ライトハウス
Magazine Information

ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

学ぶ意思を尊重する
アメリカ高等教育の仕組み(1)

Lighthouse編集部

国家よりも古い歴史を持つアメリカの大学。天才の代名詞ハーバード大学から、
南カリフォルニアの名門・UCLAやUSC、各地にあるコミュニティーカレッジまで、
全米には数え切れないほどの大学・大学院がある。日本とは異なる制度を持つアメリカの大学・大学院。今回は、カリフォルニアのシステムを中心に、アメリカの高等教育の概要を解説する。


アメリカの大学の
成り立ちと仕組み

アメリカにおける
大学教育

アメリカに最初の移民がやって来て、イギリスの植民地としての歴史が始まるのが1620年、独立宣言が1776年。実はその間に、開拓が行われたアメリカ東部では、既に大学が誕生していた。超名門私立大学・ハーバード大学もその1つだ。

その頃の大学とは、富裕層の子弟を教育し、聖職者や植民地のリーダーを養成するために、「リベラル・アーツ」を学ばせることに目的があった。独立後のアメリカにも、軍関係の大学以外の国立大学は誕生せず、名門私立と実学中心の州立大学に大別される高等教育システムが発達していく。

その後、多くの移民を受け入れていったアメリカは、社会の成長と共に、意思のある者ならば誰でも学ぶことができる、コミュニティーカレッジの教育を充実させていった。

日本の6・3・3・4の教育システムは、敗戦直後の占領期にアメリカによって構築されたものだ。しかし、現在のアメリカの教育システムは、州や教育委員会によって異なるが、日本とは違っていることが多い。

大学へは、12年間の教育を修了した後に進学するという考え方は日本と同じ。ただしアメリカの教育は、本格的な専門教育を大学院で行うという考え方であり、学部以下の場合、非常にフレキシブルに専門分野を変えることが可能だ。また、コミュニティーカレッジから4年制大学への編入も盛ん。

日本でもロースクール(法科大学院)の制度が開始されたが、アメリカの大学院は、スペシャリストを養成する教育機関として認知されている。ロースクールやMBA(経営学修士号)取得のためのビジネススクール(経営大学院)、メディカルスクール(大学院医学研究科)やデンタルスクール(大学院歯学研究科)などの「プロフェッショナル・スクール」と、その他の分野の「グラデュエイト・スクール」に大別される。


私立大学と
州立大学の違い

私立大学の場合、いわゆるアイビーリーグ(ブラウン、コロンビア、コーネル、ダートマス、プリンストン、ペンシルベニア、イェール)やMIT(マサチューセッツ工科大学)、カリフォルニアではカリフォルニア工科大学、スタンフォード大学などの世界的に有名な超難関大学から地方大学まで、難易度には大きな幅があるのは日本もアメリカも同じこと。注意したいのは、高額な学費とディプロマ・ミルの存在だ(次ページのコラム参照)。


それでは、州立大学はどうだろうか?

主に州の税金で運営されるわけなので、州民の入学が優先される。学費や入学に関しても、州民か否かによって差があるのが現実だ。こちらも難易度は、カリフォルニア州の場合、UCバークレー校に代表される超難関校から、実学主体のカリフォルニア州立大学(California State University: CSU)各校までレベルもさまざま。

州立大が私立に比べると大規模校が多くなるのは日本とは逆の傾向。ただし州立は専攻の幅が広く、UCの場合、名門私立にも引けを取らない大学院を持つ学校もある。

コミュニティーカレッジは州立の2年制短期大学だ。4年制大学を卒業すれば「学士号」(Bachelor)が、コミュニティーカレッジを卒業すれば「準学士号」(Associate)が授与される。


カリフォルニア州
3つの大学システム

では次に、カリフォルニア州にある3つの大学システムを見ていこう。

CSUの第1号は1857年に設置されたカリフォルニア師範学校(現在のサンノゼ州立大学)。これに続いて誕生した23の州立大学システムのことをCSUという。学部課程と修士課程で構成され、カリフォルニア州高等教育制度基本指針(Master Plan for Higher Education)によれば、州内の全高等学校卒業生徒のうち、上位3分の1を占める者、一定の要件を満たすコミュニティーカレッジ卒業生を受け入れる大学である。

現在、学費は年間約2500ドル、これとは別に各校ごとにサービス費が徴収される。留学生や州外からの学生の学費は約1万3千ドル。現在、学費増額が検討されており、学生の反発を招いている。

これに対して米国内で7番目の規模を誇る巨大州立大学群が、カリフォルニア大学(University of California: UC)だ。CSUと区別するために、「州立」とは言わない。最古のUCであるバークレー校は1868年に誕生した。最新にして最後のキャンパスは2005年に開校したメーセド校。サンフランシスコ校だけは医学系大学院とロースクールのみであるが、それ以外は総合大学である。

一般に実学重視のCSUに対して、UCは研究・大学院教育重視で、施設も充実している。難易度も比較的高くなっている。

カリフォルニア州コミュニティーカレッジ・システム(CCCS)は地域の住民なら誰でも入学できる州立の2年制大学。州内72の学区、110の学校が存在する。CCCSは世界最大のカレッジシステムであり、2500万人が学んでいる。学費が安く抑えられているので、一旦ここに入学した後で、4年制大学へ編入する人も多い。

お稽古ごとのような科目も存在する一方で、職業に直結した教育や大学への編入のステップとなる学問の基礎的な科目も多くある。学期ごとの集中講座などもあり、フレキシブルに学生を受け入れている。

入学には成績証明書の提出が必要だが、成績そのものは関係がない。ただし、アメリカの高校を卒業していない場合には、TOEFL(Test of English as a Foreign Language)の受験が必須で、基準点未満の場合には、ESL(English as Second Language)の科目を先に履修しなければならない。一方、提携している英語学校での成績次第では、入学にTOEFLを課さない学校もある。


カリフォルニア州立大学(設立順)
サンノゼ州立大学(San Jose State University)
カリフォルニア州立大学チコ校(California State University, Chico)
サンディエゴ州立大学(San Diego State University)
サンフランシスコ州立大学(San Francisco State University)
カリフォルニア理工州立大学(California Polytechnic State University)
カリフォルニア州立大学フレズノ校(California State University, Fresno)
ハンボルト州立大学(Humboldt State University)
カリフォルニア・マリタイムアカデミー(California Maritime Academy)
カリフォルニア州立理工大学ポモナ校(California State Polytechnic University, Pomona)
カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(California State University, Los Angeles)
カリフォルニア州立大学サクラメント校(California State University, Sacramento)
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校(California State University, Long Beach)
カリフォルニア州立大学サンディエゴ校(San Diego State University)
カリフォルニア州立大学イーストベイ校(California State University, East Bay)
カリフォルニア州立大学フラトン校(California State University, Fullerton)
カリフォルニア州立大学ノースリッジ校(California State University, Northridge)
カリフォルニア州立大学スタニスラウス校(California State University, Stanislaus)
カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校(California State University, Dominguez Hills)
ソノマ州立大学(Sonoma State University)
カリフォルニア州立大学サンバナディーノ校(California State University, San Bernardino)
カリフォルニア州立大学ベーカーズフィールド校(California State University, Bakersfield)
カリフォルニア大学州立大学サンマルコス校(California State University, San Marcos)
カリフォルニア州立大学モントレーベイ校(California State University, Monterey Bay)
カリフォルニア州立大学チャンネル・アイランド校(California State University, Channel Islands)


カリフォルニア大学(設立順)
カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)
カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles)
カリフォルニア大学サンタバーバラ校(University of California, Santa Barbara)
カリフォルニア大学リバーサイド校(University of California, Riverside)
カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)
カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)
カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)
カリフォルニア大学メーセド校(University of California, Merced)


ディプロマ・ミルにご用心!

近年日本でもアメリカでも、有名大学の教授や公務員などが、昇進のために「ディプロマ・ミル」による卒業証書や学位を利用していたことが問題になり、「学位汚染」という言葉も生まれた。

ディプロマ・ミル(Diploma Mill)とは何か? 直訳すれば「学位製造工場」。これは、州政府などに公認されていない、正規の大学ではない「教育機関」のことである。


どうしてこういうものが存在できるのだろうか?

例えば、ある大きな宗教団体が、独自に宣教師を養成するための学校を作り、その卒業生に対して、自分たちの間だけで通用する「神学博士」の称号を授与する、といったケースがそれだ。これには何の問題もない。なぜならそれは、組織内だけの称号だからだ。

ところが、昨今の学位汚染問題では、「ユニバーシティー」や「カレッジ」という名前を使い学位を販売している、ディプロマ・ミルから授与された学位を、公の学位として悪用するケースが見受けられる。

ディプロマ・ミルの中にも、肩書きを買いたい人に学位を販売しているところや、名誉教授を斡旋するような「確信犯」もいれば、それなりの教育を施しているところもある。こういった無認可の「教育機関」の教育内容は、外から見ればわかりにくいことも多く、せっかく入学して学問に励んでも、卒業後に公的にはただの紙切れに等しい卒業証書をもらっていた、ということもあり得る。そういった意味で、州政府の認可制度が複雑なアメリカでの大学選びには、十分な注意が必要だ。