バイオディーゼルを作りながら地球を走る!日本から熱血グループがアメリカに上陸

ライトハウス電子版アプリ、始めました

◆バイオディーゼルアドベンチャー・プロジェクト代表/山田周生さん
 
個人でできるエコエネルギー利用への挑戦として、廃食油を使って世界1周の旅に出た山田周生さん。2人の友人と今年2月にカナダのバンクーバーを出発、アメリカ大陸横断後、アフリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジア、日本へと約6万キロを走る。行く先々で廃食油を集め、車に取り付けた精製機で燃料へと変換しながら世界を走るという前代未聞の試みだ。トーランスのライトハウス本社を訪れた山田さんに話を聞いた。
 
(Photo:トヨタのランドクルーザーがベース。玉虫色の「VASCO-5号」)
 

日本縦断、パリ・ダカール
そして世界1周へ

 本業はモータースポーツのフォトジャーナリストで、4WDやバイクでこれまでに世界40周分くらいの旅をしています。ニュースや読み物でバイオディーゼルの存在を知った時、植物性油や廃食油で高速も走ることができ、大気中の二酸化炭素を増やさず、環境に優しいこの燃料に興味を持ち、自分でもそのパワーを試してみようと思ったんです。
 
 まず、2年前に日本縦断を試みました。北海道の宗谷岬をスタートし、鹿児島の佐多岬まで9日間、バイオディーゼルのみで走破するというものでした。その後、ヨーロッパ10カ国で2万キロのテスト走行を行い、昨年1月にはパリ・ダカールに挑戦しました。16日間、8千キロのラリーを完走。バイオディーゼルカーとして初めての参戦で、ディーゼルクラスでは3位に入賞し、ガソリン車含め、全体でも4位の快挙。この燃料の力を再認識しました。
 
 そして今回、世界1周を決断。ヨーロッパ以外では、ガソリンスタンドでバイオディーゼルを購入することはほとんど不可能だと思い、廃油だけで走ることに。そのため、精製機を車に積載する必要がありました。
 
(Photo:左から山田さん、村田さん、伊藤さん)
 

情報を集めて研究
ハンドメイドの精製機

 この精製機は自分たちの手作り。世界中でバイオディーゼルカーを作っている人たちと情報交換をしながら、独学で完成させたものです。廃食油の貯蔵タンクと精製をするタンクなどのほか、グリセリンを除去するためのイオン交換樹脂を入れたパイプも積んでいます。
 
 車自体は改造していないので、走行機能には影響はないのですが、精製機は重量が500キロもあり、精密機械ですので、運転には細心の注意を払い、燃費の良い時速60マイル前後で走っています。
 
 自分たちの荷物はバックパック1つ。コンピューターやカメラ、ビデオなどの機材も積んでいますので、そのほか個人の所持品、着替えなど、ほとんどないんですよ(笑)。
 
 同行している伊藤達也さんはバイク仲間。日本縦断の旅から一緒です。映像の仕事をしているので、道中の記録映画なども撮ってくれています。また、村田里利さんはニューメキシコ州在住のジュエリーデザイナーで、アメリカでのネットワークを提供してくれています。
 
 実際、行く先々の廃食油や宿泊場所などは、人づてでお願いすることも多いんです。今、入れている油はビバリーヒルズの「松久」さんから。アメリカは皆さん、オープンなので、エコロジーに興味のある方々が気持ち良く協力してくださいますね。
 
(Photo:手作りによる精製機。重さは全部で500キロ)
 

人々との交流を広げ
実用的な情報を提供

 でも、やはり油集めは大変。レストランに飛び込みでお願いしています。廃油とはいえ、あまり使い古したものは使えません。また、燃料へと精製するのに24時間かかるので、スピードがかせげない。350キロ以内に1カ所は給油できる所が必要です。
 
 リサーチし始めてわかったのですが、バイオディーゼルを研究している人たちは世界中にたくさんいるんです。我々の旅も、この実体験に基づいた情報を提供していくことが目的。実際の走行の様子も、随時ウェブサイト(www.biodieseladventure.com)にアップしていきたいと思っています。
 
 このカタチが完璧だとは言えません。あくまでも提案です。これを実用化するには、やはり企業の力が必要。僕自身は、とにかくやってみたいという気持ちだけ。機械に関しては素人で、周りからは不可能だと言われてきましたが、ここまで順調に来ています。
 
 旅を通して色々な人と交流ができるのが楽しみの1つ。学校にも招かれ、「捨てる物を入れて燃料になるよ」と、子供たちに話をしています。この精製機を見て、「エスプレッソマシーンか?」などと声をかけてくる人もいます。今後、廃食油を提供してくださる方を募集中です。アメリカには5月末までいる予定ですので、ぜひご協力ください。

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