アメリカの税金・会計疑問にお答えします 2018年(バックナンバー)

ライトハウス電子版アプリ、始めました

年末にできる節税対策 │ 個人年金プランが知りたい! │ 年金プランどう設定する? │ 日本に帰国前にしておくこと │ SSNがない時の配偶者控除 │ 従業員に贈り物をしたい │ 日米の所得税と二重課税の回避 │ 趣味の所得とビジネスの違い │ 相続手続きで注意すべきこと │ 新設された雇用主向け控除 │ 日本の家を賃貸に出す場合 │ 税制変更、所得税に影響? │ 駐在員の所得税の計算 │ 監査報告書と不正の防止 │ 法人税以外の変更点は? │ IRSから支払い要求の電話? │ 個人の確定申告 控除の変更点 │ 故人の手続き │ 個人事業主の税制改革の影響 │ 居住者証明 │ 無収入者の確定申告 │ 起業後の帳簿の付け方 │ IRSからの手紙 │ 上場企業とは? │ C-CorpとLLCの違い │ 帰国時の税務 │ 自宅購入の控除 │ 会計士の仕事 │ 法人の確定申告の提出漏れ │ 相続の確定申告 │ FBARの申告 │ 日本の年金 │ 個人事業は法人化すべき? │ Sales Tax │ 健康保険は加入すべき? │ 会社の経費 │ 確定申告の必要書類の未着 │ 未払い通知 │ 日本の銀行口座 │ 税務調査 │ 税制改革法案の影響 │ 法人の確定申告の締切 │ 親からの住宅資金援助 │ 子どもの控除 │ 法人の維持 │ 無料会計ソフトと会計士の違い │ 駐在員の税務 │ 12月の決算 │ 2017年の変更点 │ 個人事業主 │ 年末の節税 │ 法人の違い

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年末にできる節税対策

2018年も終わります。最後にできる効果的な節税対策はありますか?

電気自動車などの購入

環境にやさしい電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の購入はいかがでしょう。2010年から控除は続いています。各メーカーがそれぞれ一定の台数を販売すると段階的にクレジット控除額が減っていきますが、18年はまだ控除が可能です。

クリーンエネルギー自動車の購入による控除額は、車のタイプや種類で異なります。最低2500ドル、最大7500ドルです。ただし、購入する自動車は2つの条件が必要です。①5kWh以上のバッテリーを搭載していること、②重量が1万4000ポンド以下であること、です。控除を取るにあたり、使用に関しても、転売目的でないことやアメリカ国内で乗るなどの条件もあります。

ソーラーパネルの設置

または、ご自宅へのソーラーパネルなどの設置によるEnergy taxcreditの利用はいかがでしょうか。取り付けにかかった費用の30%がそのままクレジット控除となります。19年までに取り付けた場合は30%、20年は26%、そして21年は22%と控除額が減っていきます。
 
IRA(Individual Retirement Account)や、HAS(Health Saving Account)の控除は課税対象所得からの控除となるのに対し、上記2つはクレジット控除で税金からの控除となり、より効果的な節税ができます。控除が減額される前に検討をお勧めします。気になる方は会計事務所に相談の上、シミュレーションしてみましょう。
 
(2018年12月16日号掲載)

 

個人年金プランが知りたい!

老後に向けた個人の退職年金プランについて教えてください。

2種類のIRAを利用

会社で年金プランに加入していない、またできない場合は、個人で積み立てできるIndividual Retirement Account (IRA)があります。もちろん、税制優遇付きで、パートタイムや専業主婦の方も加入が可能です。Traditional IRAとRoth IRAと2種類あります。どちらに入ったほうがいいのか、それぞれの違いを述べていきましょう。

多くの方が利用しているのは、Traditional IRAで、拠出金が所得税控除の対象で、引き出す時に課税されます。所得税率は累進課税で、30代~50代の現役時代よりも退職後のほうが所得が低い分税率も低いと考えられます。つまり、将来Traditional IRAを引き出し時に課税されても、税率は低くなります。ただし、70.5歳を過ぎると引き出しをしなければいけません。

一方、Roth IRAは、拠出の際には控除されませんが、引き出す際の課税もありません。Roth IRAには積み立ての年齢制限の上限はなく、70.5歳を過ぎて引き出しをしなくてもペナルティーもかかりません。

合算や移行も可能

どちらも翌年の4月15日までに拠出すれば、前年度に遡って控除を取ることが可能なので、2018年の節税対策として利用できます。どちらも拠出額に上限があり、18年は5500ドル、19年は6000ドルです。この上限よりも所得が少ない場合は、所得の金額が上限となります。合算申告の場合は、奥様が専業主婦で所得がない場合でも、旦那様に拠出以上の所得があれば夫婦2人で拠出しても問題ありません。誤って多く拠出してしまうと、ペナルティーが科されるので注意しましょう。

また、Traditional IRA、RothIRA、2つとも持ち、後で移行するのが、長い目でみると一番の節税になるかもしれません。これについては次号でお話しします。

年を明けると確定申告書の時期がきます。興味がある方は今年中に会計事務所までお問い合わせの上、慌てずに事前に対策をしましょう。
 
(2018年12月16日号掲載)

年金プランどう設定する?

会社を運営しています。どの年金プランを設定したらいいですか?

自社に合ったプランを

年金プランにも多くの種類があります。よく耳にするのは401(k)でしょう。従業員に平等に配布しているか確認するDiscrimination Testという複雑なテストが毎年必要で管理コストは高いですが、プランや拠出額の内容をフレキシブルに設定することが可能です。401(k)は比較的大手も含め多くの企業がオファーしていますが、他に小規模・個人事業主向けにSIMPLE IRAやSEP IRAというプランもあります。
 
SIMPLE IRAは、従業員100名未満の会社を対象としたプランです。毎年のDiscrimination Testが不要なことや比較的簡単に低コストに設置できるというメリットがあります。一方、他の年金プランが設置できない、拠出額が他に比べて少ないなどのデメリットもあります。
 
SEP IRAは、会社の形態や従業員数に関係なく設置できます。雇用主が従業員のために拠出するプランになり、従業員個人での拠出ができません。一方、管理コストが低かったり毎年の拠出額を変更できたりするというメリットがあります。
 
どのプランも、会社負担の拠出額分を経費として申告できるため、会社の節税対策としても活用できます。さらに、従業員の将来的な老後資金はもちろん、現役時代の節税にもなります。2019年からは、どのプランも拠出額の上限が少し増えるため、新しく福利厚生として考えてみるのもいい機会でしょう。会社の状況で最適なプランは異なるので、一度専門家に相談してみましょう。
 
(2018年12月1日号掲載)

日本に帰国前にしておくこと

日本に帰国し老後を過ごそうと考えています。税務の面からアメリカを出る前にしておくべきことはありますか?

生前贈与をお勧め

帰国前にしておくべき手続きと、しておいたほうがいい手続きがあります。しておくべき手続きは、以前にも述べましたが、グリーンカードや市民権を破棄するかどうかによって、出国税手続きや将来の確定申告書が必要となってきます。
 
しておいたほうがいい手続きの中で特に大事なのは、相続税対策です。アメリカにいる間にアメリカの資産を生前贈与すると、一般的には基礎控除が1人1120万ドルあるため、税金がかからない人がほとんどです。
 
しかし、アメリカに財産を残して帰国した場合、日本に到着し居住の意志が生まれた時点で、日本でもアメリカの財産が日本の相続税の対象となってしまいます。亡くなった人、遺産を相続する人のどちらかが日本に住んでいる場合には、海外の財産にも課税されます。日本では一般的に、3000万円+600万円×法定相続人の数のみが基礎控除となり、アメリカの1120万ドルと比べるとだいぶ低い印象を受けますね。さらに、日本の相続税は世界で見ても高いと言われています。日本の相続に関しては、日本の税理士や専門家に、帰国前に相談するといいでしょう。
 
なお、日本でアメリカの財産を申告し納税をしても、アメリカでの相続税の申告や法務的な手続きも必要となります。状況にもよりますが、帰国後だと上記の1120万ドルの控除が使えなくなる可能性もあるため注意しましょう。アメリカで支払った相続税は日本の相続税の控除の対象となりますが、税率の違いもありあまり効果的ではないと考えます。そのため一番お勧めなのは、老後を日本に帰国して過ごそうとお考えの場合、帰国前に贈与をすることです。状況により異なりますので、事前に日米両方の税法に特化した会計事務所に相談するのがベストです。相続人・被相続人に双方にとって、とても大切です。日本に帰国してからだと、非常に多くの時間とエネルギーが必要になります。少し余裕をもって早めに相談するのをお勧めします。
 
(2018年12月1日号掲載)

SSNがない時の配偶者控除

妻はSocial Security Numberを持っていないのですが、確定申告の際、配偶者控除は取れますか?

ITINを利用する

Social Security Number(SSN)がなくても配偶者控除は可能ですが、代わりに、IRS(内国歳入庁)からIndividual Taxpayer Identification Number(ITIN)を取得する必要があります。ITINもSSN同様9桁の個人番号で、移民法上のステータスに関係なく取得できます。ただし、確定申告の目的でしか使用できず、SSNを取得できる方は、SSNの取得が必要です。
 
「Form W-7」という書類と個人情報の証明資料(主にパスポートコピー)を、確定申告書と同封してIRSへ郵送して取得します。パスポートコピーは正式な認証を受けたものでなければなりません。日本に住んでいる方は日本のアメリカ大使館・領事館、アメリカに住んでいる方はアメリカの日本大使館・領事館で発行された書類が必要です。もしくは、Acceptance Agent(IRSから認定を受けた会計事務所)に頼み、パスポートコピーの認証証明書を作成することも可能です。
 
ITINは失効してしまう番号もあります。過去3年間使用されていない方、真ん中の番号が73~77、81、82で終わる方は、今年で失効する可能性があります。ITINをお持ちの方は、確認の上すぐに更新の手続きを行いましょう。申告書の提出の時に焦ってしまうことや、失効による罰金を防ぐことができます。
 
IRSから返答がくるまでには数週間かかることもありますので、取得申請は余裕をもって行いましょう。
 
(2018年11月16日号掲載)

従業員に贈り物をしたい

長く働いている社員に感謝を込めて贈り物を考えています。Fringe BenefitやEntertainment、Giftという扱いになるでしょうか。

給与扱いでない贈り物

もちろん、会社で従業員へ支払った経費に関しては基本的に控除することができます。今回は特に、勤続年数が長い方への贈り物ということで、Achievement Awardsというカテゴリーになります。通常のボーナスやFringe Benefitの場合は、会社が従業員へ渡し、一般的には給与として処理します。そのため、給与税が発生し、会社の負担が大きくなります。一方Achievement Awardsは、経費で控除が取れるだけでなく、従業員への給与と見なされないので、連邦への所得税、FUTA、Social SecurityやMedicare Tax等の給与税がかかりません。ただし、従業員一人につき年間400ドル(Achievement Awardsについてのポリシーなし)または1600ドル(ポリシーあり)までと上限があります。そして、勤続年数が5年以上あることと、当該の従業員には5年に一度しか贈ることができないというのが条件です。

何を贈るかがポイント

このベネフィットを利用するには、細かい決まりはありますが、何を贈るかというところが一番のポイントです。トランプ大統領の税制改正法により、2018年からAchievement Awardsと見なされるための贈り物の明確な定義が設けられました。現金、ギフトカード、クーポン、株やその他の有価証券、有給休暇、食事代、ホテルの提供、コンサートやスポーツイベントのチケット等は対象外となります。一方、よくある贈り物、時計、鞄、名刺入れ、ペン、アクセサリー等は問題なくAchievement Awardsに当てはまります。過去にAchievement Awardsとして現金を渡していた方は、現金の贈呈を続けるか、贈り物に変更するか見直しをしましょう。
 
日本と違い、従業員ターンオーバーの激しいアメリカで長く会社を支えてくれる従業員は貴重です。永年勤続者を大切にAchievement Awardsも検討してみましょう。
 
(2018年11月16日号掲載)

日米の所得税と二重課税の回避

日本でも所得があり、日本に所得税を納めています。アメリカでもその所得に対して所得税を払わないといけないのでしょうか。
 
おっしゃる通り、税務上アメリカの居住者となる場合は、全世界収入を申告し、それが課税対象となるため、日本の所得もアメリカで課税対象となり、税金を支払います。しかし、アメリカでも日本でも二重課税にならないようにルールができています。また、二重課税を回避する方法もありますので紹介します。

①外国所得免除の申告

一番シンプルな方法は、アメリカ国外で得た所得を全額免除する方法です。毎年インフレ率によって調整されますが、免除する上限が決まっています。そのため、高所得の人は軽減は可能ですが、全額は免除できない可能性もあります。また、免除するにはいくつかの条件があります。

②外国税控除の申告

これは、二重課税を回避するため、発生した税額から外国で払った税額を差し引く方法です。ただし、現在米国から経済制裁を加えられている4つの国、シリア、スーダン、北朝鮮、そしてイランはこの限りではありません。さらに、これは連邦税の話であり、カリフォルニア州も含め、州税では認めないという州もあるので注意しましょう。
 
また、この方法は二重課税にならないと言われていますが、アメリカでの所得税率が日本よりも高い場合は、日本での収入に対して差額の税率分を納めなければいけません。例えば、日本で10万ドルの所得があり日本の所得税が20%、アメリカでは25%だった場合、アメリカでは2万5000ドルの税金がかかりますが、2万ドルをすでに日本で納めているため、アメリカでは残りの5000ドル、つまり5%(25%-20%)を払う、という形です。

③Dual Statusで申告

1年の間に、税務上居住者だった期間と非居住者だった期間が存在する方が、「Dual Status」として、扱いの期間を分けて申告する方法です。渡米した年や帰国した年にあてはまる方が多いでしょう。分けることにより、居住者の間は全世界所得が対象、非居住者の期間はアメリカのみの所得が対象となります。ただし、このDual Statusの申請方法だと、通常取れる控除が取れないなどのデメリットもあります。
 
どの申告が可能でどの方法がベストかは、それぞれの方の状況(滞在日数やアメリカ国外の収入と納税額)によって異なります。複数の方法が可能な場合は、それぞれの方法、もしくはその組み合わせを試算し、ベストを見つけ出しましょう。特に、高所得の方は選ぶ方法によってだいぶ納税・還付額が変わってきますので、専門家に相談してみましょう。
 
(2018年11月1日号掲載)

趣味の所得とビジネスの違い

趣味の延長で副業をしてます。確定申告書で所得の申告が必要ですか。

税務上の扱いに違い

はい、趣味でも所得は申告する義務があります。経費も控除できます。ただ、趣味からの収入か、ビジネスかで、ロスが発生した時に将来の利益とオフセットできるかが違います。
 
IRS(米国内国歳入庁)も違いははっきりと明示していませんが、次の項目にあてはまると、ビジネスと見なされる傾向にあります。費やしている時間と努力、その仕事で生活しているか、ロスの発生はデフレ等の影響か、ロスが発生した時の改善策はあるか、成功する秘訣を知っているか、過去に同様の仕事で成功しているか、将来利益が出るのを予想できているか、です。さらに、過去5年間のうち3年間(業種によっては7年間のうち2年間)に利益が出ているか、もカギとなってきます。
 
個人事業主の項目は監査対象としてもよく見られるポイントです。注意して申告が必要です。
 
(2018年11月1日号掲載)

相続手続きで注意すべきこと

相続の手続きが必要になりました。どうすればいいですか?

居住・非居住で異なる

相続には、資産がある場所で相続手続きや相続税の納付が必要となります。ご両親が亡くなられた時にどこに住んでいたとしても、アメリカにあるご両親の資産はアメリカで相続手続きと相続税の納付を、日本にある資産は日本で相続手続きと相続税の納付をします。まずは、どこにいくらの資産があるかを確認しましょう。そして、その国のルールに基づいて手続きを進めましょう。
 
アメリカの場合は、亡くなった時に、アメリカ市民および居住者なのか、非居住者なのかを確認しましょう。アメリカ市民および居住者は、海外資産含むすべての資産が課税対象です。ただし、トランプ大統領の改革の一部として、基礎控除額が2017年の549万ドルから1118万ドルと増加します。一方、非居住者の方は、アメリカ国内の資産のみが課税対象ですが、基礎控除額が6万ドルです。気を付けたいのは、相続税における「居住者」の定義が、所得税の「居住者」の定義と異なる点です。永住権保持者でも、相続税上は非居住者となる可能性があります。アメリカ市民および居住者と非居住者のステータスによって控除額にかなり差があり、提出する書類にも少し違いがあるため、間違ったステータスで申告をしないよう、専門家への確認と注意が必要です。申告書の期日は亡くなってから9カ月以内で、届け出により延長も可能です。

事前対策が重要

控除額が6万ドルと低い非居住者の方でも、対策方法はあります。一番簡単なのは、アメリカ国内資産を売却、もしくは日本に移動させることです。そうすることで、アメリカに資産がなくなり、受取人がアメリカ市民および居住者だとしても、相続の手続きや相続税の納付が不要になります。次にできる対策は、贈与の年間控除を最大限に活用することです。ご両親が健在な間に、少しずつ贈与していきましょう。贈与者・受贈者のステータスに関係なく、年間1万5000ドルの基礎控除があります。毎年控除内の贈与をうまく利用すれば、資産をtax-freeで少しずつ渡していくことができます。
 
最後にご紹介したいのは、非居住者の方でも居住者と同じ最大1118万ドルの控除を取ることができる方法です。これには、アメリカ国外の資産を開示する必要があります。ただし、この方法を取ってアメリカでの相続税がゼロになったとしても、日本や他の国での控除が減額したり、合算の課税額で不利になり全体の支払いが増えてしまったりする可能性もあります。アメリカの会計士だけではなく、日本やその他の国の専門家にも相談し、ルールを確認しておくのをお勧めします。
 
(2018年10月16日号掲載)

新設された雇用主向け控除

まもなく中間選挙ですが、トランプ大統領によって可決された新しい控除はありますか?

育児介護休業での控除

先月末、雇用主対象の新しい控除が発表されました。有給の育児介護休業(paid family and medical leave)を従業員に提供することで、2018年と19年に税金から控除できます。ポリシーを書面形式にて18年12月31日までに作成・修正し、18年1月から遡って適用すると控除が認められます。ポリシーには下記3つの要素を含む必要があります。
①条件を満たした従業員は全員カバーすること
②年に最低2週間の育児介護休業を認めること
③休業中は最低50%の給料を支払うこと
です。控除額は実際に給料の支払いが発生した時に計算します。
 
雇用主、オーナー、従業員にとってwin-winな福利厚生も選択次第。ハンドブックの見直しや更新にいい機会です。お近くの税金の専門家と労務士に相談してみましょう。
 
(2018年10月16日号掲載)

日本の家を賃貸に出す場合

日本にある家を人に貸しています。気を付けることはありますか?

日米の違いを確認する

駐在期間中、日本の家を賃貸している、両親が亡くなり日本の家を相続して賃貸している、2020年のオリンピックへ向けて物件を購入し賃貸を始めた、など、日本に賃貸物件をお持ちの方もいるでしょう。その場合、一番注意が必要なのは、アメリカで税務上居住者になると、日本での賃貸物件の収入もアメリカで課税の対象となることです。また、日本でも確定申告や納税が必要な可能性があるため、日本のルールも確認しておきましょう。収入や経費を証明するための控えの保管も大切です。
 
アメリカでは、賃貸用の物件を維持するのに、通常かかる必要経費であれば、ほぼ全てが控除可能です。例えば、借り手を探すための広告費用、物件のクリーニング費用、保険、管理費、家のローンに発生する利息、備品、固定資産税、光熱費、減価償却費等です。また、賃貸物件に関連するのであれば、かかった旅費や、交通費、修繕費なども控除できます。

減価償却がポイント

経費の中で一番重要なのは減価償却です。金額も大きく税金の額を大きく左右する可能性があるからです。ただし、購入した金額が全て減価償却の対象になるのではありません。土地と建物に正しく分け、建物のみ一定期間、減価償却ができます。アパートやマンションの一室でも、土地と建物に分ける必要があります。建物以外にも、購入時に支払った経費の一部は資産とみなされ、建物と同じ期間で減価償却をします。
 
減価償却の始まりは、購入した日ではなく、厳密には賃貸として利用を始めた日になります。そして、償却期間はアメリカの物件と日本の物件で期間が違うため注意しましょう。また、アメリカでは、相続をした日本の物件の価格は、日本の相続税で申告した物件の金額と異なることがあります。減価償却の対象となる金額、土地と建物の割り当て、そして減価償却の期間は、専門家へ確認して設定するのがベストです。さらに、この減価償却は売却時に大事な役目を果たすため、最初からきちんと計算するのが望ましいでしょう。
 
賃貸物件から利益が出ることが望ましいですが、収入より経費がかかる年もあるでしょう。その場合ロスを申告できますが、毎年ロスが取れる上限があります。いくらでもロスを取ることができると、節税対策として賃貸物件を使用する場合があるからです。プロとして賃貸収入を得ている場合と副収入として得ている場合で、ロスの取れ方も異なります。
 
ご自身で賃貸の収支や減価償却を計算することも可能ですが、申告漏れによる損などを防ぐためにも、必要な書類を準備して、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
 
(2018年10月1日号掲載)

税制変更、所得税に影響?

2018年の税制変更により、所得税に変更はありますか?

納税額の事前確認を

2018年より変更があるため、IRS(内国歳入庁)も納税額の事前確認を勧めています。IRSのサイトにあるWithholding Calculatorを利用し質問に答えていくと、現状から予想する還付・支払額や「FormW-4」の調整方法が確認できます。
 
特にダブルジョブや夫婦共働き、扶養家族控除がある、項目別控除や所得が高いという方は、Paycheckの照合をしておきましょう。
 
多めに納税が必要と判断された場合は、「Form W-4」変更、そして、追加で所得税を支払っておきましょう。申告書を提出した際の大きな金額の追徴やペナルティー、利子の支払いを避けることができます。また、納税し過ぎている場合も発見できます。来年の申告時に還付を求めるのではなく、事前に納税額を減らして、来たるホリデーのために手元に現金を置いておく良い方法です。
 
(2018年10月1日号掲載)

駐在員の所得税の計算

日本からアメリカに来ている駐在員の税金について、会社負担分と従業員負担分を分割するいい計算方法はありますか?

税金の調整を行う

日米両国でビジネスをつなげ、広げていくためにも、駐在員の方に税務上の不利益が生じてモチベーションが下がってはいけません。会社と従業員間の税額調整計算を、タックスイコーリゼーション(Tax Equalization)と呼びます。法律で定義された方法や特定の国のルールはなく、対象とする税金や計算方法、タイミングの判断が重要です。

税額を仮定し計算する

海外赴任中は、日本のみで仕事をている場合と比べて、主に下記3つの原因で実際の所得税が高くなるケースが多いです。①手当等による課税対象所得の増加、②税率の違い、③双方の国にて所得が発生する。このため、会社は駐在員が日本のみで仕事を続けていたら支給されたであろう給与金額を基に税金を仮算出し、従業員はその額を負担。そしてそれ以上に発生した税金分は会社が負担するケースが多いです。この仮定の税金相当額をハイポタックス(Hypothetical Tax)と呼びます。
 
所得税以外にも、赴任期間によりSocial SecurityとMedicareの支払いを日米どちらで行うか、確認が必要です。アメリカ人が日本で駐在をする場合も注意が必要です。
 
会社も従業員も損をしない、いい関係を保つことがとても大事です。双方が納得できるよう、アメリカと日本の両方の税金に詳しい会計士に相談し、ポリシーを設定しましょう。
 
(2018年9月16日号掲載)

監査報告書と不正の防止

監査報告書とは何ですか?

適正かどうか審査する

監査報告書とは、客観的な立場にある公認会計士が、財務諸表等の書類が「適正」か「適正でない」かを意見した書類です。適正とは、会計基準に従って内容が正しいと判断を下したことを言います。監査報告書と言っても数種類あり、審査の手続きが違います。監査コストは、監査報告書の種類や会計事務所によって振れ幅が大きいため、リスクを考慮の上、慎重に選びましょう。

社内チェックも重要

監査を受けていると、財務諸表の問題点や間違いの指摘を受けることがあるでしょう。多くのケースでは、会計の捉え方の違いや業種や商品の理解の不一致が原因であることが多いかと思います。指摘をそのまま鵜呑みにするのではなく、どんどん社内で改善策や提案を話し合い、アクティブに監査人とコミュニケーションを取ると、監査がスムーズに進むことが多いです。また社内で話し合うことに加え、他の会計事務所にアドバイスを求めてみることも、より正しい数字・報告書を作成するための一つの手段だと考えます。
 
監査報告書の適正意見を出したにもかかわらず、会社の報告書に不正が発見されることもあります。アメリカで有名なのはEnron事件、また日本では数年前に東芝がニュースで大きく取り上げられました。監査では確認できる範囲が決まっていたり、時間の制限があったりするため、不正を見抜けないこともあるのです。監査も大事ですが、膨大なコストがかかることもありますので、日ごろから社内の会計チームを強化する、他の会計事務所の目を入れるなどして不正を見つけやすくする、もしくは防げるような体制を取っておくことをお勧めします。
 
アメリカでは上場企業の監査報告書はSecurities and Exchange Commission(SEC)に報告され、誰でも閲覧することができます。ちなみに、SECへの報告の義務が四半期ごとから半年ごとに変更する提案が出されています。変更されれば会社にとっては、経費や労力が抑えられる朗報となるでしょう。
 
(2018年9月16日号掲載)

法人税以外の変更点は?

質問:法人税が下がりうれしいのですが、一方デメリットはあるのでしょうか。
2018年末にトランプ大統領が可決した税制改革によって、企業は多少なりとも影響を受けます。3つのパートに分けて詳しく下述します。

娯楽費の控除の廃止

1つ目として、過去認められていた経費がいくつか税務上で認められなくなりました。一番影響があるのは、娯楽費です。以前は食事同様、半額まで経費として控除が認められていましたが、2018年1月1日以降に発生した娯楽費は全面的に認められなくなりました。単なる食事代でしたら、従来通り半額控除可能です。ただし、全額控除可能だった食費に関しても一部半額のみ控除となりました。同様に、ゴルフの会員権も認められません。さらにセクハラに関連する支払いの一部も税務上費用として控除できなくなりました。また、フリンジベネフィット(引っ越し代や通勤手当等)の経費も、原則として控除を取れなくなりました。ただし、経費として認められる方法もあるので、控除が取れないから払わないのではなく、専門家に確認し、雇用主・従業員双方にとって一番いい方法で、ベネフィットを提供できる環境を作ることをお勧めします。

利息経費控除の減少

2つ目に、銀行等から借りたローンに対する利息経費の控除額の上限が設定されました。今までは支払った利息は全額、控除が認められていましたが、2018年からは課税所得の30%と利息収入を足した額以上からしか、損金算入が認められません。例えば利息経費が6万1000ドルで課税所得が20万ドルの場合、$61,000 – ($200,000×0.3)=$1,000となり、1000ドルのみ利息経費として控除が可能です。

固定資産償却の変更

3つ目は、固定資産に関してです。18年に購入した乗用車は償却額に上限が設定されました。購入した年、翌年、翌々年と、償却の経費の取れる額が減少します。また、購入した日やケースによりその年の控除可能上限が異なります。一方「Section 179」という、固定資産を減価償却する代わりに取得価格を経費として取得年度に税務上一括計上できる即時償却制度では、即時償却の経費計上の限度額が50万ドルから100万ドルに引き上げられました。また取得年度に固定資産がある一定以上ある場合は、限度額に制限がありますが、その金額も引き上げられました。
 
今回の大幅な税制改革によって法人税自体は引き下げられましたが、並行して経費の控除の一部が廃止、縮小されます。メリットとデメリット、どちらも理解することで、一番良い節税と運営の方法を選ぶことができると考えます。今後の影響も引き続き注目していきたいですね。
 
(2018年9月1日号掲載)

IRSから支払い要求の電話?

質問:IRSと名乗る方から支払いをしろと電話がありました。支払った方がいいのでしょうか。

電話での要求はしない

2017年の申告書を提出しホッとしている中、IRS(内国歳入庁)から未払いの税金があると言われたら、誰だって信じてしまうと思います。しかし、IRSは下記3つのことは決してしません。
①送金、プリペイドカード等の方法で電話越しに支払いを要求する。
②質問や確認をせず支払いを強制する。
③警察や労働局等に通報すると脅す、免許証や移民のステータスを取り上げる。
 
通常、IRSからは手紙にて支払いの旨の通知が来ます。そこから質問や交渉等が始まり、実際に会う際には、IRSの身分証明書を提示します。電話、テキスト、EメールやSNSを通しての決して支払いの要求は決してありませんので、絶対に支払いをしないように気を付けてください。困ったときはお近くの会計事務所へ相談しましょう。
 
(2018年9月1日号掲載)

個人の確定申告 控除の変更点

質問:税制改革における、2018年度からの個人の控除の変更点を詳しく知りたいです。
トランプ大統領の税制改革法案(Tax Cuts and Jobs Act)により、2018年度から個人における控除の内容がかなり変更します。具体的に大きく変わるのは、項目別控除(Itemized Deductions)①医療費、②ローンの利息、③地方税です。

項目別控除の変更点

医療費の場合、これまで調整後の所得(Adjusted Gross Income)の10%を超える分のみが控除可能でしたが、限度金額が7.5%へ引き下げられました。例えば、調整後総所得が5万ドルで医療費が4000ドルだった場合、250ドル(4000ドル-5万ドル×7.5%)が控除額となり、2017年度だったら1ドルも取れなかった控除が、2018年度からは項目別控除に含めることができます。なお、控除対象となる医療費の内容(治療や施術など)に変更はありません。
 
住宅ローンに関する利子は、控除上限が夫婦合算申告では、100万ドルから75万ドルに、夫婦分離申告では、50万ドルから37.5万ドルに引き下げられます。また、住宅を担保としたローンの利子は、家の購入や建設目的以外では控除できなくなりました。
 
さらに、州税や地方税、固定資産税は無制限で控除可能でしたが、2018年度からは、夫婦合算申告の場合、地方税、固定資産税、車税、売上税の全ての合計額1万ドルまで控除対象に変更されます。夫婦分離申告の場合は5000ドルまでが控除対象です。これまで、日本をはじめアメリカ国外に不動産をお持ちの人は固定資産税の控除においてメリットがあったのですが、上限が設けられたため、あまり効果がなくなる可能性があります。
 
また、従業員としての会社のために建て替えた経費の控除は全く取れなくなります。会社のための支出は、会社にきちんと請求をして返してもらいましょう。

その他の控除の変更点

2018年度からは自身と扶養家族に対する控除(Exemption)と引っ越し費用の控除は廃止されました。
 
そして新たに、子ども以外の扶養家族、もしくは17歳以上の子ども1人につき、500ドルの控除ができるようになりました。また、17歳以下の子どもの控除額は2000ドルに増加し、還付可能控除の上限も1人1400ドルと増加しました。どちらも、高所得者には制限がかかりますが、所得の上限も増えています。なお、子どもはソーシャルセキュリティーナンバーを持っていないとどちらの控除も取れません。
 
どのような変更が起こったのか知ることで、確定申告で、より多くの所得控除を確保できます。
 
(2018年8月16日号掲載)

故人の手続き

質問:日本に住む親が亡くなったのですが、確定申告や税金に影響はありますか?
まずはご冥福をお祈り申し上げます。亡くなられた親御さんがアメリカにて市民権または、永住権を保持している場合は、最後の故人の確定申告を行う必要があります。

相続の手続き

また、親御さんからの遺産を相続した場合、亡くなられた年が相続した年になります。日本の遺産は日本で、アメリカの遺産はアメリカで、相続の手続きがそれぞれ別々に必要で、いずれも相続をした年に申告をする必要があります。
 
一定額を超えない場合は税金の発生しないケースが多いですが、何をいくら相続したという報告を、期日までに書類にて提出する必要があります。日本で相続し、きちんと申告した後のお金はアメリカに送金しても問題ありません。申告方法は個々の状況により異なるため、どの申告書を、いつまでに、どこへ提出するのかの確認が大事です。
 
(2018年8月16日号掲載)

個人事業主の税制改革の影響

質問:個人事業主です。2018年度の税制改革で、個人事業主にも何か税制の変更はありますか?
2018年度から税制改革法案により、C Corporationの税率が一律の21%になります。それに伴い、個人事業主やパススルー法人(S Corporation、Partnership、LLC)オーナーにも減税措置が適用されます。

QBIとは何か

この減税措置で、QBI(Qualified Business Income)が最大20%控除されます。QBIとは、ビジネスにおける課税対象所得を算出し、そこから利子収入、配当金、オーナーへの保証支払い(Guaranteed Payments)、米国外で得た利益を引いた額のことです。ただし、個人の全課税対象所得額に応じて、QBIの控除に上限が設けられています。以下に簡単な例を挙げてみます。
 
例:ビジネスにおけるQBIが10万ドル。個人における全課税対象所得が10万5000ドル(そのうち4万ドルは株の売却によるキャピタルゲイン)の個人事業主。
① QBI の控除:$20,000($100,000 x 20%)
② 控除の上限:$13,000(($105,000-$40,000)×20%)
 
①と②を比較し、低い額が控除の対象となるので、1万3000ドルの控除が可能となります。
 
注意が必要なのは、控除額の計算方法が、個人の全課税対象所得額に応じて違う点です。個人の全課税対象所得が31万5000ドル(夫婦合算)もしくは15万7500ドル(それ以外)までの人は上記で述べた例が適用となります。
 
個人の全課税対象所得がこの額を上回るほど、控除の上限も上がりますが、計算方法はより複雑になります。
 
会社が支払った従業員やオーナーの給与(「Form W-2」の総額)や、会社で使用している償却資産の所得原価から導く控除額と、QBIの控除額を比較して低い方が控除額となるのです。つまり、仮にQBIが高くても、雇用者が多いか少ないか、自社ビルや不動産を所有しているか、オーナーの給与を「Form W-2」で払うか払わないかなどで控除額が変わってきます。

サービス業のQBI

さらに、ビジネスの業種がコンサルティングやブローカーなど、IRS(内国歳入庁)の定めたサービス業の場合、個人の全課税対象所得が一定額を超えると、サービス業からの収入がQBIとして認められません。
 
また、QBIの控除は一つ一つのビジネスに対して計算されるので、複数の事業を持つ人は、それぞれの法人ごとに精査が必要となります。最大限に控除を取るためにも、ビジネスオーナーは、専門家に相談し、前もって計画を立てることをおすすめします。
 
(2018年8月1日号掲載)

居住者証明

質問:「租税条約に基づく手続きには居住者証明が必要」と言われました。居住者証明とは何ですか?
居住者証明とは、アメリカの居住者であることを証明する書類です。アメリカ居住者が日本から年金、またはその他の収入を受領する際、居住者証明を日本年金機構や収入先へ提出することにより、日本での所得に対して源泉徴収税を免除することができます。「Form 8802」という書類を記入してIRSへ提出すると、アメリカ居住者証明が発行されます。

どのように発行するか

居住者証明は個人だけではなく、会社名義でも取得できます。申し込みには85ドルの費用が発生しますが、1回のリクエストで何通でも発行してもらえます。弊社では50通をリクエストし、50通を受け取ったこともありました。ただし、記入漏れや必要な追加資料が欠けている場合は、発行までに時間がかかる上、85ドルは戻ってこないまま再申請が必要なこともあります。
 
(2018年8月1日号掲載)

無収入者の確定申告

質問:グリーンカードが当たり、昨年、渡米しました。今のところ、アメリカで収入はありませんが、友人からアメリカでは全員が自分で確定申告を提出しなければいけないと聞きました。私は申告が必要ですか?

申告ステータスは?

基本的に、確定申告をする義務があるかどうかは、申告ステータスと1年間の収入額の組み合わせから判断します。申告ステータスは以下の5種類です。
 
①独身、②未婚で扶養家族がいる、③夫婦合算申告、④夫婦分離申告、⑤2年以内に配偶者を亡くし、子どもがいる。かつ再婚していない。
また、誰かの扶養家族として申告されているなら、それとは別に自身の確定申告が必要か否かを判断する必要があります。

申告が必要な収入

総収入が一定額以上ある場合、申告義務が発生します。総収入とは「現金、商品、資産、サービスで税控除とならないもの全ての収入」です。例えば、景品で車が当たったり、仕事の対価を株券で得たりした場合は対象です。もちろん、アメリカ国外からの収入も含まれます。「一定額」とは、ステータスと年齢に応じて変動します。
 
なお、これらに当てはまらなくても、状況によっては、収入の有無にかかわらず申告義務が発生することもありますし、外国金融口座の報告(FBAR)のみ必要な人もいます。
 
年々、法律が変化する中、確定申告が必要かどうか不安であれば、友人の口コミではなく専門家に相談されることをおすすめいたします。
 
(2018年7月16日号掲載)

起業後の帳簿の付け方

質問:会社を始めました。これからどのように会計・帳簿を付けていけばいいでしょうか?

なぜ、会計が大事か?

誰にでもできそうで意外と奥が深く手間がかかるのが経理業務です。
しかし、「会社を始めたばかりでまだ取引が少ないから後でまとめてやろう」とか、「今は会計管理より営業を伸ばす時期」と、経理業務を放っておいてはいけません。会計は毎日の正確な集計を積み重ねてできています。基礎を一歩一歩築き上げるのが重要です。
 
数字は嘘をつきません。会社の健康状態を把握するためにも、月次決算、四半期決算および年次決算は欠かせません。確実なデータを適切な時期に出すことは必須です。せっかく始めたビジネスを波に乗せるためにも、きちんと会社の現状を知ることで、タイムリーな予算と目標達成の進捗管理、資金管理、そして経営の意思決定を適切に判断したいものです。

企業会計の方法は?

会計や帳簿の管理には、経営者が自分で管理する、社内で経理専門の人を雇う、もしくは、正確性と詳細性を求めたいのであれば、会計事務所に経理をまるごとアウトソースする、さらには、日々の帳簿は社内で進めて月次や決算時のみ専門家に確認してもらうなど、さまざまな方法があります。会計ソフトだけでもいろいろあるので、費用と効率を考慮し、自分のビジネスに合ったプランを探すためにも一度専門家に相談してみるといいでしょう。
 
経営者自身が会計を管理すると、きちんと自分の好きな時に自分のほしい経営情報が把握できるメリットがある反面、細かい作業にも時間を費やさなければなりません。また、会計は現金を扱ったり、販売している商品の原価や販売価格が分かったりするので、経理の専門の人を雇う場合は、信頼できる人を選びましょう。外部の専門家を使えば、知識のある第三者の目が入るため、社内で不正をしにくいというメリットがあります。
 
会計や帳簿付けは、社に関わる全ての人と専門家の協力が肝心です。
 
(2018年7月16日号掲載)

IRSからの手紙

質問:IRSから税務調査をしたい旨の手紙を受け取りました。会計士・税理士に相談すると、どのように助けてくれますか?
 
ある日突然、IRS(米国内国歳入庁)より税務調査をしたい旨の手紙が送られてくることがあります。手紙が来たとしても、必ずしも何か不正が見つかったとか、間違いが見つかったとは限りません。ただし、きちんと知識を持って早急に対応しないと、本来不必要な追徴課税を払わなければならないこともあります。
 
税務調査の方法は、手紙のみで行う場合と対面で行う場合があります。対面とは、家、会社、会計士の事務所、IRS の事務所などで行われ、事前に場所と日時を話し合って決定します。

専門家に頼むメリット

税務調査の対応は必ずしも専門家に依頼しなければならないわけではありません。個人で対応する人もいれば、法人の経理担当者や代表者が対応することもあります。一方、専門家に対応をお願いした場合のメリットは次の通りです。
・税務調査の前に適切な準備を行うので、調査当日に大きなミスが発生しない。
・調査官とスムーズなやりとり・交渉が可能。
・問題を指摘されても、早く正確に対応できるので調査が長引かない。
・調査官との交渉を全て任せられ、依頼者の精神的負担が軽減される。
・毎年変わる税法を理解しているため、不要な追徴課税を回避できる。
・万が一、結果に納得できない場合、調査後の修正申告や不服申立ての手続きにも対応できる。

調査の内容

調査では、申告内容の正当性の立証が求められます。第三者からの書類、帳簿・銀行記録などから情報を洗い出し、リクエストされた資料の準備をし、調査官が納得するように証明する必要があります。専門家に依頼すれば、説得力のある資料の作成ができ、交渉の仕方を心得ているため、よりスムーズに調査を終えられるでしょう。
 
もちろん専門家に依頼すれば費用は発生します。しかし、税務調査を第三者に任せることで、自分の時間の節約と安心感が得られます。しかも、不慣れな資料作成やアメリカの役人との交渉に応じることもありません。餅は餅屋ではないですが、専門家に依頼することで、必要のない追徴課税を納めることもなく、円滑に事を運べ、自ら交渉しなくても無事に調査を終えられるなら、メリットは大きいと言えるでしょう。
 
IRSの手紙には、調査官の情報や進め方の指示が記載されています。「指示に気付かなかった」は言い訳にはなりません。手紙を受け取ったら、まずは調査官と専門家へ連絡を入れましょう
 
(2018年7月1日号掲載)

上場企業とは?

質問:現在、就職活動中です。親は上場企業への就職がいいと言いますが、そもそも上場企業ってなんですか?
上場企業とは厳しい審査をクリアし、証券取引所で株式の売買をしている企業を指します。

上場企業のイメージ

上場すると、四半期毎に専門の会計事務所認定の財務諸表と健全な内部統制の報告書の開示が必須です。アメリカで上場していない日系企業でも、親会社が日本で上場している場合、監査や内部統制の構築を求められるケースもあります。
 
つまり、上場していると幅広い人が株売買し、財務諸表もたくさんの人から見られるため、信用度や知名度が高いです。そのため破綻する可能性が低くて安心というのが親心なのではないでしょうか。
 
最近では、クラウドファンドの利用など、上場せずに資金を集める企業が増えています。私自身は、上場か非上場かより、自分のしたいことや興味があることを仕事にするのが大事だと思っています。
 
(2018年7月1日号掲載)

C-CorpとLLCの違い

質問:会社の設立を考えています。C-CorporationとLLCの違いは何ですか?
会社を設立する際に、一番最初に決めるのが会社の形態です。

C-Corporation

C-Corporationは、日本の株式会社のような一般的な企業形態の一つです。メリットは、株主の人数に上限がなく、各株主は事業から発生する債務に個人責任を負わない有限責任となります。また、一般的に多くの投資家はC-Corporationへの投資に慣れているため、C-Corporationに増資する心理的ハードルが低いと言われています。
 
デメリットは、会計処理が一般的には複雑な上、二重課税になることです。二重課税とは、法人に課せられる法人税と、会社から株主へ払った配当金に対して株主個人に課せられる所得税を指します。
 
なお、2018年1月1日よりC-Corporationの連邦の税率が一律21%に下がりました。

LLC

LLC(Limited Liability Company)は、設立の簡便性から幅広く利用されています。出資者を株主ではなくメンバーと呼び、有限責任制により各メンバーが出資額を超えた責任を負うことはありません。利益の分配は出資額に関係なく決めることができます。
 
デメリットは、利益に対して個人事業主税(Self-EmploymentTax)の支払いが発生する場合があることです。また、アメリカ国外に住むメンバーは配当金の有無にかかわらず、会社の利益に対して源泉徴収されます。さらに、メンバーは原則一人一票の議決権を持って意思決定を行うため、メンバー同士の対立が発生すると経営が滞るリスクもあります。

課税方式の違い

両者の一番大きな税制面での違いは課税方式です。
 
C-Corporationは会社として確定申告書を提出して法人税を納めますが、LLCは確定申告書を提出しても法人税は払いません(州によっては払うこともあります)。LLC法人は会社の利益を記した「FormK-1」という書類をメンバーへ配布し、メンバーは「Form K-1」を用いて、個人の確定申告で会社の利益を申告して税金を納めます。
 
会社の形態の変更は可能ですが、変更にはお金と時間がかかります。会社設立を検討される際には、それぞれの長短所を理解し、設立の目的や将来の方向性を定めてから形態を選ぶことをすすめます。不安な場合は、会計士や弁護士に確認するといいでしょう。経費はかかってしまいますが、ベストな形態を最初から選択することは、長期で見るとベネフィットとなります。
 
(2018年6月16日号掲載)

帰国時の税務

質問:今度、アメリカから日本に帰国します。必要な税務は何かありますか?
ポイントは、アメリカ居住者か非居住者かということです。日本へ帰国しても、市民権や永住権を保持している場合、税務上は居住者とみなされます。居住者は全世界所得が課税対象のため、毎年アメリカ国外の所得も申告をして税金を納めなければなりません。市民権や永住権を放棄すれば、税務上も非居住者となり、アメリカの物件からの家賃収入やアメリカで発生した所得がある場合のみ、申告義務が発生します。

出国税とは

帰国の際、出国税(Expatriation Tax)が課される場合があります。出国税の対象者は、市民権や永住権の放棄者と、過去15年間で8年以上アメリカに居住していた人です。2017年は、放棄日から過去5年間の平均所得税額が16.2万ドルを超える、もしくは放棄日の全世界純資産が200万ドルを超える場合に出国税が適用されました。忘れずに申告書を提出しましょう。
 
(2018年6月16日号掲載)

自宅購入の控除

質問:マイホームの購入を検討中です。家を買った場合のメリットとデメリットを税制面から教えてください。
毎年上がる賃料を毎月払うならいっそのこと家を購入しようと考えている人も少なくはないと思います。実際に長い目で見ると、購入した方が総費用は安くなる場合が多いのです。税金の面では一般的に、自宅の購入によって次の控除が個人の確定申告で申請できます。

固定資産税と支払利息

土地や建物などの不動産にかかる固定資産税の支払いは、控除の対象です。基本は年に2回払いますが、翌年の分を今年度に先払いした場合は、今年度に3回分の支払いの控除を取ることができます。今年と来年の所得や税率を踏まえて固定資産税を払うタイミングを考えるのもいいタックスプランニングです。
 
また、多くの方がマイホームを手に入れるために住宅ローンを組みます。ローンの利子の支払いは控除の対象となりますが、上限がありますので、税務的には多く払えばいいというわけではありません。
 
また、ローンを借り換えた際に、前払い金利(ポイント)を支払うことがあり、この支払い額も控除の対象です。ただし、全額控除になるものの、ローンの支払い年数によって複数年にまたがって控除を取らなければならないので、確認が必要です。
 
これら2つの控除は、別荘や、米国外の不動産に支払った固定資産税やローンの利子も対象となります。賃貸していない日本の持ち家も対象ですが、軒数に制限があります。
 
なお、日本の不動産を賃貸に出しているとビジネスと見なされ、項目別控除ではなく、ビジネスの経費という形で賃貸所得と相殺して控除を取ります。節税のためにも、確定申告書の作成時に、会計士・税理士に確認しましょう。

項目別控除と基礎控除

固定資産税と利息の控除は、項目別控除(Itemized Deduction)の一部です。つまり基礎控除(Standard Deduction)と比べ、どちらか金額が大きい方の控除を取ることになります。
 
一般的に、家を購入すると、項目別控除が基礎控除を上回り、控除できる金額は大きくなります。あとは、自分の家にソーラーパネルなどの当局で認められた環境のための装置を導入すると控除が取れる年があったり、Home Buyer’s Creditと言う、物件の購入者向けの特別控除制度がある年もあります。
 
最後に、個人的な意見になりますが、買うか借りるかは、どこの家に住みたいかや、自分で庭や水回りのメンテナンスを行うのか、頼むのかなど、お金よりも自分の時間をどれだけ家に費やせるかを考えた方がいいと思います。ホテルに住むのが究極の贅沢であると私は思っています。
 
(2018年6月1日号掲載)

会計士の仕事

質問:米国公認会計士を目指してます。詳しい仕事内容を教えてください。

主な3つの仕事

会計・監査法人にいる会計士の仕事は大きく分けて、監査、税務、コンサルティングの3つです。監査業務は、企業の財務諸表や経営状態を、第三者の立場から間違いがないかどうかチェックします。会計士の資格を持つ人だけが、監査報告書にサインができるのです。税務業務では、個人や会社の確定申告書の作成、財務諸表の税効果の影響の確認や計算、その他の税金に関する手続きや申告が含まれます。そして、コンサルティング業務は企業の経営や会計に関して専門知識を生かしてアドバイスをします。例えば、経営戦略や合併(M&A)についての提案や調査をしサポートします。
 
その他、ControllerやCFOとして会社に勤めて活躍している会計士の方もたくさんいます。どの業務も、日々ルールや状況が変化するので、常に新しいことを勉強していくことが一番大切です。
 
(2018年6月1日号掲載)

法人の確定申告の提出漏れ

質問:法人の確定申告を提出し忘れてしまいました! どのようなペナルティーがありますか?
法人税を支払う期日は、確定申告書の期限と同じく、会社の決算日から3カ月、または4カ月目の15日です(会社の形態によって期日が変わります)。もし、申告がこの期日までに間に合わない場合、延長申請をして、申告期限を6カ月間延長できます。しかし、税の支払いは延長できません。確定申告が遅れた場合、発生し得るペナルティーは、大きく2つあります。

ペナルティー

延長の手続き漏れや、延長申請したが、それより申告が遅れた場合、申告書提出時に追加で発生した税額に1カ月当たり5%をかけた額が罰金としてかかります。この額は、最大で25%(5カ月分)まで増えます。 延長申請はしたけれど、申告期日までに税を支払わなかった場合、未払いの税額に対して1カ月当たり0.5%のペナルティーが科せられます。こちらも、最高25%(50カ月分)まで増えます。さらに、未払い分の税金やこれらのペナルティーには支払いが終わるまで利息が付きますので、迅速に支払うべきでしょう。
 
また、25%以上の株を保有する株主が海外にいる場合や、1人の株主が複数の会社の株を持ち、その会社間で取引がある場合、または法人が海外に資産を持っている場合などは、確定申告とは直接関係ないものの、共に提出したり、申請の延長ができるいくつかの開示申告書類があります。それぞれ申告遅れのペナルティーが設定されており、その額は1万ドルに及ぶものもあります。これら開示申告そのものには税金が発生しない場合がほとんどですが、申告遅れの際にはペナルティーを科されるため、このような開示申告が必要な法人は延長申請を行った方が良いでしょう。

未提出の防ぎ方

基本的には未払いの税額が大きいほど、ペナルティーの額も大きくなるので注意が必要です。また、今回説明したペナルティーは全て連邦のルールであり、各州も同等のペナルティーを持つ場合がほとんどです。連邦と州の税法が違うことも多く、これらのペナルティーを回避する、または、最小限に抑えるためには、確定申告締め切りまでに自社が支払うべきことになる税額を前もってある程度予想することが重要です。
 
四半期ごとの予定納税を適切に行っておくこと、そして確定申告の締め切り日前に、たとえ情報が全て出そろっていなくても、納税額を多めに見積もって支払いを行っておくべきでしょう。
 
予定納税や暫定の納税額の計算に関して、自分で予測が難しい場合には、専門家に相談されることをお勧めいたします。
 
(2018年5月16日号掲載)

相続の確定申告

質問:日本で親の遺産を相続したのですが、アメリカでどのような税務手続きが必要でしょうか?
日本で遺産相続が発生した際、ほとんどのケースは、被相続人(亡くなられた側)が日本国籍を所持しているかと思います。その場合、まずは日本で相続税の確定申告を行う必要があります。

アメリカでの手続き

相続人(相続を受ける側)がアメリカ居住者の場合、確定申告の際に、アメリカ当局に遺産相続開示申告を提出する義務があります。もしこれを怠る、もしくは提出期限を過ぎてしまうと、1万ドルか相続した総額の最大25%どちらか大きい金額が課税対象になります。
 
もし相続した遺産の中に、アメリカに存在する資産があった場合は、アメリカでの確定申告が必要になる可能性もあるので、ご注意ください。
 
情報の開示自体に納税は伴いませんので、日本で遺産相続が発生次第、できるだけ早くアメリカの税務の専門家に相談されるといいでしょう。
 
(2018年5月16日号掲載)

FBARの申告

質問:海外資産の開示申告義務というものを最近知りました。過去の申告漏れはどうすればよいのですか?

FBARとは何か?

アメリカでは確定申告を提出する際、当年度内に保有していた海外の金融資産の最高残高の合計が1万ドルを超える人は、その海外資産情報を開示申告する義務があり、これをFBARと呼びます。元々はForeign Bank Account Reportingの略称ですが、近年ではReport of Foreign Bank and Financial Accountsという呼び名が正式名称となっています。この開示申告では、証券や掛け捨てではない払い戻しのある保険など、さまざまな金融資産が開示の対象です。
 
この制度自体は1970年代からあったもので、年々、金融犯罪の取り締まり強化という名目で厳しくなっています。情報開示を管理する組織をIRS(国税庁)からFinCENという別組織に委託してから、開示申告の期日を定めるようになり、2013年度の確定申告から電子申告を義務付けるようになりました。これにより当局が個人の金融資産を管理参照しやすくなり、取り締まりを強化する方向で進んでいます。

FBARのペナルティー

海外資産開示を行っても税金は発生しません。ただし、申告遅延、もしくは未申告の場合、罰金を科すことになっています。申告期日は確定申告期日と同じ4月15日(2017年分の締切は2018年4月17日)で、開示申告が遅れると最大で罰金1万2459ドルが口座ごとに発生します。さらに、当局より悪意があると見なされた場合は、口座ごとに12万4588ドル、最大で10万ドル、もしくは資産の最大50%の罰金になります。税法は法律ですので、「知らなかった」では未申告や罰金免除の理由になりません。故意に申告を怠ったと見なされた場合、刑事罰を科せられ、禁固刑に処される可能性すらあります。

FBARの救済措置

では、申告を怠った場合、どうすればいいのでしょうか。FBARを知らず、うっかり開示を怠ってしまう可能性は決して低くありません。アメリカ側も罰則金が高額という理由でそのまま開示申告を未提出にするのを防ぐため、救済措置をとっています。
 
代表的な手続きの一つに、過去の申告漏れに対するStreamlined Offshore Procedureという恩赦手続きがあります。申告を怠った事実を素直に認め、遅れた理由の詳細、それまでの経緯、過去に所有していた金融資情報と共に、保有資産の5%を自ら支払うことで、高額な罰金を防ぐ手続きです。
 
もし、過去に申告していない場合、そのままにせず、速やかに専門家に相談されることを推奨します。
 
(2018年5月1日号掲載)

日本の年金

質問:日本の年金をもらっています。アメリカではどのように課税されるのでしょうか?

日本からの収入の申告

滞在ステータスがアメリカ居住者の人は、原則として、全世界所得、つまりアメリカ国外からの収入も確定申告上で申告しなければなりません。その中には、日本の各種年金も含まれます。社会保障年金(Social Security Benefit)はアメリカの税法上、総所得が一定以下であれば非課税ですが、そのルールが適用されるのはアメリカの社会保障年金のみです。日本の年金はアメリカでは通常の収入と同等に扱われ、課税の対象となります。
 
一方、滞在ステータスがアメリカ非居住者の場合、全世界所得の申告義務はないため、日本の年金は課税の対象となりません。
 
もし、日本で年金を含むその他の収入があり、日本の所得税を払っている場合には、その額を外税控除としてアメリカで利用できる可能性があります。
 
(2018年5月1日号掲載)

個人事業は法人化すべき?

質問:個人事業を営んでいます。事業を法人にするとどんなことが変わるのでしょうか?

法人とは何か?

法人(Corporation)と個人事業(Sole Proprietor)、いずれもビジネスを行うという意味では大きな違いはないように見えますが、実際にはそんなことはありません。法人はその名前が示す通り、法律によって定められた架空の人格です。
 
Corporation法人やSole Proprietor法人、LLC(Limited Liability Company)といった複数の形態があり、オーナーとは明確に区別され、法人の名前で銀行口座や物件の保有、各種ライセンスの取得をすることなどが可能となります。また、特に所得税に関しても、個人事業では事業の利益や損失はそのままオーナーの収入、損失として考えますが、法人では一部の形態を除きオーナーの支出とは区別して計算します。

個人事業のリスク

個人事業でも、オーナーの名前で仕事用の銀行口座を持てるなら、それほど変わらないのでは?と思うかもしれません。確かに普通にビジネスを行っていく上では大差はないように見えますが、差が出るのはリスクが顕在化した時です。
 
例えば大きな失敗をして多額の借金を負ってしまった際、個人事業ではオーナーが全ての支払い責任を負うことになります。一方、法人はオーナーではなく法人に責任が発生しますので、犯罪性を認められる場合、または個人保障などの契約を交わしていない場合を除き、会社を倒産させてしまえばオーナーへの影響はほとんどありません。このように、リスクコントロールの面で法人には明確な利点があります。

個人事業の利益と税

利益と税金面では、個人事業は利益がそのまま個人の収入になり、個人と同じ税率で課税されます。一方、法人は利益を配当金という形でオーナーに提供する必要があり、その配当金は法人の所得税支払い後に発行され、オーナーの所得税計算の際にも課税されます。つまり二重課税です。Sole Proprietor法人やLLCなど、これを回避できる法人形態もありますが、それぞれ制限がありますので、法人を設立する際は規模や形態に見合った法人形態を選択することが重要です。
 
個人事業の規模が大きくなってくると、取引量も増え、リスクの大きさも比例して増大していきます。そのため、ある程度の大きさの個人事業をお持ちの方には、法人の設立をお勧めしています。どのような形態の法人が適しているのか、あるいは個人事業のままでも大丈夫なのか、事業の形態や目指しているものを確認しながら、最適な法人形態を見つけるべきだと思いますので、ぜひ企業会計の専門家にご相談ください。
 
(2018年4月16日号掲載)

Sales Tax

質問:California Sales Tax、Use Taxとはなんですか?
California Sales Taxは、州内で物品を購入する場合に課せられる税で、いわゆる消費税にあたります。州が定める税率に、地域ごとに発生するDistrict Taxesを上乗せしたものが、普段目にするSales Taxです。カリフォルニア州は最低税率が全米一高い7.5%で、場所によっては、高いDistrict Taxが課せられ、サンタモニカでは計10.25%のSales Taxが徴収されます。
 
Use Taxとは、カリフォルニア州にいながら、州外から通販などで物品を購入した場合にかかる税金です。Sales Taxは基本的に売却側に徴収義務があり、他州で物品を購入すると徴収されません。その代わりに消費者が確定申告で支払うのがUse Taxです。大手通販サイトでは各州に対応したSales Taxを徴収しますが、個人売買などでSales Taxを払わない場合、確定申告で購入額を申告するか、購入額が年間1000ドル以下では、一定額の支払いを行うことになります。
 
(2018年4月16日号掲載)

健康保険は加入すべき?

質問:税務上、健康保険には加入した方がよいのでしょうか? 入らなくてもよいのでしょうか?

オバマケア

Affordable Care Act、通称オバマケアの施行以降、この質問をよく受けますが、回答は難しいです。
 
これまで健康保険の費用は医療費の一部として項目別控除が利用できましたが、医療費は調整後所得の7.5%を超えた分しか利用できず、税法上、高所得者にとってはそれほど旨味のある費用ではありませんでした。しかし、オバマケアの施行以降、一定以上の収入を持つ人が、政府の定める基準を満たしている健康保険に加入していない場合、確定申告の際にShared Responsibility Paymentと呼ばれる追加の支払いが課されます。確定申告上では「その他の課税」として計算されますが、ルール上はれっきとしたペナルティーとなっており、また広くそのように認識されています。

未加入のペナルティー

2018年度のペナルティーの額は、成人695ドル、子ども347.50ドルで、一家族当たり最大2085ドル。もしくは確定申告の申告条件収入額を超えた収入の2.5%のいずれか高額な方となります。
 
申告条件収入額は毎年変動し、現時点では18年の額は発表されていませんが、17年は次のようになっていました(カッコ内は納税者が65歳以上の場合)。独身1万400ドル(1万1950ドル)、世帯主1万3400ドル(1万4950ドル)、夫婦合算申告2万800ドル(夫婦のうち一人が65歳以上2万2050ドル、二人が65歳以上2万3300ドル)、夫婦別申告4050ドル。なお、ペナルティーは保険加期間に比例して減額されます。

保険料とペナルティー

さて、最低でも大人一人当たり約700ドルのペナルティーが科されるわけですが、実際に健康保険を個人で購入すると、年間それ以上の費用が掛かることは想像に難くありません。雇用者からの十分な援助が期待できず、州や自治体が提供する安価な健康保険プランを利用できない場合、保険に加入しない方が総合的には支払いが少なく済むこともままあるでしょう。逆に、十分な所得があるとペナルティー額も増大しますので、たとえ保険の雇用者負担がなかったとしても最低限の健康保険には加入した方が良いことになります。
 
17年末に可決された税法の改正で、19年より保険に加入していないことに対するペナルティーはなくなる見込みです。これにより、税務上、健康保険に加入していないことに対するデメリットはなくなります。ですが、健康保険そのものの意味を考えると、加入している方が安心なのではないかと思います。
 
(2018年4月1日号掲載)

会社の経費

質問:会社の経費として費用を計上するのに必要な”Ordinary and Necessary”とは何でしょうか?
「事業の経費として認められるのはOrdinary and Necessary(一般的かつ必要)なものだけ」と税法で定められていますが、実は何が「一般的」で「必要」かは、一切定義されていません。多様な業種が生まれては消えていく中、それらを一つ一つ定義することは極めて難しいので、税務当局や租税裁判所は疑問を抱いたものを逐次審査します。

安易な計上のリスク

一般的かつ事業の継続に必要な費用は計上できるとしておおむね間違いありませんが、安易な判断で何でも計上するのは危険です。税務監査が入った際にその経費が認められないと、確定申告で利用していた控除が減り、その分追加で税金を払わなければならず、さらに罰金を科される可能性もあるからです。定期的に専門家に相談して経費の妥当性を確認しておけば、監査が入った際のリスク低減につながるでしょう。
 
(2018年4月1日号掲載)

確定申告の必要書類の未着

質問:確定申告に必要な書類がまだ手元に届かないので、確定申告書を作ることができません。どうしたらいいでしょうか?

各種書類の発行締切

雇用主や銀行から届く確定申告作成に利用する各種書類は、連邦税務当局のルールとして、1月末日までに発行されていなければなりません。末日発送したとしても、郵送時間を考えれば2月の中頃には届いているべきでしょう。ですが、実際にはさまざまな要因で書類が手元に届かないケースが散見されます。郵送中の手紙の紛失や誤配はよくあることですし、発行者が発行を忘れていた…ということもままあることです。
 
昨年と収入や支出状況が変わらないのに去年と同じ書類がまだ届いていないなど、来るはずの書類が届かない場合、各発行者に対して直接問い合わせをしましょう。また、先方に伝えた住所や名前が間違っていないかの確認も必要です。

書類再発行と推定申告

書類の発行者には受取人の要請に応じて写しを再発行する義務があります。ですが、何らかの理由で要請に応じてくれないこともあるでしょう。そういった場合、IRS(米国税庁)に連絡して、正式な書面で要請を行ってもらうことも可能です。
 
また、雇用者などがきちんと当局に申告をしていることが前提となりますが、連邦税務当局に連絡を取り、昨年以前の申請済みの情報を取り寄せることも可能です。
 
どうしてもそれらの税務書類を受領できない場合、推定の数字を利用して確定申告を行うことができます。その際は、できる限り正確な額と源泉徴収額を算出して報告する必要があります。ただし、その金額が各種税務書類の数字と異なることが発覚した場合、修正申告が必要になることを留意しておいてください。
 
必要書類を受領していないからといって、確定申告および税の支払いが遅れたり、しなかったりすることは許されません。見積額でも申告と支払いが必要です。

延長の申請

延長申請を行い、確定申告の提出期限を6カ月間延長する方法もあります。ここでの注意点は、申告書類の提出期限は延長できても、支払期限は延長できないことです。支払遅延の罰則金の発生を避けるには、期日(今年は2018年4月17日) までに納税する必要があります。
 
期日までに支払額の正確な算出ができない場合、大目に見積り、納税を行うことをお勧めしています。支払い額に不足があると、ペナルティーと利息が上乗せされてしまうからです。延長申請後に確定申告を行った際の過払い額は、還付金として戻ってきますので、多めに払っても長期的に見て損はありません。
 
(2018年3月16日号掲載)

未払い通知

質問:税務当局から未払い通知が送られてきてしまいました。どうしたらいでしょうか?

罰則金と不服申し立て

すぐに書面に署名して、罰則金を払うこともできますが、税務当局で把握している数値が間違っている可能性や、そもそも通知が誤って発行されている可能性もあります。
 
事実確認後、指摘に合意できない場合は不服申し立てができます。事実確認には専門知識が必要なことも多く、さらに不服申し立てには税務当局とのやり取りもありますので、専門家への相談をお勧めします。
 
(2018年3月16日号掲載)

日本の銀行口座

質問:日本に銀行口座があります。アメリカの税務上、何かすべきことはありますか?

FBARとは

銀行口座の残高によっては、口座情報をIRSに開示する義務が発生します。アメリカ国外の銀行口座情報の開示義務は、FBARに基づくものです。FBAR は、Foreign Bank Account Reportingの略で、正式名称はReport of Foreign Bank And Financial Accountsです。正式名称の通り、開示義務は銀行の普通預金・定期預金口座に限らず、証券口座で管理している株券などの証券、確定拠出型および給付型年金、満期型の保険を含む金融資産全般の開示を求めています。一方、厚生年金を含むアメリカ国外の社会保険や、直接保有しているアメリカ国外の固定資産や貴金属、現金などは含まれません。
 
これらの口座の最高残高の合計が1万ドルを超えると申告義務が発生します。「最高残高」というのがくせ者で、たとえ12月31日時点で全ての金融口座の残高が0ドルだったとしても、年の途中で一度でも1万ドルを超えた場合、申告義務が発生します。例えば日本で賃貸物件を運用している人が管理会社から110万円(=約1万ドル)の利益を日本の銀行で受け取り、即日アメリカの銀行に資金を移したとします。FBARが求めるのは口座の最高残高なので、このようなケースでも開示が必要となるのです。

FBARのペナルティー

FBARの開示義務は以前から存在していましたが、2013年より管理が米税務当局からFinCEN(Financial Crime Enforcement Network) に移管され、より厳しく管理されるようになりました。FBARが適切に提出されないと、最大で1万2459ドルのペナルティーが科されることがあります。また、意図的な隠ぺいなどが認められた際は、最大で12万4588ドル、もしくは残高の50%のいずれか高額な方という莫大なペナルティーが科されるうえ、刑事罰の対象となる可能性があります。必要なのは情報の開示だけで、口座の残高に応じて税金が課されることもないので、素直に開示しておくのが無難です。
 
開示義務が発生するのは、アメリカ市民と永住権保持者、税法上で米国居住者とみなされる人です。FBARの申告と確定申告は別ものですが、電子申告が義務であること、申告期限が確定申告と同じこと、確定申告にも「Form 8938」という海外口座開示申告書類があることから、弊社を含めた一部の会計事務所では、確定申告と共に申告を代行しています。アメリカ国外に一定額の金融資産を持つ方は、専門家に相談することをお勧めいたします。
 
(2018年3月1日号掲載)

税務調査

質問:税務調査はどのくらいの頻度で行われるのですか?
米連邦税務当局の発表によると、2016年は全納税者の約0.7%が税務調査の対象となりました。しかし、実際にだいたい何年おきに自分が対象になるのか、という問いに答えるのは大変難しいです。
 
当局が税務調査を行うのは、あからさまに怪しい動きを続けている個人や会社(例えば、収入に比べて極端に大きな項目別控除を利用しているとか、資金繰りが不明とか)と、毎年ランダムに選ばれた対象者です。宝くじに当たるよりは高い確率で税務調査は訪れますが、10年間一度も税務調査が入らない人も多く見受けられます。

税務調査ですること

大事なのは、税務調査が入ったときに要求された情報を適切に提出することです。当局は通常3年、最大で6年過去にさかのぼって調査を行いますので、これらの期間は情報を保管しておくことをお勧めします。
 
(2018年3月1日号掲載)

税制改革法案の影響

質問:2017年の年末、税制改革法案が通過しましたが、個人の税金にはどのような影響があるのでしょうか?
2017年12月22日、トランプ大統領が税制の改革法案(Tax Cuts and Job Act)に署名をしました。これにより、2018年1月1日より、個人、法人を問わず多くの税制が影響を受けることになります。

累進課税と基礎控除

個人に関する影響で大きく目立つのは、累進課税の税率の変更と、基礎控除額の引き上げでしょう。累進課税の税率は、2017年までは最大39.6%だったのが、2018年以降は37%となります。
 
最大税率だけではなく、全ての税率に影響があり、全体的におおよそ2~3%程度の税率減となっています。この税率の引き下げは、最低でも25年まで続けられる予定で、延長が行われるかどうかはその後の議論によると決まっています。
 
また、基礎控除額(Standard Deduction) は大幅に引き上げられます。夫婦合算申告では2万4000ドル(2017年は1万3000ドル)、個人申告では1万2000ドル(2017年は6500ドル)となっており、税率の減少と合わせて、多くの中~低所得者層の連邦に対する所得税の負担は減ることになります。

項目別控除の影響

基礎控除額の上昇は、項目別控除(Itemized Deduction) を活用してきた人たちにとっては微妙な状況をもたらします。そもそも項目別控除は基礎控除額以上に支出がある人が使うものなので、基礎控除が上昇すると、その意味が薄れてしまうのです。
 
その上、項目別控除には2つの大きな調整が入りました。1つは、住宅ローンの元本が75万ドル以上(17年以前は元本100万ドル以上)であった場合、利息支払いを項目別控除で利用できなくなっています。当初の予定では元本が50万ドル以上という制限でした。
 
もう1つは、州や地方自治体に対して支払う税金を項目別控除で利用する際、その上限が1万ドルとなったことです。固定資産税もこれに含まれるため、今まで高額な住宅に関する住宅ローンと固定資産税で項目別控除を利用していた人は、今後それを十全に利用できなくなる可能性が高くなっています。

その他の影響

これ以外にも、健康保険への加入義務や子ども控除(Child Tax Credit)、相続税、IRAへの入金額など、影響を受けている項目は多くあります。影響を受けるのは2018年の税金で、その確定申告は2019年に作成するものですが、今まで項目別控除を利用していた人は、早めに専門家と相談し、1年のプランニングを行うことをお勧めします。
 
(2018年2月16日号掲載)

法人の確定申告の締切

質問:法人の確定申告作成の時期が変わったと聞きました。どのように変わったのでしょうか?

C-Corporation

C-Corporationの確定申告の締め切りが2016年度から変更になっています。それまでは、LLCやPartnership、S-Corporationと同じく決算日より3カ月15日後でしたが、2016 年度分(確定申告の作成は2017年)からは、決算日より4カ月15日後が締め切りとなっています。ただし、6月30日締めの場合のみ、締め切りが3カ月15日後の9月15日です。
 
C-Corporationの締切のみが変更しており、LLC、Partnership、S-Corporationは依然として決算日より3カ月15日後が締め切りとなっています。
 
12月決算の法人の場合、2017年度の確定申告の締め切りは、CCorporationは4月17日、LLC、S-Corporaiton、Partnershipは3月15日です。
 
(2018年2月16日号掲載)

親からの住宅資金援助

質問:アメリカで、頭金15万ドル(うち、10万ドルは親からの援助)、ローン40万ドルで55万ドルの物件を買おうと思います。気を付けるべき点はありますか?

贈与と相続の違い

まず気を付けなければならないのは、親から受け取る10万ドルでしょう。親から子どもへと資金を移す方法は、大別すると贈与か相続があり、いずれも税法によってルールが定められています。
 
贈与では、一人当たり1万5000ドル以下(父母2人の枠を使えば合計3万ドル以下)は課税対象となりませんが、それを超える場合は贈与する側で確定申告が必要となり、課税対象となる可能性があります。この1万5000ドルという額は不定期に更新されます。2017年までは1万4000ドルでした。実際に資金を移す前に確認するといいでしょう。なお、10万ドル以上の贈与を海外から受けた場合、開示申告の義務が生じます。
 
一方、相続ですが、これは親の生前贈与の非課税枠を利用してしまうというものです。ただ、この枠を利用するには親がアメリカ居住者でなければならないため、親が日本在住の場合は、贈与か、次に述べるもう一つのオプションを利用するしかないでしょう。この相続額の上限は、最近話題になっている税法の改正により上限が大幅に引き上げられ、2017年は1人当たり549万ドルだったのが、2018年からは1人当たり約1100万ドルになる見込みです。

親からのローン

贈与と相続以外に、親の援助をローンとして扱うことも考えられます。利率が適切で、きちんとした返済計画と契約書を交わし、実際にそれに沿った返済を行えば、親子間でローンを組んでも問題ありません。ただし、利率が妥当でないと判断された場合(例えば0%など)、税務当局が設定した妥当であろう利率との差額分だけ、利益を受け取ったと見なされ課税対象となりますし、親側は受け取った利息を確定申告で申告する必要が発生します。利率が妥当かどうかは、ファイナンシャル・アドバイザーなどに相談しましょう。

2018年の法改正

それ以外で気を付けることは、前述の法改正で、物件を持つことによる節税対策のいくつかが影響を受けることです。今回の場合は関係ありませんが、住宅ローンの額が75万ドルを超えると、住宅ローンの利息支払いを項目別控除で全額利用できなくなりました。また、固定資産税も、2018年以降に支払うものは項目別控除で利用できなくなっています。この改正の影響は住宅ローンのみならず、多岐にわたりますので、もし不安なら、会計士などの専門家に相談されることをお勧めします。
 
(2018年2月1日号掲載)

子どもの控除

質問:2017年、アメリカで子どもが生まれました。税金面でどのようなインパクトがありますか?
まずは、ご出産おめでとうございます。さて、税金面へのインパクトですが、まずはお子様を扶養家族として加えることで、控除額が増えることになります。扶養家族を申請するにはソーシャルセキュリティー番号(SSN)もしくは個人納税者番号が必要になりますが、アメリカ国内で生まれた子どもにはアメリカ市民権とSSNが付与されるため、たとえ他の家族がビザの関係でSSNの取得が難しかったとしても、問題なく確定申告にて申請できます。

Child Tax Credit

また、Child Tax Creditを税額控除として利用可能です。これは、いくつかの条件(新生児なら多くの場合、問題なく通過できます)を満たしている場合、扶養する子ども一人当たり2017年は最大1000ドル、2018年は最大1600ドル(申告する世帯収入によって減額あり)の税額控除を得られるものです。
 
(2018年2月1日号掲載)

法人の維持

質問:副業でアメリカに法人を持つ駐在員ですが、日本に帰任します。法人を維持することは可能ですか?
結論から言えば可能です。法人が成立した時点でその法人とあなたは別の存在として認識されますので、たとえあなたが二度とアメリカの土を踏まないとしても、法人を閉鎖する必要はありません。ですが、別の存在であるため、あなた自身はアメリカで確定申告の必要がなくなっても、法人に関連する税務は毎年行わなければなりません。
 
提出する確定申告は法人の形態にもよりますが、法人の形態がS-CorporationやLLCのようなPass-through Entity(所得税上、会社の収入はオーナーの収入とみなされ、法人税がかからない会社形態)であったり、その法人から給与や配当という形でお金を受け取ったりした場合、あなた自身の個人の確定申告も提出が必要な可能性があります。なぜなら、アメリカが源泉の収入はアメリカに課税権があるからです。

税務以外の業務

確定申告以外にも、定期的に連邦や州に対して会社情報の申告を行わなければならない場合がほとんどです。業種によってはライセンスの更新なども必要でしょうし、当局からの通知を受け取るにはアメリカに郵便物を受け取る住所が必要な場合もあります。
 
弊社を含む一部の会計事務所や専門業者がバーチャルオフィスという形で住所を貸していたり、米国内での連絡先を代行していたりするので、帰国に際して法人を閉鎖しない場合、そのような代行者を探して相談することをお勧めします。
 
(2018年1月16日号掲載)

無料会計ソフトと会計士の違い

質問:確定申告書を作るのに、市販のソフトウェアやオンラインの無料サービスを使うのと、会計士に頼むのは、何が違うのですか?
市販のソフトウェアやオンラインの無料サービスを利用して確定申告を作成すること自体には、何の問題もありません。税務に心得のある方なら、税務当局が提供するインストラクションを参考にしながら自分で確定申告書を作成できるでしょう。

無料サービスの現状

ですが、市販の有償ソフトウェアならともかく、オンラインの無料サービスでは、ほとんどの場合、一般的な内容しかカバーしておらず、利用者の個別の事情に適切に対応できないケースが極めて多いのが現状です。また、利用者が数字を入力する際、ソフトウェアやウェブサイトの解説が不十分だと、誤った解釈をしてしまい、本来利用すべきでない控除を申請してしまったり、利用できるはずの控除を申請しなかったりすることもあり得ます。申告すべき所得を申告しないで、意図せず脱税行為をしてしまうこともあるでしょう。一部の税額控除は、誤った申告が発覚すると控除が却下されるだけでなく、追加ペナルティーを科されるものもあります。また、税法は毎年ほぼ必ず修正が入りますので、無料サービスなどでは更新時期により正しいルールに沿って確定申告書を作成できるかどうかも分かりません。

会計事務所の仕事

税務の間違い、未払いや過払いをなくし、本来支払うべき税額を適切に計算する手伝いをするのが、私たち会計士や会計事務所の仕事です。会計事務所に依頼すれば、確定申告の精度は大きく向上します。
 
また、多くの会計事務所ではそれ以外にもさまざまなサービスを提供しています。例えば、税務コンサルティングや、確定申告関連で当局から通知が来た場合のアフターサービス、戻ってこない還付金の追跡や還付交渉、他にも海外金融口座の開示といった、確定申告に関係は薄くとも申告が必要な書類の作成も行います。確定申告で不安な点があれば、遠慮なく会計事務所に問い合せてみてください。
 
(2018年1月16日号掲載)

駐在員の税務

質問:2017年、会社の駐在員としてE-1ビザで、日本からアメリカに赴任しました。何か税務的にすることはありますか? ちなみに専業主婦の妻と子どもがいます。
アメリカの個人の確定申告作成は、日本と異なり、個人が自己責任で済ませなければならず、申告漏れに対しては税務当局から罰金や利子を科される場合があります。さらに、アメリカでは連邦に加え、居住する州へも確定申告を行わなければなりません。

用意する書類

確定申告作成の際に必要となる資料は多岐にわたりますが、まず必要なものは会社や銀行から発行される各種フォームでしょう。日本でいう源泉徴収票と同じ役割を果たす「W-2」をはじめとして、銀行預金からの利息収入を報告する「Form1099-INT」、保険の加入期間などを証明する「Form 1095」(保険の種類によってAからCの3種類が存在します)などが、2月中旬ごろまでに送られてきます。これらの資料の内容と同じものは税務当局にも申告されており、当局が確定申告の内容確認のために利用します。仮に紛失してしまったり、いつまで経っても手元に届かない場合は、発行者や関連各所に問い合わせた方が良いでしょう。

日本での収入

一つ気を付けなければならないのは、アメリカへの滞在日数によっては、アメリカも日本と同じく全世界所得(アメリカだけでなく日本や諸外国での所得)の申告が義務付けられていることです。日本で住んでいた家・土地を、渡米を機に処分せず、賃貸として運用したり、日本での金融資産運用で収入があったりする場合、その申告も必要になる可能性があります。特に、不動産収入の報告は年末年始に発行されない場合がありますから、特段の注意が必要です。また、アメリカの居住ステータスによっては日本国内の銀行口座残高情報や、金融資産情報の開示も必要になります。

扶養家族のITIN

E-1ビザということは、会社の助けを得てSSN(Social SecurityNumber:社会保障番号)を取得されたかと思いますが、家族のSSNは未取得ではありませんか?
 
確定申告で扶養家族の基礎控除を利用するには、家族それぞれのSSNが必要となりますが、ビザのステータスによっては家族のSSN取得は大変難しくなっています。そういった場合、ITIN(Individual Taxpayer Identification Number) 取得することで、SSNの代替とすることが可能です。ITINの取得は、お勤め先の会社や、確定申告作成をお願いする会計士などの専門家に相談することをお勧めいたします。
 
(2017年1月1日号掲載)

12月の決算

質問:12月決算の会社を経営しています。確定申告に向け、何から準備すればいいでしょうか?
日頃、市販の会計ソフトで帳簿を付け、確定申告を会計士に依頼する場合、補足資料を準備しておくとスムーズに申告書を作成できます。最も一般的な資料は、一年分の銀行の取引明細書です。銀行は資金の出入りを証明する第三者としては一級の信頼性があります。仮に帳簿を付けていなくても、会社が保有している全ての銀行口座とクレジットカードの明細があれば、最低限必要な情報は整います。小切手を利用しているなら、支払った小切手の内訳を記録したものがあると良いでしょう。

Form1099

確定申告と直接関係ありませんが、「Form1099」の作成も必要です。これは、年間600ドル以上を個人事業主や弁護士などの一部の業種に支払った企業に義務付けられている書類です。締め切りは1月31日で、遅れるとペナルティーを科されるので注意が必要です。
 
(2017年1月1日号掲載)

2017年の変更点

質問:2017年の個人の確定申告で、2016年と変わることはありますか?
税法は毎年調整が加えられているので、昨年と何が変わったかを確認するのはとても重要です。例えば累進課税のブラケットは毎年前後しており、2017年は、所得額によって適用される税率が2016年から一部変わっていますし、基礎控除の額も2017年では16年より50ドル高い6350ドルが利用可能となっています。これらの小さな調整は主に物価スライド調整(COLA,Cost of Living Adjustment) と呼ばれるものになります。
 
2017年の申告から有効となる税関連の修正において、極端に大きなインパクトがあるものは存在しません。ただし、ソーラーパネルなどの設置に関する税制優遇が2016年末で終了するなど、2017年の確定申告では利用できないクレジットがいくつかあります。もし、自分が利用する予定だったクレジットが2017年の確定申告でも有効かどうか心配な場合は、専門家に確認することをお勧めいたします。

ITIN

一方、税金とは直接関係ないものの、駐在員やその家族に関して、注意が必要なこともあります。Social Security Number(SSN)を取得できない人が税務を行う際に取得するIndividual Taxpayer Identifi cation Number(ITIN)は、2015年に通過した法案により、有効期限が発生しています。取得時期により、新しくITINを取得するか、それとも既存のITINの更新作業が必要か変わってきますので、該当しそうな方は念のため専門家に確認することをお勧めいたします。
 
(2017年12月16日号掲載)

個人事業主

質問:我が社では、従業員に加え、フリーランスの方に報酬を支払っています。年末年始にすべきことはありますか?

Form 1099 Misc

気を付けなければならないのは、フリーランス、つまり個人事業主(Sole Proprietor)への報酬支払をまとめた、「Form 1099 Misc」の作成と発行が必要であることでしょう。このフォームは従業員に対する「Form W-2」と同等のもので、年間いくらを個人事業主に支払ったかを連邦税務当局と個人事業主本人に申告する書類です。
 
この書類が必要なのは、下記のいずれかの条件を満たした場合です。
① 年間600ドル以上の、個人事業主および弁護士・会計士などに対する対価の支払い
② 年間10ドル以上の印税、または著作権使用料の支払い
③ 年間10ドル以上の配当金、非課税利子収入の代わりに払うロイヤルティー、ブローカーへの支払い
④ 源泉徴収が済んでいない取締役への支払い
 
この際気を付けなければいけないのは、家賃の支払いも①に該当する可能性があることでしょう。物件管理会社に家賃を支払うなら問題ないのですが、個人の大家さんに支払う家賃はこれに該当します。上記4つに当てはまるかどうか判断が微妙な支払いもあると思いますので、その場合は専門家に問い合わせて確認したほうがよいでしょう。
 
また、今年から「Form 1099 Misc」を250枚以上発行する場合、電子申告が義務付けられるようになりました。今までのように、役所から白紙の「Form 1099 Misc」をもらってきて記入する…、という方法は通用しなくなったので、大量の「Form 1099 Misc」を発行する場合は注意が必要です。
 
このフォームの提出期限は例年2月末でしたが、今年はW-2と同じく18年1月末が提出期限です。まず、雇用した個人事業主のほか、取引先にもフォームが必要か確認しましょう。作成にはSSNやEIN(連邦法人番号)、住所などの情報が必要です。今年から未提出のペナルティーが厳格化していますから、早めの準備が大切です。
 
(2017年12月16日号掲載)

年末の節税

質問:2017年ももうすぐ終わってしまいますが、今からでも個人でできる節税の方法はありますか?

IRA

最も簡単に行えるものの一つは、個人年金プラン(Individual Retirement AccountもしくはArrangement)、通称IRAの利用でしょう。IRAには複数の種類がありますが、個人の節税によく使われるのはTraditional IRAです。年間、1人当たり5500ドル(50歳以上は6500ドル)を限度額として入金でき、それを所得控除として利用できます。課税所得をそのまま減らせるので、例えば、税率20%の人は単純計算で1100ドルの節税につながります。ただし、調整後総所得(Adjusted Gross Income)が一定額を超えると、所得控除として利用できる額は減額します。
 
Traditional IRAは、その名の通り、老後用の積立年金プランの一種で、ここからお金を引き出す際には、所得として課税対象になります。理屈としては、入金額分の税金支払いを将来に先送りすると考えれば良いでしょう。「結局、税金を支払わなければならないのか?」とはもっともな意見ですが、IRAから資金を引き出すのは、ほとんどの場合リタイア後となります。リタイア後は所得が減り、累進課税の税率が低くなる傾向にあるので、短期的・長期的に見て十分節税となり得ます。
 
一つ注意しなければならないのは、59.5歳前にIRA口座から引き出すと、引き出し額の10%という高額なペナルティーを支払わなければならない点です。ただし、死亡や障害、高額な医療費支払い、大学の学費や初回の住宅購入など特定用途が理由だと免除される場合があるので、引き出す前に専門家に相談すると良いでしょう。

寄付と株式

例年、確定申告で項目別控除(Itemized Deduction)を利用している場合、寄付も節税の一つです。ただし、寄付額の30~50%までしか控除が利用できない上、総額500ドル以上の寄付をすると証拠提示が要求されることもあります。
 
株式取引を行っている人は、こちらでも節税が行えます。2017年中に投資利益(キャピタルゲイン)の確定を行い、多額の利益が発生した場合、年内に含み損のある株式を売却して投資損失(キャピタルロス)の確定を行えば、課税対象となる利益を減らせます。結果的にキャピタルロスの方が多くなったとしても、最大3000ドルまでその他の収入と相殺でき、3000ドルを超えたロスは翌年以降に持ち越して他の収入と相殺することも可能です。
 
年末に株式を相殺する節税方法は普及していますが、簡単に税金をコントロールできないようにIRS(国税庁)も法律で対策を講じているので注意が必要です。
 
(2017年12月1日号掲載)

法人の違い

質問:資本金1万ドルで起業し、車のパーツの輸出入を始めます。どんな事業形態で登記すべきですか? ちなみに私は永住権を持っています。
個人事業より、法人化をお勧めします。個人事業は登記が不要で、法人に関わる手続きが不要な反面、ビジネスに関連して何らかの大きなトラブルがあった場合、その損失が全て個人に降りかかってきます。法人の場合は、いくつかの申告等が必要になりますが、もしもの時には会社を閉鎖させてあなた個人への被害を回避することが可能です。
 
法人にも複数の種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。残念ながら他と比べて全面的に有利な法人形態というものは存在しません。また、後から形態の変更は可能ですが、相応の手間がかかります。実際にどのような事業展開を行うかによって最適な形態が変わりますので、ビジネスの開始前にある程度具体的な展望を持ち、どの法人形態があなたのやりたいことに一番適しているのか、税務、法務さまざまな視点から考えていきましょう。
 
(2017年12月1日号掲載)

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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