で韓国への旅行者が急増し、その経済効果は実証済みだ。韓国ではそれを国策として、全世界規模で実践しているのだ。


カルチャーセンターにある伝統的な書斎

伝統文化を伝える
カルチャーセンター

 コリアンカルチャーセンターの1階は博物館になっており、一歩中に入ると、伝統的な婚礼用の正装をした、きらびやかな新郎新婦の人形が目に飛び込む。壁には一面全部を使った人の形の大きなレリーフ。これは新羅時代の774年に建てられた花崗岩でできた寺院、石窟庵(ソックラム)のフルサイズのレプリカ。同寺院は1995年、ユネスコにより世界文化遺産に指定された。ショーケースには新羅時代の陶器などが展示されており、どこか懐かしさを感じるのは隣国ならでは。

 奥には伝統的な書斎があり、200年以上前に貴族が愛用した道具などが展示されている。韓国茶道のクラスもここで実施されるとか。韓国でお茶が薬草から茶道の形に高められたのは、高麗の時代。ちなみに英語名のKoreaは、高麗のハングル読み「コリョ」から来ている。博物館としては決して広くないが、入場は無料。

 2階は図書館になっており、韓国に関する文献2万冊以上の蔵書がある。蔵書の75%は韓国語の書籍だ。韓流ドラマのDVDも豊富で、図書カードを作れば、無料で2週間まで貸し出してくれる。また2階の半分はアートギャラリーで、ベテランから新進アーティストまでが揃う発表の場になっている。

 3階は映画や舞踊、講習会などが開催できるホールで、2004年に改装されたばかり。韓国映画や2世の韓国系監督作品のスクリーニングも行われ、伝統舞踊や各分野の専門家によるさまざまな講習もここで開催される。

 外国人を対象にした韓国語クラス(登録料:40ドル)もあり、その他にもキムチやカルビなどの韓国料理のデモンストレーション(今年は9月開催予定)や、韓国人以外のシェフによるクッキングコンテストまで行われる。同コンテストでは金賞1200ドルからピープルズチョイス賞300ドルまで、総額4千ドル以上の賞金が用意されている。

 また、小学校から高校までの郊外学習にも積極的に関与し、60人までなら送迎バスも提供している。さらには教師などの教育者に対するセミナーも実施しており、南カリフォルニアに韓国文化や歴史を伝える努力を惜しまない。


これが韓国の婚礼衣装

文化の経済効果は
韓国社会にも還元

 興味深い活動をしているのは、カルチャーセンターに隣接するコリアカルチャー&コンテントエージェンシーだ。カルチャーセンターの役割が伝統文化の紹介であるのに対して、同エージェンシーは現代文化のリエゾン役を果たしている。

 現代文化とは、韓流ドラマや映画、オンラインゲーム、アニメなどを指し、同エージェンシーに一歩足を踏み入れると、日本でもおなじみの『宮廷女官チャングムの誓い』や『冬のソナタ』のポスターや映像が目に入る。

 韓国が国家の取り組みとして映画制作に力を入れるようになったのは、金大中元大統領がアメリカに亡命中、ハリウッドの経済効果を目の当たりにしたのがきっかけだ。帰国後は大規模な撮影所などを設立し、映画産業の発展に積極的に関与した。その成果が、着実に形になって現れてきているのだ。

 同エージェンシーの設立は01年。制作のプロモーションからマーケティングのサポート、コンテンツのプロバイダー、さらにエンターテインメント業界のビジネスパートナーとして、「韓流」を世界に推進している。週に1人は本国から有名人を招いて、交流を図っているというから驚きだ。


日本でもおなじみの「チャングム」人形

 またアニメと言うと日本作品を思い浮かべがちだが、韓流アニメの躍進も著しい。05年、短編アニメ『バースデー・ボーイ』のパク・セジョン監督は、韓国人として初めてアカデミー賞にもノミネートされた。またオンラインゲームなどIT分野の文化でも、韓国の台頭は目覚ましい。

 これらのすべてが、政府のバックアップの下に実現してきたのは、日本人から見るとうらやましい限り。韓国コミュニティーの躍進が、韓国経済の発展と大きく関与していることは前号で検証したが、その秘密はこんなところにもあったと言える。

 他文化との交流も、2世が韓国文化を正しく継承して初めて可能になる。そのためには、社会に進出し始めた2世たちに韓国文化をきちんと伝承することが重要だと、キム領事は強調する。そこで次章では、文化の継承に対するコミュニティーの取り組みを調べてみた。

Korean Cultural Center, L.A.
5505 Wilshire Blvd., Los Angeles
☎323-936-7141
www.kccla.org
Mon-Fri:9:00am-5:00pm
Closed on Sat & Sun
入場無料

(2007年3月16日号掲載)