男の子と女の子で英語の上達には差がありますか?

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両親とも日本人で、小学生の娘と息子がおります。こちらに来て2年目になりますが、現地校に通っています。娘に比べ、息子の方の英語があまり上達しておらず心配です。男の子と女の子で英語の上達に差はあるのでしょうか?また性格によっても違いは出ますか?

A. 上達は性差によるものではなく、性格や周囲の環境の差

松本輝彦(INFOE代表)

英語習得に影響するさまざまな要因

「男女差や性格の違いで、英語習得のスピードに差があるのか?」、よく聞かれる質問です。しかし、この質問にはっきりと答えられるアカデミックな研究結果を見たことがありません。

せっかくのご質問ですので、幼児から小学校の子供の英語の習得に影響のある代表的な項目を選び、それぞれの項目がどのように習得に影響するか、私の体験的な意見を述べてみましょう。

■性別
「女の子の方が、男の子よりも英語上達が早い」
保護者の体験に基づいた言葉で、よく聞きます。この観察には、私も体験的に賛成します。しかし、その差は性差によるものではなく、むしろ男女の性格の差、そのような性格を持つようになった親の育て方の差が、大きく現れているようです。「寡黙な兄、おしゃまな妹」の組み合わせは典型的な例です。

■子供の性格
「消極的な性格より、積極的な性格の子供の方が早く話すようになる」
単純です。好奇心旺盛だったり、人見知りをしない性格だと、他の子供と接触する機会が多くなり、会話の練習量が多くなるからです。注意が必要なのは、「話す・聞く」に自信がつき過ぎて「読み・書き」がおろそかになると、学校の成績が伸び悩むことがあります。逆に、渡米直後で一言もしゃべらない恥ずかしがり屋の子供が、1、2年して急におしゃべりになることがあります。最初、「聞く」貯金をしているのです。

■子供の年齢・学年
「小さい子供の方が、大きい子供より話が早くできるようになる」
極端に、子供と大人の違いを考えてください。大人のように「恥ずかしい」「失敗はいや」などと子供は考えません。「習うより慣れろ」の言語習得の最高の方法で、他の子供と接しているのです。

■親の態度
「子供の英語習得の環境を積極的に作る家庭の子供は、習得が早い」
ご両親、特にお母さんの英語に対する姿勢が大きく影響します。スペイン語を話す家庭での調査では父親3割・母親7割の割合で子供との会話がなされているとのことです。仕事の忙しい日本人のお父さんの場合はもっと割合が低いでしょうから、お母さんの役割がより大きくなります。

家族全員で日本語のテレビやビデオばかりを見ている環境で、子供に「英語を伸ばせ」「英語の本を読め」とは言えません。お母さん自身が英語ができなくても、友達・アクティビティー・本・新聞などで英語の環境を作るのです。

■日本語の力
「日本語の力、または日本語による学習の力がしっかり身についた子供は、英語の習得が早い」
生まれてから日本語で育てられている子供の第1言語は日本語です。第2言語である英語力の向上は、第1言語の能力に大きく左右されます。特に、日本の学校で読み書きの始まる3、4年生以降に渡米した子供で、日本語の力がしっかり身についていたり、読書が好きな子供は、驚くほど早く英語の読み書きの力が向上します。

■会話力と読解力
「自然に言語が身につくのは、聞く・話す・読む・書くの順」
幼児の場合は、英語環境の中で会話力が身についていきます。その会話力が英語での読み書きの基礎力になります。しかし、現地校の小学校4年生以上では、「会話力が身についている」を前提にして指導します。この段階でレベルの低い会話をトレーニングしても、読み書きの成績は上がりません。学齢に応じた指導が大切です。

■滞米期間
「英語が母語の子供のレベルまで達するのに、会話力で2年くらい、読み書きで6、7年かかる」
当然のことですが、滞在年数が長くなるにつれて、英語力も伸びてきます。それが伸びるのにこれくらいの年数がかかるという研究者の言葉です。あせりは禁物です。

以上、英語の習得で大きな役割を果たす項目について、私の考えを本当に簡単に述べました。実際のプロセスは、以上に述べた要素だけではなくもっと多くの要素の組み合わせです。すなわち、子供ひとりひとりが、まったく異なっていて、たとえ兄弟・姉妹といえども、ひとりひとりの状況を把握し、指導する必要があります。十分、気をつけてください。

(2005年3月16日号掲載)

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