扶養家族の控除 -8つの対象-

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扶養家族の控除 -8つの対象-

扶養家族がいる場合、確定申告時にいくつかの控除を申請することが可能です。申告書を専門家に頼む場合でも、これらの基礎知識を持っていれば、どのような支出が控除の対象になるかを理解することができるので、節税に役立つでしょう。

1.Qualified Child

1人につき3900ドルが所得控除の対象です。17才未満のアメリカ市民または税法上の居住者であれば、1人当たり1000ドルがChild Tax Credit(子ども控除)の対象ですが、申請するには以下の4条件全てを満たさなければなりません。
 
①納税者の子、継子、養子、それらの子孫か、(異母)兄弟、義兄弟、またはそれらの子孫である
②納税者より若く、確定申告年度の最終日(12月31日)に19歳未満、または24歳未満の学生(年間5カ月間以上フルタイム)である
③確定申告年度の半分以上を納税者と住居を共にしている(学校、休暇、入院、兵役などで家を離れる期間は除く)
④確定申告年度の納税者が生活費の半分以上を負担している(奨学金は自己負担として認識されない)

2.Qualified Relative

1と同様に1人につき3900ドルが控除対象で、以下4つが条件です。
 
①Qualified Childではない
②納税者と何らかの血縁関係がある者(同居でなくてもよい)、または通年同居している血縁関係のない者
③申告年度の収入が3900ドル以下
④確定申告年度の納税者が生活費の半分以上を負担している

3.Childand Dependent Care Credit

自分が仕事をするために子どもの世話を依頼した場合。子どもが13歳未満という条件に加え、支払い先が自分に近しい家族の場合は対象外です。子ども1人の場合は600ドルから1050ドルまで、2人以上の場合は1200ドルから2010ドルまでという上限が設けられています。しかし、所得が高くなるに従って金額が減少していきます。

4.Earned Income Tax Credit

所得と申告ステータス、子どもの人数を基に控除額を割り出しますが、その所得が一定額以下でなければなりません。例えば、申告ステータスが夫婦合算の場合
 
・5万1567ドル(子ども3人以上)
・4万8378ドル(子ども2人)
・4万3210ドル(子ども1人)
 
であれば税額控除の対象となります。

5.Adoption Credit

18歳未満の子ども、または障害者の養子を取った場合にかかった費用(2013年度は最高1万2970ドルまで)が対象です。しかし、配偶者の子を養子にする場合は適用されません。

6.Higher Education Credits

教育費用はAmerican Opportunity CreditやLifetime Learning Creditなどが対象です。前者は最初の4年間のみで、最大1000ドルまで還付可能です。対して後者は、年数の制限はありませんが、支払った分を上回った場合に還付はされません。

7.Self-employed health Insurance Deduction

個人事業主で自分自身の健康保険が子どももカバーしている場合、その分が対象です。子どもは12月31日の時点で27歳未満でなければなりませんが、扶養家族である必要はありません。

8.Student Loan Interest Tax Deduction

学費ローンに対する利子が対象になります。申告ステータスが独身の場合は7万5000ドル以下、夫婦合算の場合は15万5000ドル以下の所得が条件です。控除額は2500ドル、あるいは支払った利子の少ない方を選択しますが、独身は6万ドル、夫婦合算は12万5000ドルの所得を超えると調整が入ります。
 
(2014年3月16日号掲載)
 

配偶者扶養費(Alimony)の 税務処理

 

離婚で発生する費用には、弁護士費、養育費、配偶者扶養費など色々なものがあり、中には確定申告に直接関係してくるものもあります。今回は、離婚前後の確定申告ステータスと、確定申告書上での配偶者扶養費の扱いを説明します。

申告のステータス(Filing Status)

確定申告書を作成する際には、独身(Single)、夫婦合算(Married Filing Jointly)、夫婦個別(Married Filing Separately)などの中から、申告ステータスを必ず選ばなければなりません。なぜなら、ステータスによって控除や税率の割合が変化するからです。
 
独身を選択するには、その申告年度の12月31日までに離婚が成立してるか、合法的な別居状態(Legally Separated)でなければいけません。従って、それ以外の場合は自動的に夫婦合算か夫婦個別のどちらかとなりますが、前者の方が控除が大きく、税率も低いので税金の負担が軽くなります。対して後者は、控除が小さく税率も高いので、夫婦全体でみると税金の負担が重くなります。しかし、自分の所得に対してのみ責任を負えばいいので離婚前の複雑な状況だとこの方法の方が合理的な場合もあります。
 
加えて、独身または夫婦個別申告の場合で、次の全条件を満たす際は、世帯主(Head of Household)として申告できます。①独身、または「独身とみなされる」、②申告年度で世帯維持費用(家賃、税金、火災保険、電気・水道代、外食を除く食費など)の半分以上を負担した、④扶養家族(Qualifying Person)と半年以上住居を共にした。
上記の「独身とみなされる」とは、次の全条件を満たす場合を指します。①夫婦個別申告、②申告年度で世帯維持費用の半分以上を負担した、③申告年度の後半にかけ6カ月以上別居中だった、④申告年度の中で6カ月以上扶養家族の生活拠点が自分の家であった。
世帯主として申請すれば、夫婦個別では認められていない基礎控除を使用することができ、税率も低くなります。

慰謝料

配偶者扶養費を支払う場合、支払い側は控除の対象ですが、受け取り側は所得として申告する必要があります。
IRS(内国歳入庁)の発表によると、2010年に控除として申請された額と、所得として報告された額の間には23億ドル以上の相違がありました。この年には、約57万人の納税者が合計100億ドル以上の配偶者扶養費支払いを申告しましたが、それを受け取ったうちの27万人は所得として申告していませんでした。IRSにはこれらの支払い側と受け取り側の照会システムが確立されていませんが、今後、配偶者扶養費に関する控除と、所得に関連する税務調査を増やしていく傾向にあるようです。また、配偶者扶養費を控除の対象外にするという方針も話題に上ることがありますので確定申告の際は、十分に気を付けなければいけません。

還付・納金

夫婦合算申告の場合、夫婦どちらがいくらの還付金を受け取るか、または納付するかでもめるケースがよくあります。何も考えずに申告書を提出して、どちらか一方の住所に還付金が届いたり、夫婦共有口座に還付金が振り込まれたりすると、その権利を巡って争いになる可能性があります。従って、申告書提出前にどちらがどの程度負担するかを書面に残しておくべきでしょう。
例えば、本人の年収が4万ドル、配偶者の年収が3万ドルだった場合、本人が57%(4万ドル÷7万ドル)を、配偶者は残りの43%(100%ー57%)を負担する/受け取ると決めておくと合理的でしょう。
 
(2014年7月16日号掲載)
 

税法上の扶養家族とは

 

扶養家族と聞くと、配偶者、同居の両親、子どもなどを思い浮かべる日本人が多いと思います。しかし、アメリカの税法では、配偶者は扶養家族にならない上、扶養家族には日本と異なる定義があります。これらの定義を確認してみましょう。
納税者は誰が税法上の扶養家族かを知っておくべきです。扶養家族の人数で控除額は変わります。扶養家族には、Qualifying ChildとQualifying Relativeがあり、いずれも確定申告年度にアメリカ市民か税法上のアメリカ居住者である必要があります。

Qualifying Child

家族をQualifyingChildとして申請するには、下記の4項目全てを満たさなければなりません。
①納税者の子ども、継子、養子、またはそれらの末えい(孫など)、きょうだい、腹違いのきょうだい、義理のきょうだい、またはそれらの末えい(おい、めいなど)である。
②納税者より若く、確定申告年度の最終日(12月31日)に19歳未満、または24歳未満の学生である(学生とは年間5カ月間以上フルタイムで就学している者)。
③確定申告年度の半分以上、納税者と住居を共にしている(就学、入院、兵役などで家を離れている期間は住居を共にしていると考える)。
④納税者が確定申告年度の世帯維持費(家賃、税金、光熱費など)の50%以上を負担している(奨学金による収入と支出はここでは含まない)。 これら全てを満たす場合、被扶養者の個人控除や子ども税クレジットなどを申請できます。

 

Qualifying Relative

家族をQualifying Relativeとして申請するには、下記の4項目全てを満たさなければなりません。
①Qualifying Childでない。
②両親、きょうだい、子ども、おい、めい、おじ、おば、義理の両親、義理の子ども、義理のきょうだいなど、納税者と何らかの家族関係がある者(同居してなくてもよい)。または通年住居を共にしている家族関係のない者。
③確定申告年度の収入が個人控除額(2016年度は4050ドル)以下である。
④納税者が確定申告年度の世帯維持費
の50%以上を負担している。 これら全てをクリアすると、扶養家族として個人控除の申請ができます。

 

Joint Return Test

Qualifying ChildかQualifying Relativeの該当者が結婚しており、確定申告で夫婦合算申告をしていた場合、彼らを扶養家族として申告することはできません。しかし、彼らが①還付金を目的に夫婦合算申告している、②夫婦共に税金の支払い義務がない、③所得が確定申告の提出義務を下回っている、という3条件を満たしている場合、彼らを扶養家族として申告できます。納税者の子どもが学生結婚した場合などが該当するでしょう。

 

Multiple Support Agreements

定年後の父親の世帯維持費を、息子48%、娘35%、友人(同居していない)12%、孫5%の比率で負担していたとします。この父親のように数人から50%以上の世帯維持費を負担され、かつ下記の2条件を満たす人を、納税者は扶養家族として申請できます。①Qualifying Relativeの項目④以外の全ての条件を満たす。②納税者が10%を超える世帯維持費を負担している。 友人と孫は条件を満たさないので申告できません。息子と娘の負担を足すと83%となり、50%を超えるので、どちらかが父親をQualifying Relativeとして申請できます。
 
(2017年2月1日号掲載)
 

石上洋◎米国公認会計士
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校を卒業後、大手監査法人、現地会計事務所パートナーを経て石上・石上越智会計事務所を設立。税務をメインに事業を展開。
アメリカでの会社設立・確定申告・タックスリターンは「石上、石上&越智公認会計士事務所」へ
米国公認会計士・石上洋さんのインタビュー

※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。

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